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パンデミック後3つの進化シナリオ:書籍『グローバル内戦』より

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新型コロナが露呈させた資本主義システムの本質的亀裂

2020年3月、あなたの職場で初めて「在宅勤務」の話が出たとき、「まあ、2週間程度の話だろう」と思わなかっただろうか。まさかあれから4年経った今も、世界が根本的に変わってしまうとは想像もしなかったはずだ。

新型コロナウイルスのパンデミックが世界を襲った時、多くの人が「一時的な危機」だと考えていた。しかし実際には、このパンデミックは既に進行していたグローバル資本主義の構造的危機を単に表面化させただけだった。つまり、ウイルスは引き金に過ぎず、爆薬はずっと前から仕掛けられていたのである。

社会学者ウィリアム・I・ロビンソン(William I. Robinson)による最新の分析は、現在の世界が事実上の「グローバル内戦」状態に突入していることを明らかにしている。この表現を大げさだと感じる人もいるかもしれない。だが、数字を見れば現実が浮かび上がってくる。

2018年時点で、世界の富の半分以上を人類の上位1%が独占している。これを身近に置き換えると、あなたの住む町の住民1000人のうち、たった10人が町全体の富の半分を握っている計算になる。残りの990人のうち800人は、町全体の富のわずか5%で生活を強いられている。

この極端な格差は、パンデミック中にさらに拡大した。米国だけで超富裕層は2020年3月から10月の間に9310億ドルも資産を増やした一方で、6000万人が職を失った。日本円にして約100兆円だ—これは日本の国家予算に匹敵する。つまり、コロナで苦しんでいる間に、富裕層は日本の国家予算1年分を儲けたということになる。

資本主義の「死に至る病」—利潤率低下と過剰蓄積の悪循環

「景気が悪くなったり良くなったりするのは当たり前じゃないか」と思う人もいるだろう。確かにそうだが、今回の危機はいつものような景気循環とは性質が異なる。

資本主義には致命的な内部矛盾が組み込まれている。マルクスが150年前に指摘した「利潤率低下の法則」が、現在進行形で現実化しているのだ。

簡単に説明しよう。企業は競争に勝つため、常により効率的な機械や技術を導入する。すると少ない労働者でより多くの商品を生産できるようになる。ところが、利益の源泉は人間の労働にしかない。機械がどんなに高性能でも、それ自体は新たな価値を生み出さない。

この矛盾により、戦後の「黄金時代」には15%だった平均利潤率が、1980年代末には10%、2017年には6%まで低下した。企業はより少ない利益のために、より激しい競争を強いられている。

同時に「過剰蓄積」も深刻化している。世界の大企業2000社が保有する現金は、2010年の6.6兆ドルから2020年には14.2兆ドルまで膨らんだ。これは全世界のGDPの約2割に相当する。企業は史上最高の利益を上げているのに、その金を投資に回せない。なぜなら、投資しても十分な利益が期待できないからだ。

あなたが会社経営者だったとして、工場を建てても労働者を雇っても、投資した分の利益が回収できない確信があったら、どうするだろうか。当然、投資は控え、現金を抱え込むはずだ。全世界の企業が同じ判断をした結果、経済全体が停滞する—これが過剰蓄積の正体である。

デジタル支配の精巧なメカニズム—見えない鎖はいかに作られるか

パンデミック期間中、多くの人がリモートワークやオンライン会議に慣れ親しんだ。「便利になったな」と感じた人も多いだろう。だが、この「デジタル化の加速」の背後には、より精巧な支配メカニズムが隠されている。

テクノロジー大手企業の市場価値は、パンデミック中に爆発的に増大した。アップルとマイクロソフトは2020年初頭に各1.4兆ドルだった企業価値が、年末にはそれぞれ2.08兆ドル、1.63兆ドルまで膨らんだ。1年で50%近い成長だ。これは、世界中の人々が家に閉じこもっている間に、デジタル・インフラへの依存度が飛躍的に高まったことを意味している。

しかし、真の変化は企業価値の増大ではなく、支配の構造変化にある。従来の工場を持つ製造業では、労働者が集まって働くため、彼らの間に連帯が生まれやすかった。「一緒に働く仲間」という感覚が階級意識を育んでいた。

ところが、デジタル労働では状況が一変する。在宅勤務の会社員、ウーバーの運転手、アマゾンの配送員—彼らは形式的には「同じ会社」で働いているが、実際には物理的に分離され、お互いの存在すら知らない。

アマゾンの倉庫労働者向けリストバンドは象徴的だ。このデバイスは作業員の手の動きをリアルタイムで監視し、「作業効率が低下しています」「休憩時間が長すぎます」「鼻をかく動作を検知しました」といった警告を振動で伝える。労働者は24時間監視下に置かれながら、孤立状態で働くことを強制される。

