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【ServiceNow(NOW) Q1 FY2026】「SaaSの死」は本当か? NOWを“AI時代の実行基盤”として見直しても、まだ株として触れない理由

ServiceNow(NOW)の決算発表に伴い、改めて私なりに「SaaSの死」について向き合ってみる。

Q2’25 → Q3’25 → Q4’25 → Q1’26
・売上高:$3.215B → $3.407B → $3.568B → $3.770B(QoQ +5.7% / YoY +22.1%)
・Subscription revenue:$3.113B → $3.299B → $3.466B → $3.671B(QoQ +5.9% / YoY +22.0%)
・cRPO:$10.92B → $11.35B → $12.85B → $12.64B(QoQ -1.6% / YoY +22.5%)
・ACV500万ドル超の顧客数:534 → 552 → 602 → 630(QoQ +4.7% / YoY +22.1%)
・ACV500万ドル超顧客の平均ACV:$14.4M → $14.7M → $14.7M → $14.9M(QoQ +1.4% / YoY +4.9%)
・更新率:98% → 97% → 98% → 97%(QoQ -100bp / YoY -100bp。なおQ3’25は大口US Federal agency終了を除けば98%)
・総粗利率(GAAP):77.5% → 77.5% → 76.5% → 75.0%(QoQ -150bp / YoY -400bp)
・総粗利率(non-GAAP):81.0% → 81.0% → 80.5% → 79.5%(QoQ -100bp / YoY -250bp)
・営業利益率(GAAP):11.0% → 17.0% → 12.5% → 13.5%(QoQ +100bp / YoY -100bp)
・営業利益率(non-GAAP):29.5% → 33.5% → 31.0% → 32.0%(QoQ +100bp / YoY +100bp)
・営業CF:$716M → $813M → $2.238B → $1.670B(QoQ -25.4% / YoY -0.4%)
・FCF:$535M → $592M → $2.032B → $1.665B(QoQ -18.1% / YoY +12.7%)
・SBC(株式報酬費用):$499M → $492M → $494M → $558M(QoQ +13.0% / YoY +18.7%)
・SBC / 売上比率:15.5% → 14.4% → 13.8% → 14.8%。Q1で再び上がっており、ここはNOWの“株としての難しさ”の中心に残る。
・現金・現金同等物:$3.124B → $2.725B → $3.726B → $2.702B。


数字だけ見ると、NOWは崩れていない。
Q1’26は「成長の失速」ではなかった。むしろ売上と先行需要は強い。Subscription revenueも伸び続け、cRPOも高水準、大企業深耕を示す$5M+ ACV顧客数も増え続けている。少なくとも現時点で、「AIのせいで既存SaaSがもう不要になった」と読む数字ではない。むしろ、企業の重要業務の真ん中に入り続けていると読む方が自然だ。

ただ、今回の論点は単なる決算の強弱ではない。
本当に見たいのは、NOWがAI時代の実行基盤として不可欠性を深めているかどうかだ。

■ 「SaaSの死」が語られる今、まず分けて考えるべきこと


LLMの進化を見るたびに、「もうSaaSはいらないのではないか」という声が強くなる。実際、その感覚には半分は正しさがあると思っている。

生成AIは、検索、要約、入力補助、簡易なUIの置き換えといった領域では、既存ソフトの価値をかなり削っていく可能性があるからだ。だが、ここで単純に「SaaSの死」と言い切ってしまうと、かえって本質を見失うと思う。

大事なのは、AIが答えを出すことと、企業の仕事が実際に動くことは別だ、という点ではないか。今回、NOWについて改めて思ったのは、AI時代に残るSaaSはあるどころか、むしろ重要性が増す層がある、ということだった。  

■ 「SaaSの死」は半分正しく、半分間違っている


AIが強いのは、情報を読む、整理する、生成する、推論する、という工程で、一方の企業の業務は、そこでは終わらない。実際の現場では、誰に承認を回すのか、どの権限で動かすのか、どのシステムを更新するのか、どの監査証跡を残すのか、どの例外処理を拾うのか、まで含めて初めて「仕事が終わる」。

NOW自身も、AIは情報生成には優れるが、それを業務成果に変えるには、システム横断でアクションを実行し、統制し、複雑なワークフローを管理する基盤が必要だとかなり明確にしている。つまり、死にやすいのは“情報を見せるだけ”のSaaSであって、実行と統制を担うレイヤーは、むしろAI時代に価値が上がる可能性が高い。

■ NOWはAI時代の“実行レイヤー”として本当に必要なのか


今回の論点はここに尽きると思う。NOWの本質は、AI機能そのものではなく、企業の中でワークフローを動かす実行基盤にある。会社は自らを「AI control tower」と定義し、2026年Q1にはサブスク売上$3.671B、cRPO $12.64B、RPO $27.7Bを計上したうえで、Now Assistで年間契約額$1M超の顧客が前年比130%以上増えたと開示した。さらに、$5M超のnet new ACV案件は16件、$5M超ACV顧客は630社まで増えている。これは単にAIテーマで盛り上がっているという話ではなく、企業の重要業務の中にNOWが深く入り続けていることを示している。  

