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スポンジに挟まれたイチゴは生クリーム

 果物が不得手である。
 けれども、敬遠するほどではない。食べろと言われれば食べられる。

 喉元を果汁が通り過ぎるとき「アッ! 冷たい!」という感覚が苦手なのだ。
 

 そんな私だが、突然甘いものが食べたくなってケーキ屋さんに入った。


 フルーツタルト屋さんである。
 フルーツが不得手なのに、である。


 タルト生地の上にこれでもか、とのせられた果物たちは宝石のように輝いていて美しい。

 メニュー表を眺めて「うーん、果物だなぁ」とうなった。


 そこで、ショートケーキを頼んだ。
 フルーツタルト屋さんなのに、である。


 大抵のショートケーキはイチゴが1つ上にのっているだけだ。
 
 けれども、フルーツタルト屋さんなので、イチゴがたくさんクリームの上に整列している。
 イチゴは、ゼリーのようなものをかぶっていた。かわいらしさと気品さがより引き立てられているのであった。


「イチゴたべたーい」
 という息子に全てのイチゴを差し出した。

 あとに残されたのは、純白のクリームである。
 甘すぎず、口あたりのよい生クリーム。
 ひとくち食べれば、ほどよい甘さが広がってクラクラするほど美味しい。

 
 けれども、ちょっと待ってください!
 

 スポンジとスポンジの間に挟まれたイチゴは、どうするんですか、問題である。

 
 まさか、ほじくって息子にあげるわけにはいきません。
 食べます。

 しかし、これは仕方がなくイチゴを食べているのではありません。


 スポンジとスポンジに挟まれたイチゴは、もはや生クリームなのです。

 
 フルーツとしての冷たさをやや失ったイチゴの属性は、生クリームに変換されるのです。
 ビタミン豊富な生クリームなのです。

 
 その瞬間、私は果物が不得手という意識を手放し、果物と和解するのです。


 要は冷たくなければ、いいのではないか。
 そう思うでしょう?
 りんご煮は許していない。


このエッセイは、くだらないことに全振りし月水金に更新しています。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。

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