Photo by
potsuri01
急性カーテンコール中毒【毎週ショートショートnote】
感動ゆえの熱がもった万雷の拍手が、舞台上に降り注いでいた。
「……?」
ただ、一人舞台に立つ私自身は、今の状況が呑み込めていない。なぜ私は、拍手されているのだろうか。
「お疲れさま。……どうやら、放心状態のようね」
袖から花束を持って現れたのは、長年連れ添った妻だ。
「これは、一体……?」
「あら、『急性カーテンコール中毒』のようね。無理もないわ、あれだけ役に入り込んでいたんですから。……貴方は今、『人生』という舞台の主役を演じきったところなのよ」
妻が微笑む。
……そうだ、私は八十年生き、癌を患って――
「しかし……私は、特に秀でたものもなく、成功したわけでもない。大した山場のない、見所のない人生を生きただけなのに、観客のこの熱狂は――」
「何を言うのよ。貴方はずっと役に没頭し続けながら、最後まで主役を全うしたのよ。称賛されて当然でしょう」
……そういうもの、なのか。
私は花束を受け取り、まだ鳴り止まない拍手に向かって、一礼する。
