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【SentinelOne(S)Q1 FY2027】売上再加速はまだ見えない。それでもARRの中身が変わり始めた理由

SentinelOne(S)のQ1 FY2027決算があった。

前回決算では、Cloudflare案件が例外なのか、それとも始まりなのかを見た。

ただ、今回の主役はCloudflare案件ではない。

Cloudflare案件は、前回決算における象徴的な事例だった。厳密な比較検証の場に持ち込めれば、SentinelOneは競合に勝てる可能性がある。そのことを示した案件だったと思う。

しかし、今回のQ1で見るべきは、そこではない。

今回見るべきは、SentinelOneが単なる端末防御の会社から、AI Security、Data、Cloud、SOC自動化を束ねる統合セキュリティ基盤へ進み始めているのか、という点だ。

EDR、つまり企業のPCやサーバーなどの端末を監視し、攻撃を検知・対応するエンドポイント防御だけで見ると、SentinelOneはCrowdStrikeの後追いに見えやすい。

実際、CrowdStrikeの規模、ブランド、既存顧客基盤は強い。SentinelOneがこの土俵で真正面から勝っているとは、まだ言えない。

ただ、今回の決算では、少し違う見え方が出てきた。

売上再加速がはっきり証明された決算ではない。

でも、ARR、つまり年間経常収益の中身は変わり始めている。

ここが今回の一番大きな論点だと思う。



Q2 FY2026 → Q3 FY2026 → Q4 FY2026 → Q1 FY2027

・売上高:$242.2M → $258.9M → $271.2M → $276.7M
YoY:+21.7% → +22.9% → +20.3% → +20.8%
QoQ:+5.7% → +6.9% → +4.8% → +2.0%
Q1 FY2027の売上高は$276.7M。YoY +20.8%、QoQ +2.0%。
売上は引き続き20%台前半で伸びている。
ただし、明確な売上再加速が起きたとまでは言いにくい。QoQでも+2.0%にとどまる。Q4からQ1への季節性を考えれば大きな問題ではないが、「売上が急加速した決算」と見るのは違うと思う。
今回の決算を売上だけで見ると、やや物足りない。
ただし、ARRの中身まで見ると、評価は少し変わる。

・ARR:$1.001B → $1.055B → $1.119B → $1.163B
YoY:+24.2% → +22.8% → +21.6% → +22.6%
QoQ:+5.6% → +5.4% → +6.0% → +3.9%
ここは売上より少し良い。Q4 FY2026のARR成長率はYoY +21.6%だったが、今回Q1では+22.6%へ少し再加速している。
ARRは、今ある契約を年換算した経常収益の土台だ。売上よりも先行性がある。

・net new ARR:$53.3M → $54.0M → $63.8M → $43.5M
YoY:+20%超 → 約横ばい〜微増 → +6% → +55%
QoQ:+12%前後 → +1.3% → +18.2% → -31.8%
QoQではQ4の$64Mから減っている。ただし、Q4はサイバー企業にとって強い四半期であり、Q1は季節的に弱くなりやすい。したがって、ここはQoQだけで見るより、前年同期比で見るべきだと思う。
前年比+55%はかなり強い。
今回のQ1で一番良かった数字は、売上ではなくnet new ARRだ。
売上はまだ大きく跳ねていない。しかし、将来売上の土台になるARRの純増は明確に改善している。

・$100K+ ARR顧客:1,513 → 1,572 → 1,667 → 1,702
YoY:+22.7% → +20.0% → +18.1% → +16.7%
QoQ:+3.7% → +3.9% → +6.0% → +2.1%
規模拡大に伴う自然な鈍化とも言えるが、大口顧客数の伸びが再加速しているわけではない。
ただし、今回のコールで会社は、$100K+顧客のNRR、つまり既存大口顧客からの売上維持・拡張率が、前年同期比でも前四半期比でも改善したと説明している。
Q4時点では、$100K+顧客のGRR、つまり解約・縮小前の総維持率は96%、NRRは109%だった。今回Q1では具体的な数値開示はないが、CFOは$100K+顧客のNRRが110%を超えたと説明している。

