【AI×アート】「REDLINE — INKAR meets KOJI SHIOUCHI」をレポート。A³が挑んだ、展示映像による新たな表現
こんにちは、アマナ広報のアイナです!
7月31日、東京・赤坂「Foundation」で、日本発のラグジュアリーブランド〈INKAR〉とアーティスト・塩内浩二氏による展覧会「REDLINE — INKAR meets KOJI SHIOUCHI」が開幕しました。
本展で、アマナのAI専門組織「A³|amana AI Architects」は、展示映像の企画・プロデュースを担当しています。
今回、私たちが訪れたのは、初日のオープニングレセプション。
アートやファッション、クリエイティブ業界の関係者が集まり、作品を前に自然と会話が生まれる会場には、展示そのものだけでなく、「これから始まる新しい表現」を期待するような熱気が漂っていました。

会場に一歩足を踏み入れると目に飛び込んでくるのは、「移動」「未来」「限界の更新」をテーマに構成された作品群。
ネオン、立体作品、抽象絵画、インスタレーション、そして映像──。
それぞれ異なる表現でありながら、一つの世界観として緻密に設計されており、来場者は展示を"見る"だけではなく、その空間を"体験する"ように感じたのではないでしょうか。
「REDLINE」が描く、“移動”のその先
「REDLINE」は、日本発のラグジュアリーブランド〈INKAR〉とアーティスト・塩内浩二氏によるコラボレーションプロジェクトです。
展示全体を貫くテーマは、「移動」「未来」「限界の更新」。
人類は新たな移動手段を手に入れるたびに行動範囲を広げ、価値観を更新し、未来を切り拓いてきました。
その歴史や思想を、さまざまなアート作品によって表現しています。

会場には、未来への軌跡を光で描くネオン作品をはじめ、速度によって生まれるラインを抽象化した平面作品、新たな可能性へのアクセスを象徴する純銀製のキーオブジェ、自動車のドアをサイン兼オブジェとして再構築したインスタレーション、自動車のラッピング技術を取り入れたDJシステムなど、多彩な作品が並びます。



モータースポーツや工業デザイン、自動車文化といったモチーフを取り入れながらも、その先にある「人はこれから何を運び、どこへ向かうのか」という問いへと視点が広がっていく——そんな展示構成が印象的でした。
そして、その世界観を時間軸の中でつなぐ存在として上映されているのが、A³が企画・プロデュースした映像作品です。
A³が挑んだのは、「映像をつくる」ことではなく、「展示体験をつくる」こと
今回、A³が担当したのは、展示映像の企画・プロデュースです。
きっかけは、展示を手がける株式会社カトレヤトウキョウから寄せられた、
「展示空間の世界観を、映像によってさらに拡張したい」
という相談でした。
映像を一作品として制作するのではなく、展示空間全体の体験をどう豊かにするか。その視点からプロジェクトがスタートしました。
A³は4名のAIクリエイターをアサインし、同じテーマ・モチーフのもとで、それぞれが独自の解釈による映像を制作。AIを活用しながらも、「クリエイターそれぞれの個性は映像に表れるのか」ということも、本プロジェクトの重要なテーマの一つでした。
完成した映像素材は、カトレヤトウキョウの演出家によって一つの作品へと再構成され、本編映像として上映されています。
さらに会場では、本編に加えて各クリエイターによる個別バージョンも上映され、それぞれの表現の違いも楽しめる構成となっています。
REDLINE — INKAR meets KOJI SHIOUCHI | OFFICIAL TEASER 01
REDLINE — INKAR meets KOJI SHIOUCHI | OFFICIAL TEASER 02
REDLINE — INKAR meets KOJI SHIOUCHI | OFFICIAL TEASER 03
映像展示の前では、多くの来場者が足を止め、作品をじっくりと見つめる姿が印象的でした。
スクリーンの中だけで完結する映像ではなく、立体作品やネオン、空間演出と呼応することで、一つの展示体験として成立している——そんなA³のプロデュースだからこそ実現した映像表現を感じることができました。
一方で、この映像は、単にAIで制作した作品ではありません。
展示全体のコンセプトをどう映像へ落とし込み、来場者にどのような体験を届けるのか。その思想づくりの段階から、アーティスト・塩内浩二氏とA³は何度も議論を重ねながら制作を進めてきたといいます。
なぜ「REDLINE」に映像が必要だったのか
レセプションの合間には、本プロジェクトでプロデューサーを務めたA³の石丸将太が、アーティスト・塩内浩二氏に今回の展示について話を伺いました。
展示に映像を取り入れた理由や、A³と協業した背景、そしてAIという技術をどのように作品へ取り入れたのか——。制作の裏側について語っていただきました。
その中で印象的だったのは、「なぜ今回の展示に映像を取り入れたのか」という問いに対する塩内氏の言葉です。
「人類は新しい移動手段を獲得するたびに、世界を広げ、限界線を書き換えてきました。その変化を、静止した作品だけではなく、時間や変化を伴う映像でも体感してほしかったんです。」
今回の展示では、ネオンや立体作品、抽象絵画など、それぞれの作品が「移動」というテーマを異なる角度から表現しています。そのなかで映像は、展示全体を時間軸でつなぐ役割を担っています。
車という具体的なモチーフから始まる映像は、やがて車体の輪郭を失い、最後には赤い一本の光となって空間を駆け抜けます。
物理的な移動から、情報、知性、そして魂へ——。私たちが「運ぶもの」そのものが変わりつつある現代を象徴する表現として設計されています。
塩内氏は、この赤い線について次のようにも語っていました。
「INKARの『KAR』には『魂』という意味があります。最後に残る赤い線は、車ではなく、意識や魂そのものの運動でもあるんです。」
展示を見終えたあとにこの言葉を思い返すと、映像の見え方が少し変わるかもしれません。

