アーム(ARM)の最新決算:半導体設計のリーディングカンパニーのAI分野での成長に向けた展望とは?【7-9月/Q2,2025】
アーム・ホールディングス(ARM)は、半導体設計に特化し、自社で製造は行わないファブレスな、世界的な企業として知られ、スマートフォン、IoTデバイス、サーバー、車載システムなど、幅広いデバイスでその技術が活用されています。
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AIとIoT時代を支える半導体デザイン企業
アームは省電力設計が特徴で、スマートフォンやタブレットのプロセッサの多くに採用される「ARM*アーキテクチャ」は、エネルギー効率に優れており、長年にわたりモバイル市場の成長を支えてきました。
近年では、AIや自動運転、自動化技術の発展により、データセンターや車載分野、IoT市場でも需要が拡大。アームはこれに対応すべく新たな製品や技術を提供し、技術的なリーダーシップを維持しています。
*アーキテクチャ-システムや構造物の基本設計や設計思想を指す言葉
市場予想を上回るも課題が残る結果に
アームの今回の四半期決算では市場予想を上回る売上高と1株利益(EPS)を記録しましたが、調整後の営業利益率が前年同期比で低下するなど、課題が指摘されています。
決算概要<7-9月/Q2,2025>
売上高:8億4,400万ドル(市場予想 8億1,100万ドル)
ライセンス収入:3億3,000万ドル
前年同期比15%減。前四半期に72%増という急成長を遂げた反動が出た形となりました。受注の順調な進捗により回復が待たれます。
ロイヤルティ収入:5億1,400万ドル
前年同期比23%増。スマートフォン市場の回復と次世代アーキテクチャ「Armv9」の普及が寄与し、前四半期の17%増からさらに成長を加速。営業利益:6,400万ドル(黒字化)<*non-GAAP:3億2,600万ドル>
(non-GAAPは、一般的な会計基準に基づかない企業(アーム)独自の業績指標。)
純利益:1億700万ドル(黒字化)
EPS(調整後):0.30%(前年同期比▼16.7%,市場予想0.26ドル)
1株利益は市場予想を上回る内容で、企業としての収益力を一定程度証明。営業利益率:38.6%(前年同期47.6%)
エンジニア増員によるコスト増が影響。
ライセンス収入とロイヤルティ収入で支える
アームの収益は大きく「ライセンス収入」と「ロイヤルティ収入」の二つに分かれます。今回の決算では、ライセンス収入が減少した一方、ロイヤルティ収入が増加しています。
Armのロイヤルティ収入とライセンス収入には以下のような違いがあります:
ライセンス収入
Armが設計したプロセッサーコアや技術の知的財産権(IP)を他の企業に使用許諾する際に得る収入です。
顧客企業がArmの技術を使って半導体製品を設計・開発する権利を得るために支払う対価です。
通常、契約時に一括で支払われる初期費用(イニシャルフィー)の形を取ります。
新規の戦略的長期契約などが締結されると大きく増加する可能性があります。
ロイヤルティ収入
Armの技術を使って製造された半導体チップが出荷される際に、出荷数量に応じて得られる継続的な収入です。
顧客企業がArmのIPを組み込んだ製品を販売するたびに支払う使用料です。
製品の販売数や市場の需要に応じて変動します。
長期にわたって安定的に得られる収入源となります。
主な違い
ライセンス収入は技術使用の許諾時に発生する一時的な収入であるのに対し、ロイヤルティ収入は製品販売に応じて継続的に発生します。
