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JR西日本 × ALGO ARTIS 競技プログラミングでつながる現場課題と未来 ── AHC共催に込めた両社の狙い

2026年4月、JR西日本様と ALGO ARTIS が共同でAtCoder Heuristic Contest(AHC)を開催します。JR西日本様にとっては初めてとなるコンテストの主催、私たち ALGO ARTIS にとっても他社との共催は初めてのことです。また、AtCoder史上においても、2社による共催は初めての試みになるとのこと。

今回のコンテストの発起人は、JR西日本デジタルソリューション本部に所属する横山さんです。横山さんはAtCoderユーザーでもあり、ALGO ARTIS のエンジニアとアルゴリズムの話題で意気投合。こうした共通言語があったことが、今回のAHC共催のきっかけとなりました。

運転士として電車を動かし、指令員として運行を管理——。現場を歩き続けた横山さんが、なぜ競技プログラミングに取り組み、異色のコラボレーションを動かしたのか。鉄道という社会インフラの課題解決に、競技プログラミングで培った技術や考え方がどのように活かされているのか。

JR西日本の横山さんと ALGO ARTIS のアルゴリズムエンジニア3名に話を聞きました。

「JR西日本・ALGO ARTIS プログラミングコンテスト」(AHC 064)
開催日時: 2026年4月26日(日)15:00〜19:00
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横山亮磨(JR西日本)
西日本旅客鉄道株式会社 デジタルソリューション本部 データアナリティクス部門。同社入社後は運転士や指令員などを担当。社内公募でデータアナリティクス部門へ転身後、独学でプログラミングを習得。データを活用した課題解決に取り組む傍ら、個人でAHCに出場し続けている。

木村陽太(ALGO ARTIS)
アルゴリズムエンジニア。東京工業大学にて工学院システム制御コースを修了。新卒でNECに入社しATMの開発等を行った。2024年7月にALGO ARTIS入社。社内屈指の鉄道好きとして知られ、現在は鉄道関連のプロジェクトを担当。

海野秀次(ALGO ARTIS)
アルゴリズムエンジニア。東京工業大学大学院情報理工学院にて修士号を取得。新卒入社した会社で2年間エンジニアとして従事しつつ、趣味の競技プログラミングで実績を挙げ、ALGO ARTISに入社。

渡辺珠以(ALGO ARTIS)
アルゴリズムエンジニア。東京大学大学院で博士号を取得。2019年に大手メーカーに入社し、社内向けシステム開発にソフトウェアエンジニアとして従事した後、ALGO ARTISに入社。


鉄道会社×計画最適化の専門集団、異色のコラボの舞台裏

── JR西日本様にとって、AHCを主催するのは今回が初めてのことだと伺いました。どのような経緯でコンテストを開催することになったのでしょうか?

横山:もともとJR西日本として主催したいという思いがありました。鉄道の課題は最適化にまつわるものが多く、そのような技術を持つ人が輝ける場所であることをもっと伝えていきたいと考えていたんです。

ただ、私たち自身にはコンテストの開催ノウハウや問題を作成する知見もなかったので、一緒に開催してくださる方々を探していました。そんな中で昨年 ALGO ARTIS の皆さんと打ち合わせをする機会があり、その場で私からご提案した形です。その場には私の上司も同席していたのですが、上司も含めて「面白いのでぜひやろう」と盛り上がり、とんとん拍子で実施する運びになりました。

── ALGO ARTISのメンバーは横山さんのご提案を聞いてどのように感じましたか?

渡辺: すぐにやりたいと思いました。同じ趣味を持つ人が別の会社にいて、その関係が深まることで仕事が前進していく。私自身、AtCoderを始めた当初は、まさか仕事に役立つとは全く思っていなかったので、今回のようなコラボレーションが実現することが、一人の競技プログラミングのファンとして素直に嬉しかったです。

── 両社の間では以前から関係値があったそうですね。

横山: 接点が生まれたのは2023年の秋頃です。AtCoderで ALGO ARTIS という会社を知っていたのもありJR西日本データアナリティクスと ALGO ARTIS で意見交換の場を持たせてもらったのが最初です。
そこで「鉄道と計画最適化技術を掛け合わせることでどんなことができるのか」を継続的に議論していこうという話になり、現在も関係が続いています。

── ALGO ARTISとしてはこれまでも自社でAHCを主催してきました。コンテストを主催することへの思いを教えてください。

渡辺:率直に言うと、多くのメンバーが「AHCが好きだから」というのが一番大きいです。純粋に楽しい競技なので、もっと応援したいという気持ちで続けているところがあります。

それに加えて「人材への期待」という観点もあります。AHCでは難解な問題に適した手法を判断して、より良い結果を出す力が磨かれる。弊社のこれまでの経験からも、そのような力を持つ人材が実社会の課題解決においても活躍しているということが明らかになっています。そこに対する期待もAHCの主催を続けている理由の一つです。

鉄道業界の課題解決のカギは「最適化」にある

── 横山さんは現場を経験されてから、データ分析の部門に来られたそうですね。

横山:運転士、指令員を経験してきました。鉄道のダイヤは主にアナログな手法で作成し運行管理をするのですが、次第に「もっとデータやデジタルの技術を使って鉄道の課題を解決したい」という気持ちが強くなっていったんです。
その後、社内の公募制度に応募し、現在の部門に進むことになりました。

── 当時からプログラミングの知見はお持ちだったのでしょうか?

