Gz-020:青岩米豆腐│金銀花モチ
こんな夏ですから。
どの地域にも、涼をとるための料理というものがあります。
前回紹介した青岩古鎮の石畳も、日差しを反射して陽炎を生みます。
さぁ、その軒下で涼を誘うのは、この地方の名物の一つ。
ガラスの器に盛られた美しい翡翠色、ぷるぷるとしたゼリー状の麺です。
米と緑豆、そしてハーブが醸し出す自然の色彩こそが、その翡翠色の正体です。
今回紹介するのは貴州青岩古鎮の名物、冷たく冷やされた「青岩米豆腐(チンイエンミードウフ)」。
好みで真っ赤な糟辣椒や醤油、黒酢の特製タレを注ぎ、口に運べば、つるりとなめらかな喉ごしの後に、清涼感あふれるハーブの吐息(とキュンとする辛味)が喉を通り抜けます。
冷涼で優しい甘みは、体の中心から南極の吐息となって身体を優しく満たしていくでしょう。
青岩米豆腐は、貴州省貴陽市の青岩古鎮で古くから食べられている、伝統的な米加工食品です。
うるち米と緑豆を一緒に水に浸してすり潰し、石灰水を加えて加熱しながら糊化させ、漏斗状の型から冷水に落として水滴状(あるいは麺状)に固めて作られます。これを貴州省では「米豆腐」というんですね。
通常の米豆腐が乳白色であるのに対し、青岩の米豆腐は緑豆のデンプンと、清熱作用のある野草であるスイカズラ(金銀花:スイカズラ科スイカズラ属 Lonicera japonica)などの絞り汁を加えるため、目にも鮮やかな翡翠色(淡い緑色)をしています。
日本でも手に入るかと思い調べてみましたが、売られていないようです。
ひんやりと冷やし、酸味のきいた発酵唐辛子タレをかけて食べる、夏の定番、せっかくなので作ってみましょう。
「米豆腐」という名前ですが、実際には大豆は一切使用されていません。
米のデンプンを糊化させてゼリー状に固めたこの食品が「豆腐」と呼ばれるのは、大豆から作られる豆腐にその形状や「植物性のタンパク質・栄養素を固めて食べる」という発想が酷似しているためです。
前作「青岩掌脆」で語られた、軍事要塞としての青岩古鎮の成立。
その歴史の始まりは、明代の初代皇帝・朱元璋が実施した「調北征南(北方の兵を南へ送り屯田させる政策)」にありました。
江南地方(江蘇・浙江)からこの厳しい辺境の要塞へと移住してきた数万人の兵士とその家族たちは、故郷の豊かな米食文化を胸に抱いていました。
しかし、高温多湿で山がちな貴州の夏は厳しく、当時の保管技術では調理した米がすぐに傷んでしまいます。
そこで屯堡(とんぽう)の女性たちは、江南の米加工技術をベースに、貴州の石灰岩地質の水(硬水・アルカリ性水)を利用し、うるち米を石灰水とともに煮詰めて固める「米豆腐」を発明しました。
さらに彼らは、現地の山野に自生するスイカズラ(金銀花)の葉をすり潰して混ぜ込み、美しい翡翠色の見た目と、熱中症を防ぐ薬効(清熱解毒)をプラスした「青岩米豆腐」へと進化させました。
米豆腐は、中国南西部(貴州、四川、湖南、重慶)に広く見られる夏のストリートフードですが、地域によって異なる顔を持っています。ちょっとずつ名前も異なりますので、まとめておきましょう。
湖南米豆腐:うるち米のみを使用し、乳白色で太い円柱状にカットしたものを、ラー油と大量の塩辛い漬物(泡菜)で食べるスタイル。
四川川北涼粉:米ではなく緑豆のデンプン(粉)のみを使用し、透明な糸状にスライスし、強烈な麻辣タレをかけるスタイル。
貴州青岩米豆腐:うるち米に緑豆とハーブ(金銀花)をブレンドし、独特の翡翠色(緑色)にし、糟辣椒の爽やかな酸味タレで食べるスタイル。
これらの比較は、各地で手に入るデンプン資源と、それぞれの地域が持つ「酸」や「麻辣」といった嗜好性の違いが、涼を呼ぶ冷菜をいかに多様に変化させたかを示しています。
貴陽の夏は、中国の他の大都市に比べて涼しいとはいえ、日差しは強く降り注ぎます。
青岩古鎮の石畳の路地を歩き回った観光客たちは、涼しい風が吹き抜ける古民家の軒先で、この冷たい翡翠色の米豆腐をすするのを楽しみにするのです。
さて、実はこの米豆腐、「完全なグルテンフリー食材」として新たな価値が見出されています。
小麦アレルギーを持つ人々にとっても、パスタやうどんの代替となる低カロリーで消化に良い麺類として活用が可能であり、さらに金銀花などの伝統的なハーブがブレンドされていることで、デトックス(解毒)効果のあるある種の「スーパーフード」として注目されているのです。
それではレシピ行ってみましょう。
【初級編】豆腐で作る冷奴仕立て米豆腐風奴

難易度:☆
調理時間:10分以内
材料
絹ごし豆腐:1丁
ザーサイ(みじん切り):大さじ1
食べるラー油:大さじ1
酢(または黒酢):大さじ1/2
万能ネギ(小口切り):2本分
パクチー(粗みじん切り):適量
ピーナッツ(粗く砕いたもの):適量
調理方法
絹ごし豆腐をよく冷やし、1cm厚さの食べやすい大きさにスライスして器に盛ります。
豆腐の上にみじん切りにしたザーサイを散らします。
食べるラー油、酢を混ぜ合わせた簡易ダレを上から回しかけます。
仕上げに万能ネギ、パクチー、砕いたピーナッツをトッピングして完成です。
注意点
米豆腐が手に入らない場合に、のど越しの良い絹ごし豆腐を使って現地の味付け(酸辣・ザクザク食感)を再現するアレンジレシピです。
砕いたピーナッツが、現地のトッピングである「油炸花生」の香ばしさと食感を再現する良いアクセントになります。
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【中級編】翡翠仕立て米豆腐

