投資家は夢をすてきれない。3Dプリンタ住宅に賭ける—リブワーク(1431)
「これは来るかもしれない」テーマの選び方
投資テーマというのは、だいたいあとから振り返ると「なんで最初からこれで行けると思ったんや」という話になる。
自然エネルギーへの全振り、行き過ぎたEV推進、メタバース、バイオ燃料——どれも当時は熱狂していた人がいたが、今となっては苦い話だ。「テーマ株は夢を買うもの」とは言うが、夢が現実にならないことのほうが圧倒的に多い。
そういう流れの中で、「これは本当に来るかもしれない」と珍しく思ったのが、3Dプリンタで家を建てるという話だった。
オバマも言っていた
オバマ大統領が2013年の一般教書演説で3Dプリンティング技術に言及している。「ほぼあらゆるものの作り方を革命的に変える可能性がある」と述べ、オハイオ州ヤングズタウンに設立した製造業イノベーションセンターを取り上げた。大統領が国の演説でわざわざ名指しした技術、というのはやはり箔がつく。当時は3Dプリンタブームで、ギークたちが家庭用の小型プリンタを買ってプラスチックの何かを出力して喜んでいた時代だ。
余談だが、こういう流行物にすぐ飛びついて「とりあえずやってみる」タイプの人は、なんとなく予後がいい気がする。経験則的に。新しいものへの好奇心が行動に直結している人は、仕事でも社会でも活躍しやすいのかもしれない。
日本で家を3Dプリンタで建てる理由
日本の住宅の平均寿命は約30年と言われている(国土交通省のデータ)。アメリカが55年、イギリスが77年と言われているのに比べると、圧倒的に短い。新築信仰や木造住宅の構造的な特性、そして定期的に発生する大地震による建て替え需要など、日本では「家が壊れる・壊す」サイクルが速い。
そこに3Dプリンタで素早く・大量に・安くバカバカ家を建てる技術が組み合わさると、なかなか面白い可能性があると思った。建設業界は慢性的な人手不足でもある。3Dプリンタによる自動化は、その文脈でも刺さりそうだ。
そういう理由でリブワーク(1431)を買ってみた。
リブワーク(1431)という会社
熊本・福岡を拠点とする注文住宅メーカーで、旧社名はエスケーホーム。2015年に福岡Q-Boardに上場(主幹事:岡三証券)、現在は東証グロース。「住宅展示場を作らずネット受注」というのが特徴の会社だ。
3Dプリンタ住宅への取り組みは本格的で、2025年7月に土を主原料にした約100平方メートルの住宅「Lib Earth House model B」を発表。国内初とされる土の3Dプリンタ住宅で、震度7に耐える強度があるという。2025年8月から販売予約を開始、受注生産に着手、2040年までに1万棟の着工を目指す——と、なかなか強気のロードマップだ。
買ってみてわかったこと
ただし、実態は簡単ではない。
考えてみれば当然で、もし3Dプリンタで本当にコスト面で圧倒的な優位性があるなら、世界中でバカスカ3Dプリンタ住宅が建っているはずだ。そうなっていないのには理由がある。既存の建設工法は何十年もかけて洗練されており、コストや工期、品質のバランスで簡単には勝てない。規制の問題(建築基準法への適合)もある。
株価の話
上場後の株価推移は「典型的なやつ」だ。上場直後に跳ねて、3Dプリンタ住宅の発表で再度急騰、その後は落ちる。2026年5月時点で株価は640〜650円台で推移。直近の四半期決算は売上高が前年同期比16.5%減、営業損失1.14億円と、数字は厳しい。建築資材の高止まりと改正建築基準法対応のダブルパンチが利いている。
いかに「割高」かという話
現時点の予想PERは約78倍だ(2026年5月時点)
住宅メーカーというのは基本的に地味な業種で、積水ハウスや大和ハウスといった大手は概ねPER10〜15倍程度で取引されている。リブワークは同じ「家を建てる会社」でありながら、その5〜8倍の値付けをされている計算だ。ひとえに「3Dプリンタ住宅が将来化ける」という期待値だけで買われているからだ。
売上規模に対して時価総額は妥当に見えるが、収益性がなく、夢に対してプレミアムが乗っている状態だ。「3Dプリンタが本当に普及すれば回収できる」という構造は、要は投資家が夢をすてきれていないということを数字が証明している。
優待設計が語るもの——
リブワークの株主優待はなかなかにぎやかだ。100株保有でクオカード1,000円分、さらにビットコインの抽選(500株以上・6ヶ月保有で応募可能)、ポイント制の優待倶楽部まで用意されている。
クオカードを配って本業が伸びた会社をあまり知らない。 これは経験則だ。
日経ビジネスの調査によると、2024年だけで東証スタンダード・グロース銘柄を中心にQUOカード優待を新設した企業が急増。背景の一つに、東証が上場維持基準(流通株式時価総額・流通株式比率など)の経過措置を25年3月に終了させたことがある。要するに「上場廃止の瀬戸際にいる会社が、個人投資家の資金を集めるためにクオカードをばらまいている」という構図だ。わかりやすい話だが、救済策にはなっていない。
ビットコイン抽選優待もそれと同じ構造だ。「ビットコインが当たるかも」という射幸心を活用した個人投資家の呼び込みで、本業の企業価値とは何の関係もない。話題性でSNSが盛り上がり、短期的に株価を支える効果はあるかもしれない。しかしつかみの優待で引き寄せた個人投資家は、本業が悪くなると容赦なく逃げる。
実際リブワークの株価は、3Dプリンタ住宅の発表時やビットコイン優待導入時こそ反応したが、その後は業績の悪化と共に元の水準に戻っている。優待で人を集めても、本業が伴わなければ単なる時間の問題だ。
結論
なし。それほど高い株価でもないので売らずに放置しているが、10年後に紙くずになっているか4〜5倍になっているか、どちらかだろう。もちろん前者の確率が高い。
とはいえ、否定もしきれない。日本の住宅需要の構造、人手不足、地震大国というファクトは変わらない。3Dプリンタ住宅が「来る」未来はゼロではない。投資家がこの会社の夢をすてきれないのは、まあわかる。

