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yamamoto15
該当作梨【毎週ショートショートnote】
「今期の甘ノ川賞は、該当作なしです」
発表した瞬間、どよめきが漏れた。
苦渋の決断だった、と審査委員長は選考を振り返る。突出した作品がなかったのも一因だし、この作者ならもっといいものが書けるはず、という期待も込めての「なし」だ。
ようやく世間の注目も落ち着いてきた頃、連日の報道対応で疲労し自宅で休んでいた審査委員長は、庭に梨がひとつ転がっているのを見つけた。
なんだろう。うちに梨の木はないし、外から投げ込まれたのか?
該当作なしにしたのを揶揄する悪戯か?
と、審査委員長の脳裏に、今回の甘ノ川賞候補作のひとつ「甘夏」が浮かんだ。
なかなか作家として芽が出ず精神を病んだ青年が、梶井基次郎「檸檬」に影響を受け、甘夏型の本物の爆弾を作って社会に復讐を仕掛ける――という過激な展開で、推す声もあったが自分は評価しなかった。
まさか、この梨は――
「……という、実に先が気になる展開のエンタメ小説『該当作梨』が、今期の夏木賞に決定しました!」
