見出し画像

「本の虫」とは名ばかり

 私のXでのハンドルネームは、Ctenolepisma villosa ヤマトシミの学名だ。紙資料に埋もれたところが職場なので名付けた。一般的には不快害虫とされるらしい。大事な本や糊を齧ったりすることもあるので、別名「本の虫」とも呼ばれる。
 シミは、私の部屋にも棲息している。ヤマトシミかどうかは判別していないが、夜明け前になると茶筅で茶を点てるような音がして目が覚める。とても微かな音なのだが、なぜだか気づいてしまう。見るとシミが障子を齧っているのである。多分、毎回同じ個体が出てきていると思う。紙魚の寿命は結構長いらしい。因みに個体識別は尻尾の形を観察することにしている。オバケのQ太郎のような3本の尻尾がきれいに残っているものは少なく、経年で傷んでいるものが多い。標本にできるような美しい完品にはなかなかお目にかかれない。

 自然や生き物全般が好きだったことが幸いし、縁あって自然系博物館の関連施設で働いたことがある。元来ぼんやりして自分の意見も無い曖昧模糊とした性格なのだが、苦労した。職場は研究職の人が多く、私にはわからない知らないことだらけで、誰かに訊ねることができずに、タイミングを逃して毎日大変だった。そして基礎知識が伴わず、非常に苦労した日々だった。なんとか付いていこうと独学で勉強せざるを得なくなった。自分で調べて解決しようと四苦八苦したことが、今の職場でようやく活かされたように思う。
 しかし、紙にまみれた職場にいる今。殆ど本を読まなくなった。資料にまみれているだけで、中身をじっくり吟味しながら調べるということをしなくなってしまった。本の虫とは名ばかり。灯台下暗しとはこのことだろうか。