・事業別売上構成比:未開示
・単一セグメント:会社は単一の事業セグメントとして開示
・地域別売上構成比:Q1 FY2027は米国61%、海外39%
SentinelOneは、事業別・製品別の売上構成比を開示していない。10-Q上では単一の事業セグメントとして開示しており、製品別売上は確認できない。

・GAAP粗利率:75% → 74% → 73% → 72%
前年差:±0pt → -1pt → -2pt → -3pt
QoQ差:±0pt → -1pt → -1pt → -1pt
売上は伸びている。ARRも伸びている。Data、AI、Cloudの構成も高まっている。
しかし、GAAP粗利率は75%から72%まで低下している。
10-Qでは、コスト増の要因として、事業拡大に伴うクラウドホスティング利用料の増加、顧客サポート費用、買収に伴う無形資産償却、資産計上した内製ソフトウェア償却などが挙げられている。
つまり、DataやAI SIEM、Cloudが伸びることは戦略的には良い。
ただし、それがすぐに粗利率改善につながるわけではなく、データ量やクラウド利用が増えれば、短期的にはコストも増える。

・non-GAAP粗利率:79% → 79% → 78% → 77%
前年差:-1pt → -1pt → -1pt → -2pt
QoQ差:±0pt → ±0pt → -1pt → -1pt

non-GAAP粗利率も低下している。Q1 FY2027は77%。
ここは、単純に「AI SecurityやDataが伸びているから良い」とだけ見てはいけない。
AI SIEMやData Lakeは、顧客のログやセキュリティデータを大量に扱う。顧客価値は高いが、クラウドコストも重くなりやすい。

・GAAP営業利益率:-33% → -28% → -29% → -29%
前年差:+7pt → +14pt → +7pt → +9pt
QoQ差:+5pt → +5pt → -1pt → ±0pt
non-GAAPでは黒字化している。だが、GAAPではまだ赤字が続いている。SBC、買収関連費用、無形資産償却などを除いた姿と、実際の会計上の姿には大きな差がある。

・non-GAAP営業利益率:2% → 7% → 6% → 4%
前年差:+5pt → +12pt → +5pt → +6pt
QoQ差:+4pt → +5pt → -1pt → -2pt

non-GAAP営業利益率はQ1 FY2027で4%。
Q1の4%だけを見ると、まだRule of 40には遠い。
Rule of 40とは、SaaS企業を見るときに使われる目安で、売上成長率と利益率の合計が40%を超えるかを見る考え方だ。
Q1の売上成長率は約21%、non-GAAP営業利益率は4%。合計は25%程度。

・GAAP EPS:-$0.22 → -$0.18 → -$0.33 → -$0.23
・non-GAAP EPS:$0.04 → $0.07 → $0.07 → $0.04
ここも、non-GAAPだけ見れば前向きだが、GAAPを見るとまだ距離がある。

・営業CF:-$1.0M → $21.0M → $4.4M → $38.5M
YoY:悪化 → 黒字転換 → 黒字転換 → -26.4%
QoQ:大幅悪化 → 改善 → -79.2% → +780.8%
営業CFマージン:0% → 8% → 2% → 14%
Q4の$4.4Mからは大きく改善した。ただし、前年同期のQ1 FY2026は$52.3Mだったため、YoYでは減少している。
Q1の営業CFは悪くない。
しかし、前年同期比では弱い。
また、Sは請求タイミングや大型契約の線形性によって、四半期の営業CFがぶれやすい。
そのため、単四半期だけで判断せず、TTM、つまり直近12か月ベースのFCFマージンも見る必要がある。

・設備投資額:$6.1M → $5.1M → $6.7M → $7.8M
設備投資額 / 売上比率:2.5% → 2.0% → 2.5% → 2.8%
ここでいう設備投資額は、PPE、つまり有形固定資産購入と、資産計上した内製ソフトウェア費用の合算で見ている。
SはDataやAI SIEM、Cloudが伸びるほど、クラウドホスティングやソフトウェア開発関連の投資負担は増える。
Q1の設備投資額は$7.8Mで、売上比率は2.8%。重すぎるわけではないが、過去4四半期ではやや高い。

