そのレビュー、本当に「評価」でしょうか—心を守る鉄仮面と、口コミを鵜呑みにしない距離感
「この人が書いたんじゃないか」と思ってしまう
お昼どき、ラジオから流れてきた今回の相談。
クリニックで事務として働く「ルル」さんは、仕事にやりがいを感じていました。
ところがある日、Googleの口コミに、自分と別のスタッフについて書かれた心ない言葉を見つけます。
仕事ぶりへの批判だけでなく、体型や性格にまで踏み込んだ内容でした。
それ以来、来院する患者さんを見るたびに、
「この人が書いたんじゃないか」
と思うようになってしまったそうです。
明日から、どんな気持ちで働けばいいのかわからない。
この相談、私には他人事と思えませんでした。
※本記事は、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」相談は踊るコーナー(2026年8月14日放送/Podcast)を拝聴して感じたことを、個人のメモとしてまとめたものです。
私もレビューに苦労したことがある
実は私も民泊を経営していて、事実とは違う内容のレビューを書かれ、苦労した経験があります。
レビューが商売にほとんど影響しないなら、「見なければいい」「気にしなければいい」で済むかもしれません。
でも宿泊業のように、レビューが次の予約に直結する商売では、そう簡単ではありません。
たったひとつの低評価でも、
「これを読んだ人が、そのまま信じたらどうしよう」
と気になる。
だから、ルルさんが傷ついたことも、そこから疑心暗鬼になってしまったことも、わかる気がしました。
ジェーン・スーさんの「厚めの鉄仮面」
そんなルルさんに、ジェーン・スーさんが勧めたのが「鉄仮面」でした。
クリニックには、体調が悪かったり、不安を抱えていたり、心に余裕がなかったりする人もやってきます。
すべての人と分かり合おうとしなくていい。
理不尽な態度を向けられたら、感情をまともに受け止めず、事務的に対応する。嫌なことがあったら頭の中で好きな歌でも歌って、心の中に砦をつくる。
そして、もう口コミを見ない。
私はこの「鉄仮面」という言葉が妙に気に入りました。
接客の仕事というと、笑顔で、親切に、相手の気持ちをくみ取って……と、「心を込めること」がよい仕事だと思われがちです。
でも、丁寧に仕事をすることと、相手の感情を全部引き受けることは同じではない。
仕事だからといって、生身の心まで差し出さなくていい。
鉄仮面は、冷たくなるためのものではなく、「ここから内側は私の領域です」と守るためのものなのかもしれません。
でも、レビューは本当にそんなに絶対的なもの?
ただ、ここでもうひとつ考えました。
ルルさん自身が今できることは、鉄仮面をかぶることや、口コミを見ないことなのかもしれません。
けれど、この問題を「書かれた側が自分を守るしかない」で終わらせていいのかな、と。
たとえばクリニックや病院の口コミを見ていると、全体として高く評価されているところでも、ときどき目を疑うような書き込みが混じっていることがあります。
今回の相談のように、スタッフ個人への激しい攻撃だったり、診療とは関係のない容姿や人格への言及だったり。
そんなレビューを見たとき、私たちは本当に、
「なるほど、このクリニックはひどいんだ」
と、そのまま信じるでしょうか。
むしろ、
「ずいぶん感情的なレビューだな」
「何があったんだろう」
と、一歩引いて読むことも多いのではないでしょうか。
レビューには、評価された側の情報だけではなく、書いた側のものの見方も映り込んでいるんですよね。
私自身、レビューで苦労した経験があるからこそ、読む側になったときには「書いてあること=事実」とは思わなくなりました。
誰でも評価できる時代に必要な「鵜呑みにしない力」
もちろん、レビューには意味があります。
実際に利用した人の感想から、サービスが改善されることもある。これから利用する人にとって、ありがたい情報になることもある。
だから、レビューなんてなくなればいいとは思いません。
ただ、書く側、読む側、書かれる側が、もう少しレビューと距離を取れるようになったらいいなと思うのです。
書く側は、その瞬間の怒りだけで誰かの人格まで傷つける言葉を残さない。
読む側は、ひとつの強烈な書き込みや星の数だけですべてを判断しない。
そして書かれた側も、そこにある言葉のすべてを「世間からの評価」として背負わない。
ネットのレビューが当たり前になって、私たちも少しずつ、そんな読み方を身につけてきているような気がします。
星だけではなく、件数を見る。内容を見る。他のレビューと比べる。そして、ときには「これはちょっと話半分で読んだほうがよさそうだな」と判断する。
誰でも簡単に評価を発信できるようになった次に必要なのは、もしかしたら、評価を鵜呑みにしない力なのかもしれません。
「鉄仮面」の外側で、読む側にできること
ルルさんには、今は厚めの鉄仮面をかぶっていてほしい。口コミも、無理に見なくていいと思います。
傷ついている本人に「レビュー文化を変えましょう」なんて大きな役目まで背負わせる必要はありません。
でも、読む側にいる私たちにはできることがある。
強い言葉ほど目を引くけれど、強い言葉だから真実とは限らない。
ひとつのレビューだけで、そこで働く人や、その場所全体を決めつけない。
今回のような書き込みなら、読んだ人の多くは、それをそのままルルさんの「評価」にはしないんじゃないかな、と私は思います。
レビューは便利だからこそ、少し距離を置いて読む。
書くときも、読むときも、そして書かれたときも。
そんな人が少しずつ増えていけば、レビュー文化も、今よりもう少し洗練されたものになっていくのかもしれません。
お茶の間でラジオを聞きながら、そんなことを思いました。
誰かがつけた星や、たった数行の言葉。
私たちは、それにどこまで「人を評価する力」を渡したいでしょうか。
本記事は、
TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」
相談は踊るコーナーを拝聴し、一リスナーとしての感想と解釈をまとめたものです。
いつも刺激的で考えさせられる相談コーナーを届けてくださっている番組スタッフ・出演者のみなさまに感謝を込めて、公式Podcastへのリンクを貼らせていただきます。
