【元小学校教師の記録⑦】教員時代に大切にしていた学び
20年間の教員生活を振り返ると、私が一番大切にしていたのは、「実感のある学び」だった。
それは、研究会で出会った先生方から教えていただいた考え方でもある。
表面的に理解するだけではない。
「なるほど!」
「すごい!」
「初めて知った!」
そんな言葉が自然と生まれるような学び。
私は、そんな授業をつくりたいと思い続けてきた。
地域の本物の人と出会ったとき、子どもたちは大きく変わる。
学ぶことが楽しいと思えたとき、学びは喜びへと変わる。
そして私自身も、子どもたちと一緒に学びながら、たくさんのことを教えてもらった。
地域の方々との出会いを通して、その土地の魅力や、人の温かさにも気づかせてもらった。
私が特に大切にしてきたのは、平和教育だった。
たくさんの戦争体験者の方からお話を聞かせていただいた。
「後は任せたよ。私の代わりに伝えていってね。」
そう託された言葉の重みを、今でも忘れることはできない。
その思いを受け取り、地域に住むお年寄りのお話を、子どもたちと一緒に学んでいった日々だった。
当たり前だと思っていた今の暮らしが、決して当たり前ではないことを知る。
学べる幸せ。
ご飯を食べられる幸せ。
友達と遊べる幸せ。
そして、家族や友達と安心して過ごせる毎日。
そんな小さな幸せに気づいていく子どもたちの姿を、私は何度も見せてもらった。
3月には想像もできなかったような成長を見せてくれることもあった。
その姿を見るたびに、教師という仕事の喜びを感じていた。
また、子どもたちに出会わせるときに私が大切にしていたのは、私自身が心を動かされるような「本物の人」だった。
目立つ人ではなくても、実直に頑張っている大人の姿は、本当に魅力的だった。
農家や漁業を営む方。
工場で働く方。
お店を営む方。
伝統工芸に携わる方。
祭りを支える方。
役場や警察、消防署で働く方。
それぞれの仕事に誇りを持ち、地域を支えている大人たちは、本当にかっこよかった。
子どもたちは、そんな大人たちとの出会いを通して、少しずつ変わっていった。
ゴミ収集車で働く方のお話を聞いた後には、「ゴミを減らそう」という意識が生まれた。
また、伝統工芸に携わる方との出会いを通して、自分たちの地域に対する誇りも育っていった。
地域に住む人たちが、ただの「近所の人」から「憧れの人」へと変わっていく。
その瞬間を見るたびに、私は嬉しくなった。
そして3学期には、お世話になった地域の方々を学校に招待し、一年間の学びを伝える発表会を開いた。
学習発表会では、学んだことを劇として表現し、保護者はもちろん、地域の方々に見ていただくこともあった。
子どもたちが一生懸命に伝える姿を見て、涙ぐんでくださる方もいた。
教えていただいて終わりではなく、学んだことを自分たちの言葉で伝え、感謝を返していく。
そんな時間を、私は大切にしてきた。
振り返ると、その原点は離島で出会った子どもたちとの学びにあった。
そして、大学院を終えて最初に受け持った6年生の子どもたちにも、多くのことを教えてもらった。
遠い地域の話には興味を示さなかった子どもたちも、自分たちが暮らす地域の歴史や、地域の方から直接聞く話には真剣に耳を傾けてくれた。
私はそこで、
「子どもたちは何に心を動かされるのか」
ということを教えてもらった。
だから私は、転勤先のどの学校でも、子どもたちが自分たちの住む土地の良さに気づけるような授業を心がけてきた。
3年という短いスパンで異動していた私が、地域に恩返しできること。
それは、子どもたちと地域を結び、この土地に誇りを持てるような学びをつくることだと思っていた。
うまくいかないこともたくさんあった。
何度も挫折を繰り返した。
それでも、出会った人たちに少しでも恩返しがしたい。
そんな思いで走り続けた20年間だったように思う。
▶ 次回
【元小学校教師の記録⑧】
「研究論文を書き続けた理由」
毎年のように実践をまとめ、研究を続けてきた理由について書いていきたい。