ライセンス収入は契約締結時に大きく増加する可能性がありますが、ロイヤルティ収入は市場動向に応じてより緩やかに変動する傾向があります。
ライセンス収入は将来のロイヤルティ収入の先行指標となり、通常2〜3年後にロイヤルティ収入として実を結びます。
この2つの収入源を組み合わせることで、Armは短期的な収益と長期的な安定収入を確保し、持続可能なビジネスモデルを構築しています。
ArmV9
「Armv9」は、スマートフォン分野で急速に採用が進んでおり、現在のロイヤルティ収入の約25%を占めています。この比率は、1年前の10%から大きく増加しており、将来的な収益の柱として期待されます。
ARMアーキテクチャは、ARMホールディングスが設計・ライセンスする省電力性に優れたプロセッサ*アーキテクチャ。RISC(縮小命令セットコンピュータ)の特徴を持ちつつ、一部CISC的(1つの命令で複数のレジスタの値をメモリに書き込んだり、メモリから読み込んだりすることができる)な機能も備えています。
スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスで広く採用されており、低消費電力と十分な性能を両立しています。また、IoTデバイスや組み込みシステムなど、幅広い用途で使用されています。
ARMアーキテクチャは、用途に応じて3つのプロファイルに分かれています。高性能なAプロファイル(Cortex-A)、リアルタイム性能に優れたRプロファイル(Cortex-R)、低消費電力のMプロファイル(Cortex-M)があります。
ARMは半導体メーカーにライセンス供与する事業モデルを採用しており、多くの企業がARMベースのプロセッサを製造しています。これにより、ARMアーキテクチャは世界中で広く普及し、2,800億を超えるデバイスに搭載されています。
Armのアーキテクチャが・・・↓
2025年度Q3ガイダンスは市場予想を下回る
アームは第3四半期(10-12月)のガイダンス(同社の見通し)として、
売上高見通し:9.2億~9.7億ドル(前年同期比15%増)
EPS見通し:0.32~0.36ドル
と発表。売上高の中央値は前年同期比15%増と一定の成長を見込むものの、依然として市場予想を下回る水準で、今後の成長を期待する投資家にとってはやや慎重な見通しとなっています。
2025年3月期の通期見通し
売上高38億ドル~41億ドル
調整後EPS1.45ドル~1.65ドル
通期見通しについては、前回予想からの変更はなく、ハースCEOは「急いで進めるつもりはない」とコメントし、慎重かつ堅実な成長戦略を貫く姿勢を強調しました。
今後の課題とAI等成長分野への取り組み
産業用および自動車向け市場の低迷が影響
アームの収益構造において、産業用および自動車向け市場の低迷が依然として影響を及ぼしています。第3四半期(10-12月)には、スマートフォン市場の緩やかな回復が見込まれていますが、産業用および自動車向け分野の不振が成長を相殺する可能性をアナリス等から指摘されています。
自動車市場の電動化が進む一方で、半導体供給のボトルネック(全体の作業工程の中で、最も良くない影響を与えてしまっている箇所や工程のこと)が依然として課題であり、業界全体としての需要は緩やかに推移しています。
アームは自動車業界向けの設計にも力を入れており、長期的には電動車や自動運転市場の成長が収益の柱になると期待されていますが、自動車市場が再び活性化するまでは、モバイルとAI分野での成長を強化することが鍵となりそうです。
スマートフォン市場とAI分野の成長はどう影響する?
