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絵本「からすのてんぷらやさん」に学ぶ なくてはならない存在とは?

企業経営において、不測の事態はつきものである。
しかし、もし事業が予期せぬトラブルに見舞われ、どん底に落ちたとき、顧客はどのような行動を取るだろうか。

絵本『からすのてんぷらやさん』は、究極の危機対応と、それを支える顧客ロイヤリティの物語である。

主人公のてんぷら屋は、火事で全てを失い、一家離散の危機に直面する。
これはまさに、現代の企業が直面する災害や予期せぬパンデミックと変わらない「絶望」である。

重要なのは、その後の展開である。
店を愛する顧客たちは、再建資金を集めるような現代的な仕組みがない時代にもかかわらず、自発的に資材と材料を提供し、店の復活を待ち望んだのである。

なぜ、一営利企業が、インフラや社寺仏閣のような
「なくてはならない存在」として認識されたのか。

この絵本から導き出される
「圧倒的な商品力」
「再現性のある指導法(教育者としての資質)」
そして
「プロセスエコノミー」
という三つの教訓を深掘りし、さらに現代の老舗蕎麦店「大黒屋」の「ファンによる継承」という驚くべき事例を交えながら、真に顧客に愛されるビジネスの永続性について考察する。


1. どん底からの再建を可能にした、顧客との圧倒的な絆

「からすのてんぷらやさん」のオープニングは衝撃的である。
いきなり火事でてんぷら屋さんが全焼するシーンから始まる。
パン屋のレモンさんとおもちくんが火事の見舞いにやってきたところ、てんぷら屋の大将であるキュウベエさんと火事のせいで目をケガした後継ぎ息子のイワくんが焼け出されていた。
おまけに奥さんも行方不明となっており、絶望にくれていた。

しかし息子のイワくんの友達ジロくんから励まされ、レモンさんとおもちくんがてんぷらづくりを学ぶことになり、店は再建していった。
何よりも従来のファンが、店の再建を心から待ち望み、資材や材料を提供し、見事に復活を遂げたのである。
どん底を脱してから、行方不明だった奥さんも戻り、息子の目も回復し、息子とレモンさんさんとの結婚など好循環していった。


2. 学ぶべき3つのポイント:なぜ顧客は「二度と食べられない」を拒否したのか

ポイント1:圧倒的な商品力こそがインフラとなる

まずひとつ。
キュウベエさんのつくるてんぷらが圧倒的な支持受けていたことである。
不幸にも、火事に見舞われてしまったてんぷら屋であるが、二度と食べられなくなることを客は受け入れることができなかった。
そのため、さまざまな形で再建のサポートを顧客自ら進んで行ったのである。

現代であれば、クラウドファンディングで寄付を募ることもできるかもしれないが、そんな仕組みがなくても、「また食べたい!」と思わせるクオリティの商品を提供していたことが伺える。
てんぷら屋はインフラではない。
社寺仏閣でもない。基本は営利企業である。
しかし人々とっては、なくてはならない存在なのである。

ポイント2:職人技を「科学」に変える指導者としての資質

次にキュウベエさんの人間(カラス?)としての資質や魅力が挙げられる。 教育者としての資質が高く、てんぷらづくりの秘伝を再現性のある形で後進たちにうまく伝授しているのである。

職人にありがちな「見て盗め」といった感覚的指導ではなく、自分の経験を科学的に説明する能力に長けているからこそ、3人の後進たちに同時に指導ができたのである。

ポイント3:再建の様子を共有するプロセスエコノミー

三つ目はプロセスエコノミーを用いたマーケティングの導入である。
後進への指導中にも関わらず、再建を期待する顧客が集まってくるのである。
そして授業中にできあがったてんぷらなのにも関わらず、顧客は欲しがる。 後進の成長を顧客も応援する形になっていき、彼らが職人として認められた折には、「万歳、おめでとう!」の歓声があがるのだ。

これは狙ったものかどうか不明だが、再建の様子を公開していたことで、顧客は応援することができ、ますます「自分たちの店」という気持ちを高めていくことができたのである。


3. 究極の顧客愛:ファンが店を継承する時代へ

ここまで人々から愛される店は稀有な存在である。
よりよい商品・サービスを提供すること。
このことに徹することが何よりも大切なのである。

「からすのてんぷらやさん」の物語は、現代にも形を変えて引き継がれている。

例えば、創業100年を超える京都の老舗蕎麦店「大黒屋」のケースである。コロナ禍などの影響で惜しまれながら閉店した際、その伝統の味と店構えを惜しんだのは、まさに長年通い続けた「熱狂的なファン」であった。

このファンは、単なる資金提供にとどまらず、自ら事業のバトンを受け取り、店を継承するという、究極の形で「また食べたい」を実現させたのである。

これは、従来の「再建のための寄付」という枠を超え、顧客が「店」という文化財の存続を担う「事業家」へと変貌した事例と言える。

愛される店は、火事や災害、経営の困難といった「どん底」から復活する際、ファンを単なる消費者としてではなく、再建のパートナー、あるいは事業の継続者として巻き込む力を持っている。

「クオリティ」「人間性」「プロセスの共有」
これらが揃ったとき、顧客にとってその店は、もはや単なる営利企業ではなく、「人生になくてはならない存在」となり、困難な局面で絶大な力を発揮するのである。

わたしは「からすのパンや」シリーズ5作の中で、もっとも感銘を受けた。

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