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安心の中で息ができなくなる

家を建てて、5年が経った。

家を建てた頃の私は、これでやっと
夢が全て叶うと思っていた。

帰る場所があって、
同じ場所でご飯を作って、
同じ時間を過ごしていく。

それが、幸せなんだと。

でも今、私はこの家を手放したいと思ってしまっている。

不満は、ない。

それでも、苦しい。

同じ場所に帰って、
同じ景色を見て、
同じことを繰り返す。

安心するはずの毎日で、
少しずつ息が浅くなっていく。

「帰る場所があるって幸せだよね」

何度も聞いた言葉。

たぶん、間違っていない。

でもその言葉に、
自分を合わせ続けるのは、もうしんどかった。


玄関から見える、小さな一部屋。

これからサロンにしようとしている場所。

そこだけは、少し空気が違う。

まだ何もないのに、
ここに立つと、呼吸が深くなる。


同じ場所なのに、
同じじゃない。


私は、ひとつの場所に居続けることに
向いていなかったのかもしれない。

ヤドカリみたいに、
その時の自分に合う場所を選びながら、
少しずつ移り変わっていく。

そんな生き方のほうが、
しっくりくる。

この家をどうするかは、まだ決めていない。

ただ、

「ここにいれば大丈夫」と思い込むことは、やめた。

拠点は持つ。
でも、縛られない。

必要なときに戻って、
また外へ出ていく。

もし、この場所に意味が生まれるなら残るし、
息ができなくなるなら、手放す。

それだけでいいと思っている。

「帰る場所があることが幸せ」

その言葉を、否定したいわけじゃない。

ただ私は、
その中には収まらなかった。



ーあとがきー

たまに、衝動的に

今ある安心や安定を、  
壊したくなる瞬間がある。

どうしてそんな思考になるのかは
自分でもよく分かっていない。

たまにそんな自分が
怖くなる。

一生孤独なんじゃないかと思う。

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