これが現代版の「パノプティコン」(全展望監視システム)だ。フーコーが描いた監視社会が、デジタル技術により完成したのである。しかも巧妙なのは、労働者自身が「便利だ」「効率的だ」と感じながら、この監視システムを受け入れていることだ。

アマゾンのリストバンドを説明する特許(出典:アマゾン): アマゾン米国特許商標庁

権力は物理的暴力から心理的操作へと進化した

「監視社会」という言葉を聞くと、多くの人は旧ソ連の秘密警察や中国の監視カメラを想像するかもしれない。しかし、現代の支配システムは、もっと洗練されている。

権力者が最も恐れるのは、民衆の反乱や暴動ではない。最も恐れるのは、人々が自分の頭で考え始めることだ。だからこそ、現代の支配は「考えさせない」ことに特化している。

パンデミック期間中の情報統制を思い出してほしい。「専門家に従いなさい」「科学を信頼しなさい」「ワクチンの安全性は確認済みです」—これらのメッセージが、あらゆるメディアで繰り返された。疑問を持つことは「反科学的」「陰謀論」とレッテルを貼られた。

ここで重要なのは、情報の真偽ではない。疑問を持つこと自体が悪だとする空気が作られたことだ。「なぜ必要なのか?」「誰が利益を得るのか?」「別の選択肢はないのか?」—これらの当然の疑問が、社会的制裁の対象となった。

この手法は非常に効果的だ。暴力的弾圧は反発を招くが、自発的な思考停止は反発すら生じない。人々は自ら進んで権威に従い、権威への服従を「正しい行為」だと信じ込む。

Facebook、Google、Twitter(現X)などのプラットフォームは、この心理操作の中核を担っている。アルゴリズムにより「適切な情報」だけが表示され、「不適切な情報」は自動的に排除される。ユーザーは自分が検閲されていることにすら気づかない。

巨大製薬企業とワクチン利権の精密な収益構造

パンデミック対応において、製薬業界の利益追求構造も明らかになった。この業界の収益モデルを理解すると、なぜ「予防より治療」「治癒より管理」に重点が置かれるのかが見えてくる。

ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、WHO(世界保健機関)予算の約70%を民間資金が占める状況下で、ワクチン開発・配布政策に決定的影響を及ぼしている。これは、公的医療政策が実質的に私企業の利益に左右されていることを意味する。

ゲイツ財団の戦略は極めて明確だ。2012年にメリンダ・ゲイツ自身が語った内容を要約すると「数百万人の子供たちへのワクチン投与という巨大で保証された市場を製薬企業に提示し、適切な研究資金を提供すれば、企業は必ずワクチンを開発する」となる。

注目すべきは「保証された市場」という表現だ。通常のビジネスでは、商品を開発してから顧客を探すが、ワクチン市場では先に顧客(全世界の人類)が保証されている。リスクゼロで巨大な利益が約束されているのだ。

ギリアド・サイエンシズ社の事例は、この業界の本質を露骨に示している。同社はC型肝炎治療薬で90%以上の治癒率を達成したが、ゴールドマン・サックスは2018年の報告書で「患者を治癒させることは持続可能なビジネスモデルか?」と疑問を呈した。理由は単純だ。治癒してしまう患者は継続的収入源にならないからである。

つまり、製薬企業にとって理想的な薬は「症状を緩和するが完全には治さない薬」である。糖尿病のインスリン、高血圧の降圧剤、うつ病の抗うつ剤—これらは患者を生涯にわたる「顧客」に変える。一方、感染症を完全に予防するワクチンや、がんを根治する治療法は、ビジネスモデル的には「悪い商品」なのだ。

あなたが製薬会社の株主だったとして、研究開発費に年間100億円投資するとしよう。病気を完全に治して患者を失うプロジェクトと、病気を管理して患者を維持するプロジェクトのどちらに投資するだろうか。資本主義の論理では、後者を選ぶのが「合理的」なのである。

主流メディアが報じない情報統制の精巧な仕組み

多くの人が疑問に思うことがある。「なぜこれほど重要な問題が、テレビや新聞で報じられないのか?」

答えは単純だ。主要メディア企業自体が、既存の権力構造の一部だからである。しかし、これは陰謀論ではない。公開されている情報を整理すれば、誰でも確認できる事実だ。

世界の主要メディアは6つの巨大企業によって支配されている。これらの企業は、軍産複合体、金融資本、テック企業と密接な株式保有関係を持っている。例えば、ブラックロックとバンガードは、主要メディア企業の大株主であると同時に、軍事産業や製薬企業の大株主でもある。

