競技プログラミングとの出会いが人生を変えた──1人のアルゴリズムエンジニアが見つけた「好きと得意」が交わる場所
ALGO ARTIS には、多様な専門性やバックグラウンドを持つメンバー——"ARTISAN(アルチザン/職人)"たちが集い、それぞれの技術や経験を活かして活躍しています。そんなARTISANたちを紹介する本シリーズ。
今回は、アルゴリズムエンジニアとして働く藤吉のインタビューをお届けします。前職時代に趣味として始めた競技プログラミングにのめり込み、ALGO ARTIS でアルゴリズムエンジニアとしての一歩を踏み出した藤吉。新たな挑戦の場としてALGO ARTIS を選んだ背景や、現在の仕事について聞きました。
【藤吉の経歴】
大阪大学大学院で量子化学シミュレーションを用いた分子の光学物性を研究。新卒で自動車部品メーカーに入社し、生産技術部門でシステム開発に従事。2023年7月にALGO ARTIS に入社。現在はアルゴリズムエンジニアとして名鉄バス様とのプロジェクトを担当している。
趣味で始めた競技プログラミングとの出会いが大きな転機に
── 現在アルゴリズムエンジニアとして活躍している藤吉さんですが、学生時代は化学を専攻されていたと聞きました。
藤吉:そうなんです。ただ化学実験で有機溶剤を使って化合物の合成などを行うのですが、私は体質的に合わず、気分が悪くなってしまって。そのため化学とは言っても、コンピューターシミュレーションで計算するような研究室を選んでいました。
そこで少しプログラミングにも触れたことで、IT系の分野で働きたいという気持ちが強くなっていったんです。
── 前職でシステム開発に携わっていたのも、そのような経緯があったのですね。前職時代はどのような業務を担当されていたのでしょうか?
藤吉: 自動車部品を作る会社の生産技術部門でものづくりに関係するシステム開発を担当していました。ものを作るための設備の中で動くシステムや、設備とデータベースを相互連携するための統合システムなどですね。
もっとも、開発の部分は外部のベンダーさんに依頼していたので、私自身はコードを書いていたわけではありません。私の役割は、製造現場や管理部門の関係者から困りごとや実現したいことをヒアリングして、それをシステムに落とし込むための要件や仕様を整理することでした。
── 競技プログラミングと出会ったのもその頃だったとか。
藤吉: 「コードをほとんど書けない状態でシステムの要件定義に関わるのは望ましくないのではないか」という気持ちがあったため、1年目の時に競技プログラミングの勉強を始めたんです。あくまで趣味として始めたので、まさかそれが仕事に直結するとは考えていなかったのですが、気づいたらどんどんハマっていました。
── サービス開発などの道ではなく、競技プログラミングを選んだのには何か理由があったのでしょうか?
藤吉: よくあるプログラミング学習では「何かを作ること」が目的として設定されていることが多いかと思うのですが、裏を返せば作りたいものがない状態で始めても学習のモチベーションが続かないのではないかと感じていました。
その点、競技プログラミングの場合は、問題とそれに対する正解があり、「正解を導くためのコードを書く」というわかりやすい目標が設定されます。そういった意味で始めやすく、自分にも合っていたんです。
やったことに対してすぐ正誤のフィードバックが返ってくるので、すぐに改善できるのも楽しい。そのサイクルの中で、自分がどんどん上達していることや、以前はできなかったことができるようになっていくことをすごく実感できるんです。それでやればやるほど、夢中になっていきました。
この環境なら「夢中で取り組めること」があるはず
── 結果的には競技プログラミングとの出会いが藤吉さんの大きな転機になったわけですよね。そこからアルゴリズムエンジニアとしてALGO ARTISで働くようになった経緯が気になります。
藤吉:前職に入社して4〜5年が経った頃、たまたまX(旧Twitter)でフォロー関係にあったALGO ARTIS のアルゴリズムエンジニアの方からお声掛けをいただいたんです。話を聞く中で面白いなと思って、入社することを決めました。
もともと転職を考えていたわけではなかったので、前職でそのまま働くか、ALGO ARTIS に転職するか。迷った末に後者を選びました。
── もともとは転職を考えていなかったとのことでしたが、何が決め手になったのでしょうか?
藤吉:当時から「優秀な競技プログラマーがたくさん集まって活躍している会社」というイメージがありました。そのような環境であれば、私が今まで趣味で夢中に取り組んできたことと同じように、仕事としても夢中に取り組めることがあるんじゃないかと感じたことが大きかったです。
そもそも前職の仕事にやりがいを感じていたので、せっかく転職するのであれば、今までとは全く異なった環境で働きたいという気持ちもありました。同じような業界や業種なら転職する理由がないと考えていたんです。
── 仕事としてコードを書くことは藤吉さんにとって初めてのチャレンジですよね。不安はありませんでしたか?
藤吉:まさに当時の面談で「業務でコードをあまり書いたことがなくて不安です」と相談したら、「何とかなりますよ」と言われたので、何とかなるんだろうなと。実際に働いてみると、キャッチアップのための体制や環境がしっかりしており、やっていけています。
ただ、当時は30歳手前だったので、「ここで失敗しても何とかなる」くらいの気持ちで、あまり深く悩まずに思いきって飛び込んだというのが正直なところです。