AIなのかCGなのか。それは、本質ではない。
石丸からこんな問いが投げかけられました。
「AIなのかCGなのか、という話になることも多いですよね。」
クリエイティブの現場では、生成AIという言葉が広がる一方で、「AIで作った作品」という見方をされることも少なくありません。
それに対し、塩内氏はこう答えました。
「入り口では『AIなのかな』『CGなのかな』と思われるかもしれません。でも、最終的にはそんなことがどうでもよくなるくらい、感動できる作品になっていることが大切なんです。」
AIは目的ではなく、あくまでも表現のための手段。作品を見た人が最初に技術へ目を向けるのではなく、作品そのものに心を動かされること。
その考え方は、今回の展示全体にも一貫して流れていました。
AIと人。それぞれにしかできないこと
今回のプロジェクトでは、AIを積極的に活用しながらも、人が担う役割についても多く語られていました。
映像の世界観を考えること。
展示空間を設計すること。
照明や音響を調整し、空間全体の体験をつくること。
そして、多様なクリエイターが制作した素材を一つの作品へと編集すること。
そこには、人の感性や判断が欠かせません。
塩内氏は、「AIと人間は対立するものではなく、それぞれの強みを活かすことで、新しい表現が生まれる」と話します。
今回のプロジェクトも、AIが可能性を広げ、人がその可能性を編集し、空間として成立させる——そんなハイブリッドなものづくりだったことが伝わってきました。
AIクリエイターは、同じテーマをどう表現したのか
今回、4名のAIクリエイターが同じテーマ・モチーフをもとに映像を制作しました。
完成した作品は一つの映像へと再構成され、本編として上映されていますが、それぞれのクリエイターによる個別バージョンも会場で公開されています。同じテーマから生まれた映像であっても、その表現は一人ひとり異なります。
今回は、そのうちの一人として参加したA³のクリエイター、チ・ベイリンに話を伺いました。
Q. 今回のテーマを受け取ったとき、どのような発想から映像制作を始めましたか。
ベイリン:制作を始めるにあたって、まずディレクターから、簡単なストーリーラインとスケッチをいただきました。暗闇の中でRedlineが起動し、道を進む途中で敵となるBluelineに出会い、最後には相手を追い越して世界の果てへ向かう、という大きな流れです。
このストーリーを土台にしながら、自分なりの世界観を加えて、「色を失った、白と黒の世界の果て」として捉えています。何も存在しない真っ暗な空間から生まれ、都市のさまざまな場所を通過しながら、世界に新しいエネルギーを与えていきます。
その後、Redlineは空へと続く道を通り、「天国」のような場所へ到達します。境界を越えた、別の次元やパラレルワールドとして表現しました。そこでRedlineは、自分とは異なる存在であるBluelineと出会います。Bluelineは単なる敵ではなく、Redline自身を浮かび上がらせる「他者」でもあります。他者と出会うことで、初めて自分が何者なのかが明確になる、という考え方を少し取り入れています。
最後の競走でBluelineは敗れ、ピクセルとなって消えていきます。Redlineはその先にある、まだ誰も知らない世界へと進んでいきます。
物語を完全に説明して終わらせるのではなく、その先に何があるのかをあえて見せないことで、観客自身の想像の中で物語が続いていくような、開かれた終わり方を意識しました。

