連続達人事件【毎週ショートショートnote】
「犯人は剣の達人ですね」
「達人?」
「どういうこと……?」
「犯行は一瞬、疾く、そして綺麗な太刀筋で行われた――だから被害者であるこの館の主人は、斬られたことにも気づかずに部屋に戻り、内側から鍵をかけたのです」
「それが密室の真実? 信じられない。この吹雪に閉ざされた山荘に居合わせた中に、そんな達人はいないよね」
「ならば答えは明白。犯人は、スキーの達人でもあったのです」
「ええ……」
「いや、仮にたどり着けたとしても、それこそ鍵が締まってて中に入れないだろ!」
「それはもう、鍵の解錠の達人であれば」
「待て待て、それだったらもう何でもアリだぞ?」
「剣の達人である必要ないよね」
「無理があるよ、探偵さん」
「僕は探偵じゃありませんよ? ただの妄想の達人です」
「……いやあ、私はただ、部屋にあった紙で指を少し切っただけなのに。さも大事件のように皆で話を膨らませて、吹雪の間の退屈な時間を盛り上げてくれるなんて。全員、気遣いの達人だよ」
