Photo by
yuzawa0505
藻掻くほどに生き地獄
絵本ではあるが、岡田嘉夫の挿絵は到底子ども向けではない。鶴屋南北原作の四谷怪談は、歌舞伎や文楽、落語に映画と二次作品も多い。なんともいえぬ砂を噛んだような後味の悪さ。それにもかかわらず現世にまで語り継がれる理由とは何なのか。
浪人の伊右衛門と妻のお岩の話は、日本人ならば、だれもがどこかで耳にしたことがあるだろう。映像化の焼き直しも数多い。
真面目なお岩と真逆の夫。伊右衛門は食うに困り手段を選ばず人を殺し、自己中心的で弱いものには暴力を振るい、口先三寸の嘘で固める。
鶴屋南北晩年の作品だというが、この世の地獄をすべて見てきたかのような筋書きである。無信心で浅はかな浪人男は、身勝手が吸い寄せるのか、周囲に誑かされ、数々の罠に嵌まる。そして貞淑な妻を取り巻く、極ふつうの人までもが非情な惨劇に巻き込まれていく。
古典ではあるが、血で血を洗うストーリー構成は、香港ノワールや昨今の韓国映画にも通ずる。私利私欲に塗れた人々の世界の闇、暗澹たる世界は時代を超えて描かれる。