本決算では会社が未来の企業運営に本当に必要な場所を押さえようとしているのか、その構造を見極めることが重要だと感じる。NOWが狙っているのは、AIが何かを考えたあとに、それを企業の仕事として安全に実行する層だ。AI時代に企業が必要とするのが「より速い回答」だけではなく、「より安全で、監査可能で、システム横断で動く実務」なら、NOWのような実行レイヤーは消えるどころか、むしろ必要性を深める可能性がある。NOW自身もAI時代はシステム統合、データ整合性、規制対応、ビジネスロジックの一貫した実行がさらに重要になると整理されている。


一方で中小企業等の一部はLLMを活用して、ワークフローを独自に動かすように試みる動きは加速するとも思う。管理運営が出来るのか、シームレスに動き責任効率まで考えるとどこまで業務として活用できるのかという疑問は残る。長期的に見るといまのNOWの主張は正しかったということになるのではないか。

■ それでも、すぐに株としては触らない


ただし、ここで企業としての面白さと、株として今すぐ買えるかどうかを混ぜると判断を誤るのではないかと考えている。NOWはQ1で高いガイダンスを再び上回り、通年のサブスク売上見通しも引き上げた。Q2ガイドはサブスク売上$3.815B-$3.820B、FY26ガイドは$15.735B-$15.775Bまで上がった。数字だけ見れば十分強い。だが株式投資で問われるのは、「その構造がどの速度で売上に波及するか」「その成長がどの利益率で残るか」「その結果、今のマルチプルを正当化できるか」だ。


ここはまだ完全には証明されていない。企業としての方向性は良いと思うがAIが加速装置になるならば、少なくとも高い成長率を維持しつつ、利益率とSBCの質改善が伴う必要がある。もっと見るならば、cRPO、ACV500万ドル超の顧客数や超顧客の平均ACV、更新率が伸びていかないと、株式としてはまだ答え合わせ待ち、というのが現時点の結論になる。  


そして、何よりもLLMの進化により絶えずこの「SaaSの死」については完全払拭することはない。それに対抗できる決算数字を上げていったとしても、その脅威は潜在的に残るはずだ。モメンタム自体に重力が残る中で積極的に投資できないと感じるのは、自然なことだとも思う。

■ SBCの重さと統合リスクは、いまのNOWを難しくしている


いまのNOWを株として難しくしている理由は、AIの物語が弱いからだけではないはずだ。むしろ逆で、物語が強いからこそ、数字の質を厳しく見なければならない。特に気になるのはSBCだ。ここまで規模化した企業でありながら、会社はなおSBC低下を重要課題として繰り返し強調している。FY25のSBCは$1.955Bで売上比15%だった。成熟企業として見ると、これはまだ軽いとは言いにくい水準だ。

Q1には約20.1百万株を買い戻し、残りの買戻し枠も約$4.2Bあるが、ここで見たいのは買戻しの大きさそのものではなく、それが本当に1株価値の改善に繋がるのかどうかだ。買戻しがSBCの穴埋めで終わるなら、見た目の良さほど株主価値は増えない。  

加えて、ArmisとVezaの統合もまだ途中だ。会社はQ2およびFY26の成長ガイドにArmis寄与約125bpを織り込む一方で、FY26のサブスク粗利率に25bp、営業利益率に75bp、FCFマージンに200bpの逆風が出るとも明示している。これはある意味では誠実だが、裏を返せば、今のNOWは「方向性は強いが、統合コスト込みで結果を出す段階」に入っているということでもある。つまり、AI実行基盤という仮説はかなり面白いが、株としてはSBCと統合リスクを飲み込んでなお買えるか、という別の問いが残っている。  

■ 結論


現時点の私の答えはシンプルに、「SaaSの死」をそのまま信じるのは雑だと思うし、NOWはAI時代にむしろ必要性を増す側の会社かもしれない。実際、会社自身も、AIが情報を作るだけでは価値にならず、それを統制された形で業務に落とし込む基盤が必要だと明言している。その意味で、NOWを単なるSaaS企業として片付けるのは危ない。

NOWの価値は、単にLLMをつなぐことではなく、既に企業の中に入り込んだ承認フロー、権限管理、監査、CMDB、既存ワークフローの文脈を背負って実行できることにある。だから競争相手は“より賢いモデル”ではなく、“その企業の実務の中にどれだけ深く根を張っているか”になる。

だが同時に、その仮説が売上、利益率、1株価値にまで落ちるかはまだ未証明だ。だから今は、定点観測を継続するが、株としては触らない。

次回以降に見るべきなのは、それがコア成長、マルチプル維持、SBC改善にどこまで繋がるかだ。企業としての面白さはかなり高い。だが、株として買えるかどうかは、まだ別の問いであると結ぶ。

■ 次回確認ポイント


・AI需要がコア成長に波及するか(Now Assistの勢いが、Subscription revenue と cRPO の再加速に繋がるか)
・Armis統合で利益率が壊れないか(粗利率、営業利益率、FCFマージンの悪化が一時的で収まるか)
・大企業深耕が続くか(ACV500万ドル超顧客数、平均ACV、更新率が維持・拡大するか)
・SBCが本当に軽くなるか(SBC / 売上比率が低下し、自社株買いが希薄化相殺で終わらないか)
・中東遅延が一過性か(オンプレ大型案件の期ズレが解消し、需要の弱さに変わらないか)
・AI新製品が実行基盤として商用化していくか(EmployeeWorks、AI Control Tower、Workflow Data Fabric が大型案件やクロスセルに育つか)


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