春のポスト〔おはよねさんに捧げます〕
春野夏美のうちのポストにある日、こんな手紙が入っていた
春野さんちのポストは春のポスト
心温まるおうちのポスト
夏美の家はそんなにいいおうちでもいごこちのいいおうちでもなかったけれど、誰がくれたのかわからない小さなこの手紙が、夏美の心を支えた
15年くらいたった頃だろうか
夏美は別の街で
夏野
という姓と出会った
思わず夏美は手紙を出した
夏野さんちのポストは夏のポスト
暑く激しいけど木陰は涼しい
そう書いた
30年くらいして、実家に戻った夏美はその春、懐かしい手紙をポストに見つけた
春野さんちのポストは春のポスト
心温まるおうちのポスト
続きがあった
春野さんちのポストは春のポスト
心温まるおうちのポスト
夏野さんちのポストは夏のポスト
暑く激しいけど木陰は涼しい
秋野さんちのポストは秋のポスト
もみじの赤
いちょうの黄
色彩の絨毯が美しい
そして冬
どこまでも白い街角に
冬野さんちが建っている
冬野さんちのポストがやっと
深い雪から顔出す頃
春野さんちはきっと春
きっと春だ。
ああ
と夏美は手紙を抱いた
どこを回ってきたのだろう
誰が読み、誰が続けてくれたのだろう
それは誰にもわからないけれども
手紙は間違いなく旅をしたのだ
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それでも地球は回っている