11営業所それぞれ異なる運用という複雑な挑戦
── 改めて、現在担当されている業務の内容について教えてください。
藤吉: アルゴリズムエンジニアとして、入社直後から名鉄バス様のプロジェクトを担当しています。具体的には「交番表」を自動作成する最適化AI(アルゴリズム)を開発するのが私の大きな役割です。
交番表というのはいわゆるシフト表のようなもので、どの乗務員さんが、どの便を運行するかを割り当てたものになります。
── このプロジェクトならではの難しさはどこにありましたか?
藤吉:一番の難しさは、実世界の問題をモデル化に落とし込むところでした。最適化エンジンで100点を出せても、現実世界でそのまま100点になるとは限りません。
特に名鉄バス様の場合、営業所が11ヶ所あって、それぞれで考え方や運用が異なっていたんです。営業所Aでは「よし、これでいい」と思ったものが、他の営業所では「ちょっとこれは違う」となることがありました。
お話を伺ってみると、確かにどの営業所の考え方も納得できる内容なんです。そういった各営業所の事情を理解した上で、汎用的なモデルを構築するのは、かなり難しかったですね。
── 一つの会社でも、これほど運用が違うものなのですね。
藤吉:そうなんです。今回は一つの会社の一つの営業所に導入するという話ではなく、一つの会社の複数営業所に導入するプロジェクトだったので、この特有の事情がありました。
アルゴリズムエンジニアが営業所を直接訪問する価値
── 今年(2025年)の2月から、一部の営業所を皮切りに乗務行路表や交番表の実運用がスタートしました。ただ、プロジェクトの初期の頃は苦労されたと伺っています。
藤吉: 最適化プロジェクトは皆さんが経験するものではないので特殊なんです。お客様も私たちも、試行錯誤しながら進めていた部分がありました。
特にALGO ARTIS ではアジャイル的に、結果を一旦出して、フィードバックをいただきながら改善を加えていくスタイルを採っています。そういった部分も含めてお客様にとっては初めてのことが多かったため、初期はコミュニケーションに時間がかかっていた側面があります。
── それがどのように改善されたのでしょうか?
藤吉:愛知県の11営業所のほとんどを直接訪問させていただきました。リモートミーティングでは限界もあったので、実際にどういう実務をやっているかを直接お伺いしたんです。
また、途中から以前に交番長をされていて各営業所の事情に詳しい方がプロジェクトに深く入ってくださいました。その方と私が一緒に営業所を回ると、「よう、久しぶり」みたいな感じで、すごくヒアリングしやすくなりました。こういうキーマンの存在は本当に大事だと実感しましたね。
── アルゴリズムエンジニアが直接現場を訪問するのは珍しいのでは?
藤吉:そうかもしれません。でも、最適化エンジンを組む際の細かい制約条件や要求は、アルゴリズムエンジニアが主となって議論した方が効率的なんです。
間に何層も挟まると、現場の方が考えていることが正確に伝わらなかったり、余計に時間がかかったりします。物によってはエンジニアが直接動いた方がスムーズにいくことが多いんです。
実際、電話履歴を見ると、その担当者の方の名前だけがずらっと並んでいます。普段電話をあまり使わないので、その人の名前だけが表示されているという状況でした(笑)。

バス業界への理解と愛着の深まり
── プロジェクトを通じて印象的だった瞬間はありますか?
藤吉:お客さんと一緒に要件や仕様を整理して、アルゴリズムを改良していく中で、「前よりも良くなったね」と言われた時は素直に嬉しかったですね。自分がヒアリングして、自分がコードを書いて、その結果をお客さんに見てもらって喜んでもらえる。この一連の流れを体験できるのは、この会社ならではだと思います。
── 元々バス業界に興味はあったのでしょうか?
藤吉:正直ありませんでした。でも1年半プロジェクトをやってくると、愛着が湧いてくるんです。
今まで私が捉えていたバスって、バス停に行くと自動的にバスが来て、当たり前のようにサービスを利用できるものだと思っていました。でも裏を見ると、社会のインフラとして継続的に運行しないといけないために、実は相当な工夫やノウハウ、仕組みがある。そういうのを知ると、すごく奥深い業界だなと思うようになりました。
── 今後の目標についてはいかがでしょうか?
藤吉:今は1社で実運用に至りましたが、様々なバス事業会社で利用できるような最適化エンジンを開発したいと思っています。
そのためには最適化だけでなく、UI/UXの観点や、会社ごとにうまくチューニングできるようなシステム設計など、周辺技術も身につける必要があると感じています。
「好きなこと」と「得意なこと」が交わる稀有な環境
── この会社でよかったと思えた瞬間はありますか?
藤吉:フットワーク軽く動けることですね。価値を出すためや、お客様により良いものを届けるためであれば、出張なども含めて裁量を持って行動させてもらえる。そこがすごく働きやすくていいなと思っています。
── この2年間を振り返って、転職の判断はいかがでしたか?
藤吉:少なくとも、この選択は間違っていなかったと言えます。
前職で培った関係者からのヒアリング能力と、競技プログラミングで身につけた技術的スキル ── この二つが交わることってそんなにないと思うんです。でもALGO ARTIS では、お客さんの困りごとをしっかり解決することと、最適化技術を使うことの両方がちょうど交わるところで働けている。
他にこういうことができる会社はそんなにないんじゃないかと思います。ALGO ARTIS じゃないと、私のこれまでの経験を活かせる場はなかったかもしれません。
── 最後に、これからALGO ARTISに入る方へのメッセージをお願いします。
藤吉:競技プログラミングを楽しいと思ったり、AtCoder Heuristic Contestでスコアを改善していくのが楽しいと思える人にはオススメの環境だと思います。
ビジュアライザを観察・考察して仮説を立てて実装・検証するサイクルは、実世界の最適化問題に取り組む上でも大事なスキルで、一つの武器として活かすことができます。

撮影場所: WeWork 神谷町トラストタワー 共用エリア
変化を楽しみながら、社会基盤に変革をもたらす。
ALGO ARTIS は、そんな仲間を求めています。
自分の力で社会にインパクトを生み出したい方、 一緒に未来を形にしていきませんか?
