【掌編】 ミステリアスな珍客/せりふ三題噺
「ショート…いや、グランデサイズで」
のっけから早口に注文が口ごもる。
行きつけの店ではホットで済む。
コンビニすらSサイズとしか頼まない。
同じコーヒー一杯でも呼び方はまちまちだ。
腹ごしらえにペンネもついでに頼んだ。
無難にアラビアータにした。
というよりあとのメニューは
見たことも聞いたこともなかった。
カウンターの左にトレイの返却口がある。
その奥にあるWCに向かう。
オーダーが入ってから茹でるのなら
ペンネが来るのはまだ先だろう。
WC は落ち着いた色の壁紙で統一されていた。
洗面台の角に業務用の芳香剤が置いてある。
Green Meadow グリーン・メドウと書いてある。
これが本当に草原の香りなのかは分からない。
"Lサイズ"のコーヒーは既に飲み干していた。
15分経ってようやくアラビアータが来た。
ここではそれぐらい待たせるのが普通なのか、
「お持たせしました」も素っ気ない店員に
こっちこそアラビアータだよと言ってやろうか。
※
コーヒーもペンネも味と量はまあまあ。
WC の芳香剤は個人的にラベンダーが好きだ。
スタッフにはサービス精神と笑顔が足りない。
そこだけは要指導だな。
必要事項のチェックをすましたデータを
本部に送信して任務完了。
モバイルを懐に収めて店を後にした。
そういえば、飲食代は経費で落ちるんだよな。
あ、レシートもらうの忘れた。