横山: いえ、全くなかったです。もともと興味があったのですが、会社に入って2,3年経った頃にコロナ禍となったのも大きなきっかけです。会社としても自分自身もこのままでは行けないなという思いがあり身になることをしたいと思っていて。ちょうどAIがブームになり始めていたこともあり、興味が沸いていたんです。

── そこから競技プログラミングを始めるまでの経緯を教えてください。

横山:データ分析チームに入ってからアルゴリズムコンテストに参加するようになり、その1年後からヒューリスティックコンテストにも出場し始めました。鉄道の課題は最適化と密接に関わっているものが多い以上、最適化の問題を解けるようになる必要があると思っての決断だったのですが、参加してみたら想像以上に面白くて。鉄道の課題そっちのけでのめり込んでしまうほどでした(笑)。

最初に出場したのが2023年8月で、そこからのコンテストはほぼ毎回出ています。

── 正直、御社にそのような方がいらっしゃるというのが意外でした。

横山:おそらく現時点で継続的に参加しているのは私だけです。ただ、コンテストを通じて学んだアルゴリズムやデータ構造の知識が、社内の各部署から相談を受けた時に「この手法が使えるんじゃないか」と提案できる力になっていると感じています。自分の武器になってきたという実感があるので、今回を機に社内のメンバーにも興味を持ってもらえると嬉しいです。

JR西日本 横山さん

電車を1本走らせるだけでも、様々な計画が重なり合う

── 鉄道業界の課題には最適化にまつわるものが多いというお話がありました。例えばどのような課題が存在するのでしょうか?

横山: よく言われる「計画業務が複雑で属人化する」というのは本当にその通りです。例えば電車を1本走らせるためにも、「どの車両を使うか」「どの運転手や車掌が乗るか」「車両や路線をいつ点検するか」「電線をいつ取り替えるか」といった複数の計画が重なりあっています。

電車1本でも大変なのに、京阪神のアーバンエリアのような都市部では電車の本数がものすごく多い。様々な制約を考慮しながら最適な計画を立てるのは、非常に難易度が高いんです。そのためベテランの方々の知恵や力を借りないと実現できないというのが、属人化や技術継承の課題にもつながっています。

── 先ほどの横山さんのお話を踏まえると、現時点ではデジタル化はまだまだこれからという段階でしょうか?

横山:そう思っていただいて間違いはありません。一部の計画はシステムを活用していますが、今でも紙とペンを使って手作業で計画を立てている部分も多いです。

── まさに横山さんが在籍されている部門の方々は、デジタルを活用して社内の課題解決に取り組まれているかと思います。裏を返せば、従来の方法だけでは解決するのが難しくなってきているのでしょうか?

横山:課題自体は昔から存在しているものですが、より深刻化してきているというのが答えだと思います。生産年齢人口の減少が進展することが予測されており当社グループの事業運営を支える人財の確保が困難になる可能性があります。コロナ禍のように数年先でも何が起こるかわかりません。変化対応のためにも私個人としても、デジタルの力にも頼っていかないと難しい時代が近づいているという考えです。

競プロのスキルは、どのように鉄道業界で活かされるのか

ALGO ARTIS アルゴリズムエンジニア 渡辺

── 実際に ALGO ARTIS の皆さんは、最適化アルゴリズムの力を用いて鉄道業界の課題解決に取り組まれています。競技プログラミングで培ったスキルや考え方をどのような場面で活用されていますか?

渡辺:私が感じるのは、組合せ最適化という問題の題材が近いということです。競技プログラミングで求められる知識と、鉄道業界の計画問題で求められる知識がかなり共通しています。

もう一つは、試行錯誤するメンタルや地力です。コンテストでは期間内に試行錯誤を繰り返しながら、アルゴリズムの設計方法を改善し続ける姿勢が必要になる。その粘り強さは難解な鉄道業界の課題を解決していく上でも不可欠です。

海野:鉄道業界の問題は難しいものが多いですが、部分問題を切り出すとアルゴリズムの知識がクリティカルに活きてくる場面があります。例えば高速なデータ構造を用いるとより効率良く探索できるなど、アルゴリズムの知識が直に活きてくる。

プロジェクトでは日本トップレベルのアルゴリズムエンジニアが、自分の知らないデータ構造を使って問題をクリティカルに高速化してくれた場面もあって、その力を目の当たりにしました。

木村:競技プログラミングはアルゴリズムの知識や技術だけでなく、問題へのアプローチの発想力が磨かれると思っています。目の前の問題を自分の持つアルゴリズムで解けるようにするためには、どのようにアプローチすれば良いか。その考え方は「実社会の課題をアルゴリズムで解ける問題に変えるには、どのように翻訳すればいいか」といったように、鉄道業界の計画最適化にもそのまま応用できると考えています。

── 様々な産業・領域に計画の課題が存在しますが「鉄道業界ならではの難しさ」のようなものはあるのでしょうか?

