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An-023:方臘魚│ホウロウ三味魚

北宋の末期、腐敗した朝廷に反旗を翻し、民衆の怒りを燃え上がらせた一人の男がいました。その名は方臘(ほうろう / Fāng Là)。

この名前を聞いてぐっと来たあなた!間違いなく中国通です。

そう、「水滸伝」で敵として描かれる、あの方臘です。

安徽料理(徽菜)の名菜「方臘魚(ファンラーユー)」は、この伝説的な反乱指導者の勇姿と悲劇にちなんで作られた、非常に技巧的でドラマチックな一品です。今回は、彼の壮絶な生涯と共に、一つの魚を三つの味で仕上げるという驚きのレシピをご紹介します。ぜひ新鮮な魚を手に入れて、再現に挑戦してみて下さい。

方臘(? - 1121年)は、現在の安徽省(当時は徽州・睦州一帯)で漆園を経営する裕福な農民でした。しかし、当時の北宋・徽宗皇帝の時代、朝廷は贅沢の限りを尽くし、民衆には「花石綱(かしこう)」と呼ばれる過酷な税が課されていました。

1120年、重税と役人の横暴に耐えかねた民衆の声を背負い、方臘は睦州で蜂起しました。彼は自らを「聖公」と称し、元号を「永楽」と定めて、わずか数ヶ月で現在の安徽、浙江、江蘇にまたがる六州五十二県を支配下に置くという、凄まじい勢いを見せました。

彼の軍は「貧しきを救い、富を均(なら)す」という理想を掲げたため、苦しんでいた農民たちが続々と合流しました。一時は北宋を滅ぼしかねない規模まで拡大しましたが、朝廷側は名将・童貫(あるいは韓世忠)率いる精鋭部隊を投入。方臘軍は次第に追い詰められていきます。

決起からわずか一年。

1121年、方臘は自らの拠点であった洞窟(現在の浙江省付近)で捕らえられ、都で処刑されました。しかし、彼の反抗精神は徽州の人々の心に深く刻まれました。物語『水滸伝』では、梁山泊の豪傑たちを苦しめる最大の宿敵として描かれていますが、地元の安徽省では、今なお権力に抗った英雄として敬意を払われています。

この「方臘魚」は、捕らえられた彼を救おうとした民衆の情熱や、彼の複雑で多面的な英雄像を「一つの魚を三つの異なる味に仕上げる」という手法で表現した料理なのです。

味付けには細かなルールはないので、一匹の魚を三種の味で仕上げれば方臘魚と呼べるでしょう。日本で似たような活躍をした人物だと天草四郎や大塩平八郎などが近いでしょうか。料理名を「四朗魚」や「大塩魚」としても良いかもしれません。

中国、安徽省ではケツギョを使って作りますが、日本だとある程度の大きさのある海の魚を使うのが良いでしょう。スズキやタイだとサイズ的にもちょうど良いかもしれません。

別の味付けとは言いましたが、せっかっく魚大国の日本ですから、全く別の調理技法を用いて、三つの味に挑んてみましょう。もちろん一皿で提供します。方臘の反乱が失敗に終わったように、この料理もまた、ちゃんとした一品として完成させるのは至難の業です。しかし、成功した時の一皿は、まさに歴史の一頁を味わうような感動をもたらすでしょう。

それではレシピ行ってみましょう。


【初級編】切り身フィレで作る三味魚

丸ごとの魚はハードルが高いですが、切り身を使えば家庭でも「三つの味」を体験できます。

  • 材料(2人分)

    • 白身魚の切り身(真鯛、タラなど):3枚

    • [味1:赤] 豆板醤、生姜(辛味)

    • [味2:白] 塩、ネギ、酒(鮮味)

    • [味3:黒] 黒酢、砂糖(酸甜味)

  • 調味料(全分量)

    • 醤油:大さじ1

    • 片栗粉:適量

    • 揚げ油:適量

  • 調理方法

    1. 魚の切り身を一口大に切り、片栗粉をまぶして油で揚げます。

    2. フライパンを3つ用意する(または1つで順次作る)、それぞれ異なる味付けのソースを作ります。

    3. 揚げた魚を各ソースに絡め、一皿にエリアを分けて盛り付けます。

ポイント: 視覚的に「三つの勢力」が並んでいるように見せるのがコツです。


【中級編】スズキの三色煮込み

一匹丸ごとの魚を使い、部位ごとに調理法を変えます。

  • 材料(2〜3人分)

    • スズキ(または黒鯛):1尾

    • 海老の叩き身:50g

    • 豚背脂(細かく刻んだもの):10g

  • 調味料(全分量)

    • [頭部:蒸し用] 塩、酒、生姜スライス

    • [胴体:煮込み用] 醤油:大さじ2、氷砂糖:10g、八角:1個

    • [尾部:揚げ用] ケチャップ、酢、砂糖:各小さじ2

  • 調理方法

    1. 魚を頭・胴・尾の3つに切り分けます。

    2. 胴体には、海老の身と豚脂を練り合わせたものを詰め、醤油ベースでじっくり煮込みます。

    3. 頭部は香味野菜と蒸し上げ、尾部はカリッと揚げて甘酢あんを絡めます。

    4. 皿の上で一匹の形に戻して盛り付けます。


【上級編】聖公・方臘魚

桂魚(ケツギョ)を使用し、安徽料理の「重油・重色・重火功」を極めるプロのレシピ。

  • 材料(4人分)

    • 桂魚(ケツギョ):1尾(約800g)

    • 特選蝦肉(海老のすり身):100g

    • 熟成豚脂:30g

  • 調味料(全分量)

    • 老抽(中国たまり醤油):大さじ1

    • 紹興酒:大さじ2

    • 高精細鶏ガラスープ(瓦罐湯):200ml

    • 泡辣椒(唐辛子の塩水漬け)、青山椒、白胡椒

  • 調理方法

    1. 魚を繋げたまま、あるいは部位ごとに絶妙な切り込みを入れ、海老の身と豚脂のペーストを魚の腹や切れ目に丁寧に詰め込みます。

    2. 火功:

      • 前部: 瓦罐湯で優しく蒸し、素材の「鮮味」を活かします。

      • 中央: 醤油と氷砂糖、たっぷりのラードで濃厚に「紅焼(煮込み)」にします。

      • 後部: 香辛料と共に強火で「爆(炒め)」るか、パリッと揚げてスパイシーに仕上げます。

    3. 一つの魚でありながら、箸を運ぶ場所によって全く異なる宇宙が広がるよう、ソースが混ざらないよう精密に仕上げます。

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甘口男Higene コーヒーが好きだ。とくにミルクコーヒー。外出の予定がない時は、これにハチミツ酒をひとさじ加えて飲む。これがまたすこぶるいい。それぞれの銘柄を変えると、がらりと味が変わる。どうだい?一杯おごってはくれないか?