・FCF:-$7.1M → $15.9M → -$2.3M → $30.7M
FCFマージン:-3% → 6% → -1% → 11%
Q4はFCFがマイナスだったが、Q1ではプラスに戻った。前向きに見たい。
ただし、会社が強調しているadjusted FCF、つまり調整後FCFは$61.4M、マージン22%だ。これはイスラエル税務当局との合意に基づく一時的な税金支払い$30.7Mを足し戻した数字である。
したがって、今回は、通常FCFと調整後FCFを分けて見るべきだと思う。
通常FCFは$30.7M、マージン11%。
調整後FCFは$61.4M、マージン22%。
調整後FCFだけを見るとRule of 40に近づいたように見えるが、営業利益率ベースではまだそこまで強くない。

・SBC:$73.9M → $75.3M → $79.7M → $74.9M
YoY:+14.2% → +7.3% → +7.5% → +9.1%
QoQ:+7.6% → +2.0% → +5.8% → -6.0%
SBC / 売上比率:30.5% → 29.1% → 29.4% → 27.1%
SBC、つまり株式報酬費用はQ1 FY2027で$74.9M。売上比率は27.1%。
少しずつ下がっているが、重い。
SBCはnon-GAAP利益から除外されるが、株主にとっては希薄化として効く。Sが本当に株主価値を生み始めたと言うには、SBC / 売上比率がさらに下がり、株式数の増加も落ち着く必要がある。

・GAAP加重平均株式数:330.9M → 332.7M → 約334.8M → 337.0M
QoQ:+0.9% → +0.5% → +0.6% → +0.7%
急激な希薄化ではないが、増加は続いている。SBCが重い限り、自社株買いをしても、その多くが希薄化の打ち消しに回る可能性がある。

・現金・現金同等物・投資:$1.2B → $873.6M → $769.6M → $812M
会社は無借金である。バランスシートは悪くない。むしろ、まだ十分に余裕がある。
ただし、Q1ではKnight JVへの$100M投資もあり、戦略投資の使い方は今後も見る必要がある。

・Q2 FY2027ガイダンス:売上 $289M〜$291M
中央値:$290M
YoY:約+19.8%
QoQ:約+4.8%
悪い数字ではないが、売上成長率が大きく再加速する見通しではない。

・FY2027ガイダンス:売上 $1.195B〜$1.205B
中央値:$1.200B
YoY:約+19.8%
FY2027通期売上ガイダンスは据え置きだった。
一方で、non-GAAP営業利益ガイダンスは$110M〜$120Mから、$115M〜$125Mへ上方修正された。中央値では$115Mから$120Mへ引き上げられた形になる。
つまり、今回の決算は、売上ガイダンスを上げた決算ではなく、利益ガイダンスを上げた決算だ。


今回のS決算は、売上再加速が証明された決算ではない。

売上成長率は20%台前半で安定しているが、強烈な加速はない。
FY2027売上ガイダンスも据え置きだ。

一方で、ARR、net new ARR、Emerging solutionsの構成変化は明確に良い。

つまり、今回の決算は「売上が跳ねた決算」ではなく、「ARRの中身が変わり始めた決算」だと思う。

■ Bookingsの50%から、ARRの50%へ


今回の本丸はここだ。

前回Q4では、会社はEmerging Productsが年間Bookingsの50%超を占めたと説明していた。

これは重要だったが、あくまでBookingsの話だった。
Bookingsは契約の獲得だ。将来売上の先行指標ではあるが、すぐに売上やARRに変わるわけではない。

今回Q1では、Emerging solutionsがtotal company ARRの半分に到達した。

これは意味が違う。

Bookingsの50%超は、「新しい製品群が売れている」という話だ。
ARRの50%は、「会社の経常収益の中身が変わっている」という話だ。


つまり、Sは単なる端末防御の会社ではなくなりつつある。

Endpoint、つまり端末防御は依然として重要だ。経営陣も、AI時代においてもendpointが重要なcontrol plane、つまり実行地点の管理面であると強調している。

