洪水とゴルフ
テレビをつけると、洪水警報が発令されていた。
なんと自分の住んでいる街だ。
確かに振り返れば一日中雨と雷の音が鳴り響いていた。
我が家は基本的には大丈夫だったものの、それでも断水したり、下水が溢れて車が壊れないかなど、それなりにそわそわしていた夜だった。
でも断水中の家にいても落ち着かないし、車も水が引くまで何もできない。幸いにも外は小雨に変わっていたから、室内ゴルフに行ってきた。
レッスンの枠が空いてはいたものの、警報も出ているしゴルフの先生も休んでいるだろうと、たかを括ってスクールのドアを開けると、いつも通り先生はいた。
「雨大丈夫でしたか〜?駅前も、ひざまでつかって、けっこうたいへんだったんですよ〜〜ふふふ」
先生は軽やかにそう言うと、いつも通りレッスンをしてくれた。
出だしはダメダメだったけど、レッスン終わりは少し当たりが良く、画面上のボールの飛距離も伸びた。
帰ってSNSを開くと、タイムラインに「A駅、やばい」(最寄り駅)という文と、冠水した街の画像が出てきた。
画像をよくみると、知っているクリーニング屋や電気屋があると気づいた。見知った道が海のようになっていた。
これは大変だ。
先生のふわっとした笑顔が蘇る。
「駅前も、ひざまでつかって、けっこうたいへんだったんですよ〜〜ふふふ」
確かに内容は事実だけど、もっと大変そうに言ってくれないとあまりわからない。それともあんまり大変じゃなかったのか?
とにかくそんな中押しかけてしまって申し訳なかったな。
でもそういう非日常の時、日常の娯楽があるのは本当にありがたい。
私だったら絶対に帰宅しているし、別に帰宅していてくれてよかったけど、助かった。
生きていると、コントロールできない事象、トラブルにあたったりするのが当たり前だ。(普通に車はあらかじめ避難させておけばよかった)
もちろん「コントロールできないこと」はいいことも悪いこともある。一日経てば、すっかり水も引くし、だいたい元通りになるし、断水のおかげで朝マックもできたし。
室内ゴルフはフォームも動画ですぐ確認できるし、フォームには正解があるし、正直かなり楽しい。
体力さえ許せばいつまでもできそうだ。
「正しい」を追うのは非常にシンプルで快感だ。ずっとできてしまうあぶない魅力がある。
もちろん実際はもっとずっと複雑だ。ゲームだと急にうまくいかなかったりするし、心の持ちようや応用力なども関係してくる。
でもスポーツの魅力は「正しさ」がベースにはあると思う。
ルールのある世界で正しさを追いかけた人たちが、どういう道を辿るのかを見たいのだと思う。
(というかそもそもコントロールできない世界に対して、ルールを決めるのも、すごくわかるし、人間らしくて好きだ)
意外とそういう考え方が、絵にも出ているような気もしないでもない。
