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第25話|家族になる、という言葉

そして彼は、こう言った。

「あいつらを、連れて来てくれ」

その日は、習い事も少年野球の練習もなかった。
私は少し早めに家に帰り、子どもたちを連れて病院へ向かった。

人気のない、病院の敷地内の広場に出ると、
彼は子どもたちの前に立ち、少し照れたように言った。

「今日から、お前らの親父になるから」

二人は、不思議そうな顔をしていた。
それも無理はなかった。

もうとっくに、
二人の中では“そういう存在”になっていたから。

学校の先生も、保護者の人たちも、
私の両親も、妹たちも、
みんな自然に、それを受け入れていた。

彼らしいな、と思った。
それと同時に、
子どもたちに言葉として伝えてくれたことが、
どうしようもなく嬉しかった。

私はわざと背中を向け、
病院の壁をじっと見つめていた気がする。

杖をつけば歩けるまで回復した彼は、
三か月後に退院した。

誰がどう見ても、自然な家族だった。

「愛咲ちゃんは、
子どもを甘やかすのと、可愛がるを間違えてる」

そう言って、
子どもたちの“教育係”は、いつの間にか彼になっていた。

それまでも家事をしてくれていたのに、
子育ても、当たり前のように引き受けた。

本読みカードの記入を喜んでやり、
「自分がやりたいって言って始めた野球なんだから」
そう言って、洗濯機の使い方を教える。

落ちない汚れは、
子どもたちが寝静まった夜中に、
そっとお風呂場で手洗いをしていた。

「あいつには内緒な」

そう言って笑いながら。

子どもたちが
「ママは寝てばっかり」と文句を言えば、
私の病気のことを、ちゃんと説明し、
納得させてくれた。

――生きてて、いいんだ。

ほんの少しだけ、
そう思えるようになった。

近くのTSUTAYAに、
ありさちゃんのCDを予約しに行ったり、
ドラマを一緒に見たり。

気づけば、
自傷行為も、パニック発作も、
いつの間にか消えていた。


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ここまで読んでくださってありがとうございます。手術を控えた今、この25話を書き終えられたことに感謝しています。

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