同社は今後、スマートフォン市場の回復とAI分野の成長に対する期待を持ちつつ、AIやIoT、5G、データセンターなどの成長分野で新たなビジネスチャンスを追求しています。特に、AI関連のデータ処理ニーズの高まりによって、アームのアーキテクチャがAIチップやエッジデバイスでの導入を加速させる可能性があります。
スマートフォン市場の回復は、アームにとってもポジティブな影響をもたらしています。AIとスマートフォンの融合が進む中、アームの省電力設計技術は、消費電力が抑えられるエッジデバイスの開発に役立つと考えられています。
ADRとは
ADR(American Depositary Receipt)は、外国企業の株式を代表する米国の銀行が発行する譲渡可能な証券です。これにより、米国の投資家は自国の取引所で外国企業の株式を売買できるようになります。ADRは外国企業の株式を米国の証券取引所で取引できるようにする仕組みであり、ARMはこの仕組みを利用して上場しています。ADRのかたちをとる代表的な企業は、
ARM<アーム・ホールディングス(イギリス)>
ARMは現在、ADR(米国預託証券)としてNASDAQに上場、取引。
ティッカーシンボル:ARM
ASML(オランダ)
ASMLはNASDAQにADRとして上場、取引。
ティッカーシンボル:ASML
1 ADRは1株のオランダ上場株式に相当します。
TSMC(台湾)
TSMCはニューヨーク証券取引所(NYSE)にADRとして上場、取引。
ティッカーシンボル:TSM
1 ADRは5株の台湾上場株式に相当します。
もちろん、日本企業もADRと形で米国市場で取引されています。
ソニーグループ (SONY)
トヨタ自動車 (TM)
ホンダ (HMC)
三菱UFJフィナンシャル・グループ (MUFG)
みずほフィナンシャルグループ (MFG)
野村ホールディングス (NMR)
などです。
ADRのメリット
国際分散投資の容易さ:米国の投資家が容易に外国企業に投資できます。
取引の利便性:米国の証券取引所で、米ドル建てで取引できます。
配当の受け取り:配当金は通常、米ドルで支払われます。
情報の入手:米国の証券取引委員会(SEC)の規制に従い、英語で財務情報が開示されます。
ARMを筆頭にASMLやTSMCのようにADRを通じて米国市場にアクセスする企業も多く存在します。投資家は、ADRを通じて世界中の優良企業に投資する機会を得ることができます。
About アーム
設立:1990年
イギリス、ケンブリッジでエイコーン・コンピュータ、アップル、VLSIテクノロジーの3社の共同出資により設立。上場1:1998年ロンドン証券取引所と同時にナスダックに上場(ADR)。
買収:2016年、ソフトバンクがアーム社を買収
(240億ポンド→310億ドル→約3.3兆円当時)
上場廃止上場2:2023年9月米国ナスダックに再上場(ADR)
ティッカー・シンボル:ARM
株式時価総額:1,546億ドル(11/8)
年間売上高:32億ドル<2024年会計通期>
ライバル企業:インテル<INTC>,アドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD>,エヌビディア<NVDA>
従業員数:6,000人
まとめ
アームの第2四半期決算は、スマートフォン市場の回復に支えられ、一定の成長を示しましたが、産業用および自動車向け市場の低迷が足かせとなり、第3四半期のガイダンスではやや慎重な見通しが示されました。同社はAIやスマートフォン分野での成長を強化する戦略を進めており、特に次世代アーキテクチャ「Armv9」の普及が今後のロイヤルティ収入を支える重要な要素となることが期待されています。
よくある質問 Q&A
Q1:アームのロイヤルティ収入とは何ですか?
A1:アームのロイヤルティ収入は、同社の技術が使用される製品が販売された際に得られる収入です。例えば、スマートフォンにアームのプロセッサー設計が採用されると、その製品が販売されるごとに一定の収入がアームに入ります。
Q2:アームの「Armv9」アーキテクチャとは?
A2:「Armv9」は、アームが開発した最新の半導体アーキテクチャです。性能向上と省電力化に優れており、特にスマートフォン市場で広く採用されているほか、AIやIoTデバイスにも適用が進んでいます。
Q3:アームはAI分野でどう成長していますか?
A3:アームはAI対応のプロセッサ設計にも注力しており、エッジデバイス向けの技術を提供しています。AIとエッジコンピューティングの需要が高まる中、アームの省電力設計は多くのAIデバイスに採用されており、今後も成長が期待されます。
Q4:アームの今後の見通しはどうですか?
A4:2024年第3四半期のガイダンスは市場予想を下回るものの、通期の見通しは堅実な成長が見込まれています。スマートフォン市場の回復と、AIや自動車向けの需要拡大が今後の成長を後押しする見込みです。
これまでのアームは・・・
*ご注意-このnoteは企業IRや直近のニュース等を参考に、一般的な情報提供を目的として書いています。投資家に対する投資アドバイスではありません。投資における最終意思決定は、ご自身の判断でお願いいたします。またデータ等の数字は、細心の注意を持って記載していますが当noteに載せている情報に基づく行動で損失が発生した場合においても、一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。
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