芒種|短くなく、長くもなく。
週末の朝がやってきた。いつも通りに起きて、白湯とお茶用にお湯を沸かす。ご飯は炊かなくていいようだ。リュックから手帳と筆箱を出す。パラパラとめくりながら、今週の出来事を振り返る。
この一週間は晴れたり、曇ったり、時々雨も降っていた。なんだか雨の匂いを感じる日が多かった。
トマト、スイカ、オクラ、トウモロコシの様子が気になるので、朝と晩にできるだけ畑へ向かっていた。
大雨の次の日、夕方の畑パトロールで倒れている野菜をいくつか見つけた。トウモロコシは3本ともすぐ真っすぐにして、周りの土を集めて両手でグッと抑え込んだ。そのあと、もう2回ほどギュッギュッとした。
トマトは一気に伸びたからか、上のほうで捻じれるようにして折れ曲がっているもの、支柱もろとも畝から倒れてしまっているものもあった。
少しずつ暗くなってきたけど、作業はしばらく続く。「ちょっとみてくるわ」のつもりだったけど、なかなか終われない。最後、畑を一周して食べごろのアスパラを6本見つけた。
帰りの電車ではだいたい本を読んでいる。
ある日、「生きているって素晴らしい」という言葉に出会った。その3分後ぐらい、ある駅で背の高いお母さんと体操服を着ている5歳くらいの女の子が乗ってきた。ドアの前に立ち、外を見ながら話し始めた。
「もっと美味しそうなおにぎりがよかった!」
「そんなこと言ってもあのおにぎりはYちゃんが選んだんでしょう」
「みんながいいな!って思うやつがいいの。ものすごいやつ!」
「えー、そうなの?」
<ものすごいやつ!>のところでフハッと声を出して笑ってしまった。本で顔を隠そうにも声が出てしまっている。女の子はこっちを見て白い歯を見せている。お母さんとも目が合った。小さく頭を下げた。
そういえば、近頃は娘と過ごす時間が増えたように思う。娘は食べ終わると部屋へ行ってしまうが、何か遊ぶネタを用意して声をかける。マッチ棒、ペットボトルキャップ、釘と木材、付箋、使えるものは何でも使う。お気に入りの楽曲を順番にシェアし合う、簡単なゲームをする、ちょこっと雑談して終了する。短くなく、長くもなく。
ワンコが板ふすまをガリガリッと引っかき始めた。散歩の時間だ。「よしっ」と伝えるとこちらに向かってジャンプしてくる。
近くを走ると麦わら帽子姿のおっちゃんたちが田植えに大忙しだ。畑に座り込んでジャガイモを収穫しているグループも見かけた。一雨ごとに大きくなる時期である。皆、知恵を絞って今すべきことに取り組んでいるのだと思う。
もうすぐ蛍がやってくる。

向こうに少し青い空が見えた
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