カシミヤの最初の水通し・仕上げについて
なぜ冷水で優しく洗うだけでは足りないことがあるの?
コーン巻きのカシミヤ糸を初めて触ったとき、
「思っていたより硬い?」
「カシミヤなのに、あまりふわふわしていない…」
と感じることがあります。
でも、最初の水通し・仕上げをきちんと行うと、まるで別の糸のように変化することがあります。
だから私はいつも、
「工業用のコーン巻きカシミヤは、仕上げる前に判断しないでください」
とお伝えしています。
コーンに巻かれた状態は、まだ本来の姿ではありません
工業用のカシミヤ糸は、その後の編み立てや生産工程を考えて作られています。
紡績、巻き取り、機械編みなどをスムーズに行うため、糸にはオイルなどの加工剤が残っている場合があります。
そのため、コーンの状態では、
・少し乾いたような手触り
・表面が滑らかで毛羽が少ない
・思ったより細く感じる
・カシミヤなのに少し硬く感じる
ということがあります。
でも、それだけで品質が悪いという意味ではありません。
まだ繊維が十分に開いていないだけかもしれないのです。
なぜ最初は冷水で優しく洗うだけでは足りないことがあるの?
冷たい水に編み地を入れ、優しく浸してすすぐ。
通常のカシミヤのお手入れなら、とても大切な方法です。
しかし、工業用のコーン糸の最初の仕上げは少し目的が違います。
加工時のオイルが多く残っている場合、冷水に浸すだけでは十分に落ちないことがあります。
オイルが糸の内部に残っていると繊維が寝たままになり、カシミヤ本来のふくらみや柔らかな毛羽が十分に現れないことがあります。
つまり最初の仕上げは、単に「洗う」だけではありません。
工業的な加工から糸を解放し、繊維本来の表情を引き出す工程でもあるのです。
場合によっては、お湯が必要なこともあります
そうです。糸によっては、比較的温度の高いお湯でしっかり洗うことで、初めて変化が現れることもあります。
まず小さなスワッチで試し、温度や洗い方を少しずつ変えながら、その糸がどのように変化するか確認します。
適切な洗剤を使ってしっかり洗う必要がある場合もあれば、一度ではなく数回に分けて処理したほうがよい場合もあります。
ただし、とても大切なことがあります。
必ず最初はスワッチで試してください。
高温の水に摩擦や急激な温度変化が加わると、カシミヤがフェルト化したり縮んだりする危険があります。
ですから、
「カシミヤはすべて熱いお湯で洗えばいい」
という意味ではありません。
コーンごと、糸ごとに状態は違います。
スワッチでは大胆に。完成品では慎重に
ここは、とても大切なポイントです。
小さなスワッチなら、温度を変えたり、もう一度洗ったり、いくつかの仕上げ方法を試したりして、そのカシミヤがどこまで変化するのか確認できます。
でも、すでにセーターやカーディガン、ストールなどの大きな作品になっている場合、私は一度ですべてを仕上げようとはしません。
カシミヤは急がないこと。
完成した作品なら、私はスチームなども使いながら編み地の状態を確認し、少しずつ仕上げていきます。
まるで目に見えない薄い層を、一枚ずつ取り除いていくような感覚です。
一度の洗濯で、コーン糸の滑らかな編み地を無理に「ふわふわのカシミヤ」に変えようとする必要はありません。
ゆっくり時間をかけて、その糸自身に開いてもらいます。
カシミヤは少しずつ表情を変えていきます
これも、カシミヤという繊維の美しい魅力のひとつです。
最初の仕上げで、ふくらみが出てくる。
その後のお手入れを重ねることで、さらに柔らかくなっていく。
少しずつ繊細な毛羽が現れ、編み目の輪郭も柔らかくなり、カシミヤらしいふんわりとした表情へ変化していきます。
だから最初の仕上げだけで、必ずしも完成形を目指す必要はありません。
ゆっくり育てるように仕上げていく。
それもカシミヤの楽しみ方のひとつだと思います。
その後のお手入れは?
加工時のオイルなどが落ち、カシミヤが十分に開いた後は、もう高温のお湯で処理する必要はありません。
ここからは、大切なカシミヤ製品として優しく扱います。
・優しく手洗いする
・冷水〜ぬるま湯を使用する
・ウールやカシミヤに適した優しい洗剤を使用する
・強くこすらない
・ねじって絞らない
・タオルで優しく水分を取る
・形を整えて平干しする
最初の仕上げと、その後のお手入れは目的がまったく違います。
そして何より、まずスワッチを編んでください
特に初めて扱う工業用カシミヤの場合は、とても大切です。
小さなスワッチを編む。
仕上げ前の手触りを確認する。
洗ってみる。
完全に乾かす。
サイズがどのくらい変化したか確認する。
必要なら、もう一枚のスワッチで別の方法も試してみる。
そして初めて、本番の作品のゲージや仕上げ方法を決めます。
コーン巻きのカシミヤは、ときに驚くほど大きく表情を変えます。
最初は細く、滑らかで、少し控えめに見えた一本の糸が、適切に仕上げることで、ふっくらと柔らかく、とても暖かな編み地へと変化することがあります。
コーンに巻かれた状態だけで、カシミヤを判断しないでください。
まず、その糸が本来の姿に開く時間を与えてあげてください。
そして一度開いた後は、優しく、大切に。
カシミヤは急がず丁寧に付き合うことで、少しずつ美しい表情を見せてくれる素材です。
