辿る
以前このnoteに「思い出真似」という記事を書いた。
厚洋さんが退職した年だったと思う。
彼が紫蘇ジュースを作ってくれた。
「暑いだろう?
テレビでやってたから作ってみた。
クエン酸が入ってるから疲労回復に良いん
だ。学校に持って行ってみんなで飲めよ。」
真愛は、鼻高々に学校に持って行った。
「良い旦那様で、幸せね。」
真愛は、厚洋さんを見せびらかすのが好きだった。
翌年からは、自分で赤紫蘇を植えて、大量に紫蘇ジュースを作ってくれた。
厚洋さんも真愛が彼を見せびらかすのは好きだった。
「良い旦那様って言われちゃった❣️」
「こき使われているのを分かってくれてるんだ」
と毎度の捻くれ返事だったが、嬉しそうだった。
料理というより、手作りを楽しむ事が多くなった。退職して時間があったのだろう。

ゆめにゃんこちゃーちゃ
http://am2463.com/
で、「思い出真似」のときは、「胡瓜のQちゃん」を作りながら、彼の思い出を振り返りながら真似をする事にしたわけだ。
で、今回は「紫蘇ジュース」にチャレンジした。
胡瓜と同じように我が家の畑から引っこ抜いてきたものを使う。
胡瓜は苗を購入したが、赤紫蘇は厚洋さんが植えた物の種が落ちて、翌年も咲き、更にその翌年も…。
この地方では「おのろばえ」というらしい。
去年、3本ほど生えたのを見て、
(少なくなって来たなぁ。
厚ちゃんが折角植えたのに
もう無くなっちゃうのかな…。
今年が最後なら種になるまで
そのままにしておくね。)
と枯れてもそのままにしていたら、何と今年は畑の至る所に赤紫蘇がひょこひょこと伸びてきたのだ。
この赤紫蘇のDNAは、16年ほど前の赤紫蘇を引き継いでいる。
命が繋がっているってこういう事なのだ。
勿体無いので半分使わせてもらうことにした。

カラカラ天気の中で育っているから、引き抜きやすく10本ほど引き抜いて来たが、葉っぱだけにしたら140g取るのがやっとだった。
根元近くに蝉の抜け殻があった。
厚洋さんも引っこ抜いて、土を払って、葉を一枚ずつ毟り取ったのだと思った。
結構、面倒くさい作業で右手の親指と人差し指、中指の爪が赤黒くなった。
彼が美しい色の「紫蘇ジュース」を作ってくれた時、「指がこんなになったんだぞ!」なんて言わなかった。
勿論、気が付かない真愛は大喜びで翌日学校に持って行ったのだ。
人は知らないという事はとても残酷な行為を平気でするということだ。
(こんなに苦労していたのね。)

16年前の夏は、今ほどクソ暑くはないと思うが、夏だ。
暑い中で15分ほど紫蘇の葉を煮出すのだ。
真愛は冷房をかけながら扇風機も回して時々かき混ぜた。
(暑かっただろうな?
厚洋さんは何を考えていたのだろうか。
2年目なのできっとレシピは見なかったと
思う。
真愛の事を考えてくれていたのかな。
怒った顔の真愛ではない。
喜ぶ真愛の笑顔を思ってくれたとしたら
あんな程度の喜び方じゃ悪かったなぁ。
抱きつくぐらいしなきゃ、申し訳ない。
きっと夜を頑張ったかな?)

グツグツ煮出している間にも、紫蘇の良い香りがしてくる。
紫蘇の香りに包まれて、愛しい人のやった事を辿ることの素敵さに気がついた。
同じ事を同じ時期に同じ場所でやる事で、その人の思いを感じることができるのだ。
アニメファンが聖地巡礼なんて事をしているのを聞いて「馬鹿馬鹿しい!」と思ったていたが、同じ事である。
むかし、司馬遼太郎さんの「燃えよ剣」を読んで、わざわざ鶴ヶ城や五稜郭に行って土方歳三を思い感じたいと思ったことがあった。
同じことである。
「辿る」
筋道を追ったり、手がかりを頼ったりして探し求めていく。
次から次へと尋ね求める。
この「紫蘇ジュース作り」愛しい人の思いを辿るには最高に素敵な時間だった。

お砂糖250gを完全に溶かして、クエン酸13gを投入。
お鍋の淵から黒褐色の液体が鮮やかな赤に変化していく。
(綺麗!
厚洋さんも最初はこの色の変化に
感動したのだろうなぁ。)
暗い色から明るい鮮やかな色に変はするのは、理科実験みたいで楽しいものだ。
理科を教えている時【酸性アルカリ性中性】にリトマス試験紙ではなく、紫キャベツを煮出して使ったことがある。
指導書にまだ書かれていない頃にだ。
やっぱり厚洋さんに教えてもらった。
元々、科学は好きだったが、厚洋さんの雑学蘊蓄クイズ科学実験は、子どもたちに大ウケだった事も思い出した。
そう言えば、彼は退職してからも真愛の教科指導に役に立つ情報があればいち早く教えてくれた。
(教育実習生の頃からずっと彼に助けられていたのだ。助けられ続けている事を至極当然の事のように「有難う❣️」しか言えなかった。)
お馬鹿な真愛である事を後悔した。
最近は彼を思うと「後悔」することが多い。
「亡くなる」という事は、「戻せない」事。
後悔が当然だ。
しかし、後悔と同時に「深い感謝」が生まれる。また、「愛されていた実感」も思い起こせる。
幸せな時間になる。


ここに座って、紫蘇ジュースの写真を撮ったのだ。
今日、物産館には鬼灯(ほおずき)も並んでいた。綺麗に束ねられた赤紫蘇も売っていた。
真愛は、厚洋さんが育てた紫蘇の子孫を使わせてもらって、彼の思いを辿った。
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ありがとうございます。
愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります