さっき土下座してた奴が普通に喋り出した件。
みなさん、土下座ってどんな時にします?
愛する人を守るため?
誠心誠意、謝罪するため?
あるいは、人生をかけて何かをお願いするため?
でも──
“なかったこと”にはならない。
これは、たった2,500円が起こした、ひとつの小さな物語です。
ある夜のことです。
カウンターの中でお酒を作りながら、お客さんたちの会話に耳を傾けていました。
店内はいい感じにゆるんでて、笑い声がぽんぽん跳ねてた夜やったと思います。
ちょっと変わった常連さんがいてましてね。
当時たぶん45歳くらいの人で、僕はまだ30歳。
だいたいの人は僕の事を「ちょりけん」とか「健太さん」って呼ぶのに
この人は僕の事を「けんけん」って呼んでました。
子供でも驚かないような簡単な手品に本気で驚いて、
友達連れてきて、あれやってや!って言うような人。
カウボーイみたいな格好してるんですが、薄めにちょっとダサい。
たまたま持ってたみたいな感じ出してギター担いできて、弾いて下さい待ちするような雰囲気の人です。
その人がね、
帰るってなったので
「お会計2500円です。」って言ったんです。
そしたら「バン!!!!」
って音がして、んっ?と思って
その方向に目をやったら
土下座してるんです。
えっ!? 何々??
怖い怖いって思ってたら
「すまーーん!!!!けんけん!!!!足らんっ!!!!!!」
って叫ぶんです。
子供が道路に飛び出た時の「危ないー!!!!」ぐらいの声で!
「クソお世話になりましたーーー!!!」のサンジみたいに。
おチャラけてる感じの人が、本気のトーンで土下座してきたもんやから、
僕も思わず「いや、いいですよいいですよ」って言って立ってもらったんです。
「あるだけ出すから許してくれーー!!」
って言って必死な顔して、
ポケットからジャラジャラ小銭を出しはじめて、
カウンターの上で真剣にかき集めだして。
10円玉、5円玉、1円玉。
ん?????
あれっっ????
「あの、、、、、足りて、、ますね。。。」
「あらま。なんやったらもう1杯いけるな。」
「………………..はい。」
「ほんなら、もう1杯飲んで帰るわ。」
「………あっはい。」
若干気まずい空気ですが、お酒を出したら、
沈黙の中、その人が口を開きます。
「そういえば、昨日、地元のツレと飲んでてさ、いやー、そいつがめっちゃおもろいやつでさ。」
って表情を変えず話始めたんです。
いや、ムリムリムリムリムリーーーー!!!
何もなかったは無理やってーーーーー!!!
流石に土下座に触れてよーーーーーー!!!
ほんでお前の方が絶対おもろいーーー!!!
僕は必死に笑いを堪えながら、
「そうなんですね。楽しかったんですね。」
とは返したものの、土下座して何もなかった事にする奴、
流石に笑ってしまいます。
我慢できず噴き出した僕を見た彼は
「けんけん、どうしたん、なんかおもろい事でもあったんか?」
いや、お前ーーーーーーーーー!!!!!
迫真のコント見せられて笑うなはムリっすーーー!!!
「。。。すみません、流石に土下座されて足りてたは、
おもろ過ぎます。。。。」
「いやまあ、礼儀だけはちゃんとしたかって。」
「れ、い、ぎ ???」
あの「土下座」には、謝罪以上のものがあったんちゃうかなと、今でも思います。
彼なりの照れとか、愛嬌とか、「なんとかここに居続けたい」みたいな気持ちとか。
そもそも足りましたしね。
でも僕は、あの夜の“土下座”を、今でもなんか好きなんです。
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