つまり、メディア企業にとって、現在の危機を「構造的・根本的問題」として報じることは、自分たちの大株主の利益を損なう行為になる。広告収入も、多くは同じ巨大企業から得ている。

代わりに行われるのは、断片的ニュース個別事象への注目表面的対症療法への議論誘導だ。「ワクチンが効くか効かないか」は議論されても、「なぜ公的医療システムが脆弱なのか」「誰がパンデミック対応から利益を得ているのか」といった構造的問題は回避される。

「ファクトチェック」や「誤情報対策」も、実際には言論統制システムとして機能している。どの情報を「ファクト」とみなし、どの情報を「誤情報」とするかの基準は、権力構造に都合よく設定されている。

興味深いのは、この検閲システムが「民主的」に運営されていることだ。政府が直接検閲するのではなく、民間企業(Facebook、Google、Twitter)が「自主的」に検閲を行う。これにより、「言論の自由への政府の介入」という批判を回避している。

あなたがSNSで「おかしな投稿」をしたとき、アカウントが凍結されるのは政府の指示によるものではない。民間企業の「利用規約違反」として処理される。しかし、その利用規約の基準は、政府機関や「専門家」組織と密接に連携して決定されている。結果として、政府による検閲と同じ効果が得られる。

未来への分岐点:資本主義の3つの進化シナリオ

現在の世界は、大きく3つの方向性のいずれかに向かう可能性がある。それぞれのシナリオは、既に現実の萌芽として存在している。

シナリオ1:デジタル封建制の完成 テック企業と政府が完全に融合し、全人類がデジタル監視下に置かれる「デジタル封建制」が確立される。中央銀行デジタル通貨(CBDC)により、個人の経済活動が完全に管理され、社会信用システムで行動が統制される。

このシナリオでは、あなたの銀行口座残高は政府によってリアルタイムで把握され、「不適切な支出」(政府に批判的な書籍の購入、反体制的な団体への寄付など)は自動的に制限される。移動の自由も、デジタル身分証明書により管理される。「良い市民」は自由に移動できるが、「問題のある市民」は移動を制限される。

シナリオ2:新ファシズムと文明崩壊 経済危機と社会不安の拡大により、各国で権威主義政権が台頭し、国際的軍事衝突が多発する。民族・宗教・階級対立が激化し、文明崩壊レベルの混乱が生じる。

このシナリオでは、核兵器を保有する大国間の直接衝突により、人類文明が後戻りできないダメージを受ける可能性がある。環境問題の加速と合わせて、地球の人口支持能力が激減し、生存をかけた「万人の万人に対する闘争」状態になる。

シナリオ3:分散型民主社会への移行 民衆蜂起が世界的に連帯し、国境を越えた変革運動により、資本主義システム自体が民主的に変革される。技術は人類解放の道具として活用され、地方分散型・参加民主主義的な新社会が構築される。

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このシナリオでは、現在の巨大企業による独占が解体され、技術は公共財として管理される。労働時間は大幅に短縮され、人工知能とロボットが単純労働を代替する。人間は創造的活動や共同体への貢献に時間を使えるようになる。

現時点では、シナリオ1が最も現実味を帯びている。なぜなら、既存の権力構造がこの方向に向かって着実に準備を進めているからだ。しかし、シナリオ3の可能性も完全に失われてはいない。

朝のコーヒーを飲みながら考える未来

明日の朝、あなたがいつものようにコーヒーを飲みながらニュースを見るとき、何が映っているだろうか。1年後、5年後の世界は、今日の選択によって大きく変わる。

もしかすると、スマートフォンの画面には「デジタル身分証明書の提示が必要です」という表示が出ているかもしれない。コンビニで買い物をするにも、電車に乗るにも、すべての行動がデジタルで記録・管理される社会。中央銀行デジタル通貨(CBDC)により、「不適切な支出」は自動的に制限され、社会信用スコアの低い人は基本的サービスから排除される。

あるいは、地域の商店街で物々交換が活発に行われ、近所の農家から直接野菜を分けてもらい、コミュニティ通貨で地域内経済が回る社会になっているかもしれない。大企業のサプライチェーンに依存しない、人間的規模の経済圏が各地に形成されている。

どちらの未来も、既に現実の萌芽として存在している。デジタル監視システムの導入は着実に進む一方で、代替経済システムの実験も世界各地で始まっている。見えない鎖に気がついた人もまだ少数とはいえ、けして少ない数ではない。そしてこの気付きは不可逆であるということだ。私たちは、歴史の分岐点に立っている。しかもそれはどこへ向かうのか予測できない絶妙な分岐点だ。

個人の小さな選択の積み重ねが、社会全体の方向性を決めるというのは、陳腐な決まり文句以上の意味がある。私はそう信じて、毎日ツイートしている。朝のコーヒーをおいしく飲むために。

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