ただし、Sの成長ストーリーはendpointだけではない。

Prompt SecurityによるAI利用の可視化・制御。
Purple AIによるSOCの自動調査。
AI SIEMによるセキュリティデータの統合。
Cloud runtime securityによるクラウドワークロードの実行時防御。
WayfinderによるAIと人間の監督を組み合わせたサービス。

この組み合わせが、Sを単なるEDR企業から、統合セキュリティ基盤へ押し上げる可能性がある。

ただし、会社は製品別売上を開示していない。
Prompt SecurityのARR絶対額も未開示だ。
Data ARRやCloud ARRも、Q4時点のマイルストーンはあるが、Q1の絶対額は開示されていない。


だから、「中身が変わっている」ことは確認できる。
しかし、「それが売上再加速として完全に証明された」とまでは言えない。



■ Prompt Securityは新しい入口になるか?


今回もPrompt Securityは重要だ。

Prompt Securityは、企業内の生成AI利用を可視化し、データ漏えいや不適切なAI利用を制御するAI Security製品だ。

会社は、Prompt SecurityのARRがQ1でもQoQでほぼ倍増したと説明している。Q4でも倍増していたため、少なくとも足元の伸びは非常に強い。

ここが面白いのは、Promptが既存顧客へのアップセルだけではなく、競合顧客への入口になっている点だ。

端末防御だけで勝負すると、CrowdStrikeやMicrosoftの既存基盤は強い。
しかし、AI利用の可視化・制御という新しい痛点では、顧客はまだ標準解を持っていない。

そこでSが先に入り込めれば、その後にEndpoint、Cloud、AI SIEM、Purple AIへ広げる余地がある。

つまり、Prompt Securityは単なる追加製品ではない。
Sにとって、新しい営業入口になる可能性がある。

ただし、繰り返すが、絶対ARRは未開示だ。

「倍増」は強い。
でも、もとの規模が小さければ、倍増しても会社全体への寄与は限定的だ。

次回以降、Prompt Securityがどこまで会社全体のnet new ARRやNRR改善に効いているのかを見たい。

なお、Purple AIについても少し触れておきたい。

会社は資料の中で、サイバー防御の進化を、McAfeeやSymantecのような古いアンチウイルス、CrowdStrikeやMicrosoftのようなクラウド監視・人間主導の次世代防御、そしてSentinelOne + Purple AIによる自律型セキュリティという3段階で整理している。

つまり、会社は自分たちを、CrowdStrikeやMicrosoftの後追いではなく、その次に来るAIネイティブなセキュリティ基盤として見せている。

ただし、投資家としてはここをそのまま信じる必要はない。Purple AI単体のARRや収益貢献は開示されていない。

だから、見るべきは物語ではなく、Purple AIが非Endpoint ARR、NRR、net new ARR、AI SIEMの採用拡大にどこまで効いているかだ。



■ AI SIEMとDataは、Sの上位レイヤーになれるか?


もう一つ重要なのは、DataとAI SIEMだ。

SIEMとは、セキュリティ情報とイベント管理の仕組みで、企業内のログやセキュリティイベントを集めて分析する基盤だ。Splunkが強かった領域でもある。

SはここにAI SIEMとして入ろうとしている。

これはかなり重要な論点だ。

端末防御は重要だが、サイバーセキュリティの上位レイヤーは、結局データと運用に寄っていく。どこで何が起きたのか。どのアラートを優先するのか。どのログを相関分析するのか。どこまで自動で調査し、どこから人間が判断するのか。

ここを握る会社は強い。

SがAI SIEMやData Lakeを通じて、顧客のセキュリティ運用データを握れるなら、単なる防御ソフトではなく、SOCのデータ・運用基盤に近づく。

これはモートの観点で重要だ。

ただし、Data事業には粗利率の注意点もある。

大量のログを扱うにはクラウドコストがかかる。今回の10-Qでも、クラウドホスティング利用料の増加がコスト増の要因として示されている。

つまり、DataやAI SIEMは戦略的には魅力的だが、粗利率を維持しながら伸ばせるかはまだ確認が必要だ。



■ 利益率改善は本物か?


