「ナスの古漬け」
子供の頃の記憶
子どもの頃の記憶には、
今思えば不思議な「おやつ」があります。
甘い菓子ばかりではなく、
家にある漬物や煮物を
つまんでいた時代の記憶です。
私には、ナスの古漬けをおやつ
代わりに食べていた記憶があります。
よく漬かったナスは、皮がやわらかく、
中は少しくたっとして
独特の味がありました。
塩気が強く、今の子どもなら
驚くかもしれませんが、
あの頃はそれが妙に
美味しかったのです。
面白かったのは食べ方でした。
まず中身をうまく取り出して、
空っぽになったナスに水を入れて遊ぶ。
小さな水袋のようになり、
指で押してみたり、光に透かしてみたり。
子どもはどんな物でも
遊び道具にしてしまいます。
そして遊び終わったあとには、
残った皮もちゃんと食べる。
今のように「もったいない」という
言葉を意識していたわけではありませんが、
自然と最後まで口にしていました。
考えてみれば、昔の暮らしにはこうした
「食べ物と遊び」が近くにありました。
特別なおもちゃがなくても、
漬物ひとつで遊び、
笑い、お腹も満たしていた。
そんな何気ない時間が、
今では妙に懐かしく感じます。
古漬けの少し酸っぱい匂いまで
思い出せそうな夕暮れの記憶です。