Q.AIを活用しながらも、ご自身らしい表現を生み出すために意識したことを教えてください。
ベイリン:今回は、画面全体をモノクロームで統一し、赤と青だけをアクセントカラーとして使用しました。モノクロームの世界は、時間が止まっているような静けさや、生命が失われた状態を象徴しています。
AIを使用すると、短時間で多くのビジュアルや予想していなかったイメージを生み出すことができます。ただし、AIが生成したものをそのまま作品にするのではなく、どのイメージを選び、何を残し、何を削るのかという判断を大切にしました。
偶然生まれた形や質感を受け入れながらも、色、構図、動き、光、世界観のルールについては、自分の中にある一貫した基準を持つようにしました。
AIによる偶然性と、人間による意図的な編集をすることで、自分らしい表現が生まれるのではないかと考えながら制作しました。
Q.4名の映像が一つの作品へとコラージュされることを前提とした制作で、印象に残っていることや発見はありましたか。
ベイリン:一番印象に残っているのは、4人の映像が一つにつながったときに、想像していた以上に自然にまとまっていたことです。制作を始めた段階では、クリエイター同士でほとんど交流がなく、それぞれがテーマに対する自分なりの解釈をもとに、個別に制作を進めていました。
そのため、制作中は「この方向で合っているのかな」と不安になることもありましたし、「ほかのアーティストはどんな作品を作っているんだろう」と、とても気になっていました。そしてイベント当日、初めて4人の映像がつながった完成版を見たのですが、それぞれ表現や世界観が違うにもかかわらず、意外なほど自然に融合していて、とても驚きました。
一つひとつの映像には、それぞれ違う色、質感、テンポ、演出がありましたが、組み合わさることで作品全体に広がりが生まれていたと思います。
事前にお互いの作品を見たり、表現を合わせたりしていなかったからこそ、それぞれの個性がしっかり残っていたことも面白かったです。
自分一人で制作しているときには想像できなかった見え方やつながりが生まれたことが、今回の大きな発見でした。

展示を"体験する"ことで見えてくるもの
今回レセプションに参加し、会場には多くの来場者が集まり、作品を前に自然と会話が生まれたり、映像の前で足を止めて見入ったりする姿がとても印象的でした。
その空間の中で、A³のメンバーが企画・プロデュースに携わった映像作品が、展示の一部として来場者に体験されている様子を目の当たりにし、アマナがクリエイティブを通じて新しい表現に挑戦していることを改めて実感しました。
私自身、普段はあまり触れる機会のないアートやインスタレーションの展示でしたが、一つひとつの作品に込められた思想や細部へのこだわりを感じながら空間全体を巡ることで、「展示を鑑賞する」というよりも、「展示を体験する」という感覚を味わうことができました。
立体作品、ネオン、映像、それぞれが独立した作品ではなく、一つの世界観としてつながっていたからこそ、「REDLINE」が投げかける「移動」や「未来」というテーマが、より深く心に残ったように思います。
AIはあくまでも表現を広げるための手段。その技術をどう活かし、どんな体験として届けるのか。今回の展示は、その可能性を感じられる取り組みでもありました。
展示は2026年8月11日まで開催されています。
会場を訪れた際は、ぜひ映像を含めた展示空間全体を体験しながら、「REDLINE」が描く世界観を感じてみてください。
開催概要
展覧会名:REDLINE — INKAR meets KOJI SHIOUCHI
会場 :Foundation 東京都港区赤坂9-5-12 パークサイドシックス B1-C
会期 :2026年7月31日(金)~8月11日(火)※8月6日(木)休館
開場時間:12:00~19:00(最終入場18:30)
入場料 :無料