今回、会社はFY2027のnon-GAAP営業利益ガイダンスを上方修正した。

これは良い。

売上ガイダンスは据え置きだが、利益ガイダンスを上げた。Q1のnon-GAAP営業利益もガイダンスを上回った。

Sは、成長だけでなく、収益性改善の方向に進んでいる。

ただし、ここも見方を間違えたくない。

今回発表された8%の人員削減は、短期的には利益率改善に効く。会社は年間$45Mのコスト削減効果を見込んでいる。一方で、Q2には約$25Mのリストラクチャリング費用が発生する見通しだ。

経営陣は、これは防御的なリストラではなく、AI、Data、Cloud、Endpointに資源を再配分するための組織簡素化だと説明している。

この説明は理解できる。
ただし、投資家としては確認が必要だ。

本当に低ROI部門を削って、高ROI領域に振り向けているのか。
それとも、売上成長が弱いから費用を削っているのか。


答えは、次の2〜3四半期のnet new ARRに出ると思う。

人員削減後もnet new ARRが伸び続けるなら、これは営業効率改善だ。
逆にnet new ARRが鈍化するなら、成長力を削った可能性がある。




■ SBCの壁はまだ残る


前回に続いて、SBCは重く見る。

Q1 FY2027のSBCは$74.9M。売上比率は27.1%。

改善はしている。Q2は30.5%、Q3は29.1%、Q4は29.4%、Q1は27.1%。

ただし、まだ高い。

non-GAAP営業利益率が4%でも、SBCが売上の27%ある会社を、単純に「利益が出始めた」とは言いにくい。

SBCは会計上の現金支出ではない。だが、株主にとっては希薄化として効く。つまり、既存株主の1株あたり価値を薄める。

Sが本当に株主価値を作る会社になるには、少なくともSBC / 売上比率が継続的に下がり、株式数の増加も落ち着く必要がある。

ここは、Sを単なる監視銘柄から投資候補へ引き上げるうえで、かなり重要な条件だと思う。



■ モートは拡大しているのか?


今回の決算で、モートは拡大方向だと思う。

理由は3つある。

1つ目は、製品の広がりだ。

Sは単なる端末防御の会社ではなくなっている。Prompt Security、Purple AI、AI SIEM、Cloud、Wayfinderが組み合わさり、統合セキュリティ基盤に近づいている。

2つ目は、ARRの中身だ。

前回Q4ではEmerging ProductsがBookingsの50%超だった。今回Q1ではEmerging solutionsがARRの半分に到達した。これは、会社の経常収益構造そのものが変わっているという意味で大きい。

3つ目は、運用への入り込みだ。

Endpointだけなら置き換えはあり得る。
しかし、Data、AI SIEM、Purple AI、Prompt Securityまで組み合わさると、顧客のセキュリティ運用そのものに入り込む。ここまでいけば、スイッチングコストは高くなる。

ただし、まだ「圧倒的モート企業」とまでは言わない。

理由は、競合が強すぎるからだ。

CrowdStrikeはEndpointとFalcon platformで強い。Microsoftはバンドルと既存顧客基盤で強い。Palo Altoは統合セキュリティの総合力がある。ZscalerはZero Trust領域で強い。SplunkやDatadogのようなデータ・監視側のプレイヤーもいる。

