「井戸の中に鯉が泳いでいた。」
子供の頃記憶
静かな井戸の中に、
ゆっくりと大きな鯉が泳いでいた。
子どもの頃に見たその光景は、
今思い出してもどこか現実離れしている。
浅い井戸の底、
水は澄んでいて、底まで見えた。
その中を、ゆったりとした動きで鯉が一匹、
2匹何事もないように泳いでいた。
大人たちはその水を普通に汲み、
飲み水として使っていた。
けれど子どもの自分には、
「生き物がいる水を飲む」ということが
どうしても不思議で、
少しだけ怖さも感じていた。
水面はいつも静かだった。
覗き込むと、自分の顔と空の光、
そしてその下にいる
鯉が重なって見えた。
まるで別の世界を
覗いているような感覚だった。