難易度:☆☆
調理時間:40分以内(※冷やし固める時間を除く)
材料
ライスフラワー(米粉・うるち米原料のもの):100g
緑豆デンプン(または片栗粉):30g
水:600ml
スイカズラ茶(または市販の緑茶):1パック(緑色の着色用)
食用重曹(アルカリ助剤):小さじ1/4
貴州風酸辣ダレ
o 糟辣椒:大さじ1
o 黒酢:大さじ1.5
o 醤油:大さじ1
o ニンニク(みじん切り):1/2片分
o ネギ(小口切り):適量
調理方法
鍋に水600mlを沸かし、スイカズラ茶を濃いめに入れて冷まします(緑色の抽出液)。
別の鍋に米粉、緑豆デンプン、重曹を入れ、冷ました抽出液を少しずつ加えながら、ダマにならないようによく混ぜ合わせます。
鍋を中火にかけ、木べらで絶えず底からかき混ぜながら加熱します。
生地が固まり、透明感と強い粘り気(糊化)が出て「ぽってり」とした状態になるまで、弱火にして5分から8分根気よく練り上げます。
水を張ったボウルの上に、粗いザルや穴あきお玉をセットし、熱い生地を上から押し出して水滴状に冷水に落とします。
水中で完全に冷え固まったらザルに上げてしっかり水切りをし、器に盛ります。
糟辣椒、黒酢、醤油、ニンニク、ネギを混ぜたタレをかけて供します。
注意点
生地は焦げやすいため、必ず鍋底をこするように絶えずかき混ぜ続けてください。十分に練り上げることで、冷ましたときにダレずにしっかりとした弾力が生まれます。
少量の重曹(アルカリ性)を加えることで、米のデンプン分子が崩れて糊化が促進され、ぷるぷるとしたのど越しになります。
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【上級編】青岩米豆腐(うるち米粉砕と天然石灰水凝固法)

難易度:☆☆☆
調理時間:2時間以上(※米の浸水・凝固時間を除く)
材料
秈米(インディカ米、なければ固めのうるち米):200g(一晩水に浸けたもの)
緑豆(皮むきのもの):50g(一晩水に浸けたもの)
天然食用石灰(水酸化カルシウム):3g
水:1.2リットル
天然緑色ハーブエキス(金銀花の葉またはほうれん草の葉の絞り汁):50ml
貴州極限蘸水(秘伝のタレ)
o 糟辣椒:大さじ2
o 木姜子油:2滴
o 鎮江香酢:大さじ2
o 生抽(中国醤油):大さじ1
o 砂糖:小さじ1/2
o スープ(スペアリブ出汁):大さじ1
o 油炸黄豆(大豆のカリカリ揚げ):適量
o 折耳根(ドクダミの根・みじん切り):適量
o パクチー(みじん切り):適量
調理方法
食用石灰3gに水150ml(分量内)を加え、よく混ぜて静置し、上澄みの透明な「石灰水」を抽出します。
一晩浸水した米と緑豆の水を切り、ミキサーに米、緑豆、水800ml(分量内)を入れ、完全に滑らかなミルク状の「米漿(米ミルク)」になるまで粉砕し、一度目の細かい布で濾します。
鍋に米漿、残りの水、抽出した石灰水の上澄み液を入れ、よく混ぜ合わせます。
鍋を弱火にかけ、木べらで鍋底から絶えず、力強く8の字を描くようにかき混ぜながら約15分間加熱します。
生地が沸騰し、急激に糊化して重いペースト状になったら、用意しておいた金銀花ハーブのエキス(緑色の汁)を投入し、色ムラがないように手早く練り込みます。
生地が半透明になり、木べらで持ち上げたときに「リボン状」にゆっくりと落ちる硬さになるまで、弱火でさらに5分間練り続けます。
氷水を張った大きなボウルを用意し、穴のあいた米豆腐専用の器具(またはパンチングザル)を上に固定し、熱い生地を流し込み、木べらで押し出して冷水中に翡翠の水滴状(または麺状)に落とします。
水中で10分間冷やし、デンプンを完全に再結晶(老化・安定化)させた後、網杓子で引き上げてザルに入れ、風に当てて表面の水分を完全に切ります(約10分)。
丼に水気を切った翡翠米豆腐を盛り、糟辣椒、木姜子油、香酢、生抽、砂糖、スープを混ぜ合わせた極限のタレをかけ、油炸黄豆、折耳根、パクチーを散らして即座に供します。
注意点
石灰水(水酸化カルシウム)は米のペクチンおよびデンプン分子を強固に凝合させ、崩れにくい「シコシコとした強いコシ」を生み出すために不可欠です。上澄み液のみを使い、白い沈殿物は入れないでください(お腹を壊します)。そして、出来上がった米豆腐は、食べる直前に「完璧に水切り」することが極めて重要です。水分が残っていると、せっかくの濃厚な発酵タレが薄まり、野草の爽やかな香りと米の旨味のフォーカスがボケてしまいます。
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コーヒーが好きだ。とくにミルクコーヒー。外出の予定がない時は、これにハチミツ酒をひとさじ加えて飲む。これがまたすこぶるいい。それぞれの銘柄を変えると、がらりと味が変わる。どうだい?一杯おごってはくれないか?