Sは良い位置にいる。
ただし、まだ勝者ではない。

今のSは、「良い会社」から「強い統合セキュリティ基盤」へ進む途中の会社だと思う。



■ 今回の株価反応をどう見るか


決算後の、株価は-8%と市場が今回の決算を手放しで評価しなかった理由は理解できる。

売上はガイダンス内だった。
FY2027売上ガイダンスは上がらなかった。
Q2売上ガイダンスも大きな加速ではない。
そして8%の人員削減も発表された。

これだけ見ると、市場が「成長再加速がまだ見えない」と判断したのは自然だと思う。

一方で、市場が短期的に見落としている可能性があるのは、ARRの中身だ。

今回の決算は、売上再加速を証明した決算ではない。
しかし、非EndpointのARRが約半分に達したことは、会社の構造変化としてかなり重要だ。

Sを見るなら、株価反応だけで判断するより、「売上にはまだ出ていないが、ARRの中身が変わっている」という点を丁寧に見るべきだと思う。



■ この見方が間違っている可能性


この見方が間違っている可能性もある。

1つ目は、Prompt SecurityやAI SIEMが思ったより小さい可能性だ。

ARRが倍増していると言っても、絶対額は未開示だ。もし小さい規模からの倍増にすぎないなら、会社全体の成長を再加速させるにはまだ時間がかかる。

2つ目は、DataやAI SIEMが粗利率を削る可能性だ。

顧客価値は高いが、ログやデータを大量に扱う事業はクラウドコストが重い。non-GAAP粗利率が77%へ下がっている点は、次回以降も確認が必要だ。

3つ目は、人員削減が成長力を削る可能性だ。

会社は効率化と再配分だと説明している。しかし、営業組織の削減や組織再編がnet new ARRに悪影響を与える可能性はある。

4つ目は、競合がAI Securityをすぐに追いつく可能性だ。

CrowdStrike、Microsoft、Palo Altoは開発力も販売力も強い。SがPrompt SecurityやPurple AIで先行しているとしても、その優位がどれくらい持続するかはまだ分からない。

5つ目は、SBCの改善が遅い可能性だ。

SBC / 売上比率は改善しているが、まだ27%台だ。ここが下がらない限り、1株あたり価値創造という意味では評価しにくい。



■ 暫定投資判断


今回の決算で、Sへの見方は少し上がった。

ただし、投資判断を大きく変えるほどではない。

前回は、Cloudflare案件を通じて、Sが競争比較の場で勝てる可能性を見た。
今回は、Sの収益構造がEndpoint中心から、AI Security、Data、Cloud、SOC自動化へ広がっていることを確認した。

特に、Emerging solutionsがARRの半分に到達したことは大きい。

これは、単なる売上構成の話ではない。
Sのモートがどこにできるのかという話だ。

端末防御だけなら、CrowdStrikeの後追いに見えやすい。
しかし、AI利用制御、セキュリティデータ、クラウド実行時防御、SOC自動化まで束ねるなら、Sは別の土俵を作れる可能性がある。

ただし、まだコアでもサテライト候補でもない。

売上ガイダンスは上がっていない。
GAAP赤字は続いている。
non-GAAP粗利率は低下している。
SBCはまだ重い。
Prompt SecurityやAI SIEMの絶対規模も見えない。

だから、今のSは「買う銘柄」ではなく、「サイバー地図を描くうえで外しにくくなった重要監視銘柄」だと思う。

CRWD、PANW、ZS、RBRK、NETを見るなら、Sも比較軸として追うべきだ。

ただし、私のポートフォリオに入れるには、もう一段の確認が必要だ。

次回決算で見るべきは、売上ではなく、ARRの質だと思う。


■ 次回チェックポイント


・FY2027売上ガイダンスを上方修正できるか
・Q2売上ガイダンス$290Mを上回れるか
・net new ARRの前年比成長が継続するか
・$100K+顧客のNRRが110%超で安定するか
・GRR 96%水準を維持できるか
・Prompt SecurityのARR絶対額、またはより具体的な規模感が出るか
・AI SIEM / Data ARRの絶対額が更新されるか
・非Endpoint ARR比率が50%を超えてさらに上がるか
・non-GAAP粗利率77%から下げ止まるか
・クラウドホスティング費用の増加が粗利率を圧迫し続けないか
・SBC / 売上比率が25%を明確に下回るか
・GAAP営業赤字が縮小するか
・8%人員削減後も営業生産性とnet new ARRが悪化しないか
・Flex案件がRPO、ARR、NRR改善に接続するか
・競合置換案件がCloudflare以外でも再現するか



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