海野:横山さんのお話にもあったように、鉄道は様々な要素が絡み合うので、複数の問題を同時に解いているような感覚になります。お客様の目線、運営企業の目線、乗務員の目線、関係会社の目線と、評価軸が多種多様です。

木村:例えば電車の運行管理には特殊ケースと呼ばれるものがたくさん存在するのですが、そもそもそれを理解していないと、アルゴリズムで上手く課題解決ができないんです。他の産業でも言えることかもしれませんが、業界特有のドメイン知識は必要だと思います。

── 木村さんは社内でも屈指の鉄道好きだそうですね。

木村:気がついたらアルゴリズムエンジニアというよりも、むしろドメインエンジニアになっているような気がします(笑)。

海野:木村さんがドメイン知識を翻訳してくれるので、私はアルゴリズムの開発に集中できています。ヒューリスティック手法は「問題の性質を的確に捉えた解法」を構築しないと上手く解けないのですが、そのためのドメイン知識を木村さんに教わりながら進めています。

写真左から ALGO ARTIS アルゴリズムエンジニア 海野と木村

共通言語が鉄道会社とスタートアップの壁を越えた

── JR西日本とALGO ARTISは組織の規模感も文化も大きく異なるかと思います。一緒に議論や今回のコンテストの話をする中で、お互いにどのような印象を持ちましたか?

横山:ALGO ARTIS さんのことは、AHCで上位に君臨しているメンバーが集まっている会社として以前から知っていました。だからこそ「技術力が高い」というのは十分にわかっていたのですが、実際にディスカッションを重ねる中で印象が変わったのは、ビジネスサイドも強いという点です。課題を設定・定義する力や、ドメイン特有の事情をエンジニアの方々に接続していく力にも非常に長けていると感じました。

またスタートアップやベンチャーというとイケイケなイメージがあるかもしれませんが、複雑な課題に対して真摯に向き合ってくれる会社だというのが率直な印象です。

渡辺:私はJR西日本さんが、ここまで自社の開発組織に力を入れているとは正直知らなかったんです。自社でシステム開発やデータ分析の体制を構築されていて、横山さんのように強い課題感を持って動いている方もいらっしゃり、感銘を受けました。

一方で今回のコンテストのように新しい取り組みに対してとても前向きで、チームの雰囲気も和気あいあいとしており、一般的にイメージされている企業像とは異なる一面もあると感じました。

── JR西日本さん側にはAtCoderユーザーの横山さんの存在が、ALGO ARTIS側には鉄道が大好きな木村さんの存在があったことも、議論が活発に進んだ要因の一つかもしれませんね。

海野:通常ならお客様にヒアリングを重ねてドメインの理解を深めていくプロセスを踏むと思うのですが、木村さんが大体のことをすでに把握しているので「まずは木村さんに聞いてみる」という形で、よりスピード感が増している側面はあるかもしれません。

横山:木村さんに専門用語をそのまま使って話しかけると、社員と話しているのとほぼ変わらないくらいスムーズに議論が進むので驚きました。鉄道の現場の人間とアルゴリズムの専門家が同じ言語でスムーズに話ができるというのは、なかなかない体験です。

鉄道業界は、AtCoderで腕を磨いた人こそ活躍できる場所

── 改めて、今回は2社で初めて共催するコンテストになります。今回のAHCへの参加を検討している方へ、メッセージをお願いします。

横山:業界の課題解決に競技プログラミングで培った技術を活用できるということはまだまだ浸透していないと感じます。まずは今回のコンテストをきっかけに、1人でも多くの方にそのことを知っていただけると嬉しいです。

渡辺:鉄道業界には最適化でアプローチできる問題がたくさんあり、AtCoderで腕を磨いた方々が活躍できる場がまだまだあります。JR西日本さんはもちろん、鉄道業界の課題解決の担い手として ALGO ARTIS にも興味を持っていただける方が増えると嬉しいです。木村さんのように鉄道が趣味という方にも、活躍できる場所があります。

木村:私自身、入社した際にはまさか鉄道のプロジェクトに関われるとは思っていませんでした。競技プログラミングをやりながら、自分の好きなドメインと組み合わせて仕事ができる。鉄道の課題解決に関心があるという方には、ぜひ参加していただきたいです。

海野:ドメインに関心がある方はもちろんですが、純粋に「難しい最適化問題を本気で解きたい」という方にもぜひ来ていただきたいと思っています。私は木村さんほど鉄道に特別な関心があったわけではありませんが、扱う問題は十分すぎるくらいに難しい。だからこそ、やりがいもあると思います。

「JR西日本・ALGO ARTIS プログラミングコンテスト」(AHC 064)
開催日時: 2026年4月26日(日)15:00〜19:00
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撮影場所: WeWork半蔵門

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