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移民を忌避し、移民に依存する──技能実習制度という日本社会の病理

深刻化する労働力不足と、日本社会の構造的矛盾

日本は少子高齢化によって、深刻な労働力不足に直面している。もはや国内の労働力だけでは、社会の基本インフラすら維持できない段階に入っている。そのため、外国人労働者の受け入れは不可避とされてきた。

ところが、日本は先進国の中でも移民へのアレルギーが最も強い国のひとつである。「外国人が増えると治安が悪化する」「文化が壊れる」「国が乗っ取られる」──こうした声が社会の底流に存在し、政治家が少しでも「移民」や「受け入れ制度」に触れれば、猛烈なバッシングが巻き起こる。

欧州が突きつける移民ハレーションの現実

一方で欧州は、日本とは逆の問題に直面している。フランスやドイツ、スウェーデンでは大量移民の受け入れが治安悪化や文化摩擦を引き起こし、教育や福祉への負担が急速に高まった。パリ郊外での暴動、ケルンでの集団性犯罪事件、スウェーデンにおけるギャング抗争の激化は、その象徴的な事例である。

こうした混乱は政治的分断を深め、フランスの国民連合やドイツのAfDといった反移民政党の台頭を招いた。欧州の事例は、移民を単なる労働力の穴埋めとして受け入れ続ければ、社会の統合や制度の持続可能性が揺らぎかねないことを示している。

技能実習制度──建前と現実の乖離

では、日本はどうやって人手不足を埋めてきたのか。これまでその役割を担ってきたのが「技能実習制度」である。建前上は「発展途上国への技術移転を通じた国際貢献」とされてきたが、実態は低賃金労働力を合法的に受け入れる仕組みに他ならない。労働基準法の適用が曖昧な中で、過酷な労働を強いられ、失踪者が続出してきた。

特にベトナム、ミャンマー、インドネシア出身の若者が多くを占め、2020年代初頭にはベトナム人だけで全体の半数近くに達した年もある。彼らは借金を背負って来日し、夢を抱いて働き始めるが、制度の不備と現場の実態に押しつぶされることが少なくない。

新しい「育成就労制度」への転換

こうした問題を受け、政府は2023年11月に技能実習制度の廃止方針を示し、2024年3月には新たな「育成就労制度」を盛り込んだ法案を閣議決定した。

新制度は「国際貢献」という建前を捨て、「人材の確保と育成」を目的に掲げる。一定の条件を満たせば同一分野内での転籍が可能となり、過酷な労働環境からの脱出路が開かれる。さらに、長期就労と技能評価を通じて永住への道も整備され、日本社会の持続可能性を視野に入れた制度改革となっている。

偽装された「留学生」制度というもう一つの歪み

しかし問題は技能実習制度にとどまらない。近年では「留学生」という形での受け入れにも歪みが広がっている。一部の偽装された大学・専門学校は名ばかりの教育機関であり、実態は低賃金労働者を供給するための“入り口”にすぎない。

そこにブローカーが介在し、とりわけベトナムやネパールの若者が借金を背負って来日している。彼らは制度からも社会からも見捨てられ、不法滞在や犯罪に追い込まれる例すらある。

制度が生み出す悪循環

こうした一連の構造は次のような悪循環を生んできた。

  1. 技能実習制度による労働力確保

  2. 制度の劣悪さと支援不足による逸脱・不法行為の発生

  3. それが「外国人=危険」という偏見を助長

  4. 移民アレルギーの強化

  5. 正面からの移民政策議論の回避

犠牲になるのは真面目に働く外国人だけではない。問題の本質に向き合わないままでは、日本社会そのものが長期的な代償を払うことになる。

もはや「選ばれない国」になりつつある日本

かつて日本は、東南アジアや南アジアの若者にとって「憧れの国」だった。治安が良く、インフラが整い、働けば母国より高い収入を得られた。しかし今、そのイメージは確実に揺らいでいる。

長引く円安、過酷な労働環境、制度の不透明さが広く知られ、カナダやオーストラリア、韓国が待遇の良い制度を整える中、「働きに行くなら日本以外で」という選択肢が現実味を帯びている。

むすびに──国内の潜在力と技術革新を優先せよ

欧州の移民ハレーションは、労働力不足を理由に安易な受け入れを進めれば、治安や社会統合、政治秩序の根幹が揺らぐことを示している。日本が同じ道をたどれば、社会の秩序や文化的な強みを失うことは明らかである。

だからこそ、日本がまず優先すべきは国内に眠る潜在力の最大活用である。高齢者や女性が持つ経験や能力は、柔軟な働き方や再教育の機会を整備することで、まだ十分に社会に生かすことができる。地方には就労意欲がありながら機会を得られない層が多く存在し、制度と技術の工夫次第で労働力不足を大きく緩和できる余地がある。

加えて、日本にはロボット・AI・自動化という世界最先端の技術分野がある。規制やコストの壁を取り払い、製造業・物流・介護・医療といった分野に集中的に導入を進めれば、労働生産性の飛躍的な向上が可能になるだろう。人手不足の構造そのものを技術革新によって変えることができるのである。

このような国内改革を進めたうえで初めて、外国人労働力をどの分野で、どの規模で、どの条件で受け入れるのかを社会的に議論すべきである。移民政策はあくまで国内資源と技術革新を最大限に生かした後の「補完策」であり、拙速な受け入れは社会の統合と持続可能性の双方を損なうリスクを孕んでいる。

日本にはまだ時間がある。欧州の失敗を反面教師とし、社会の秩序と経済の活力を両立させる制度設計を先に構築できるはずだ。人手不足にどう向き合うかは単なる労働政策ではない。日本がどのような社会を次世代に引き継ぐのかという、長期的な国家戦略の核心なのである。

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