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【ネタバレ全開】映画『ブゴニア』鑑賞後に訪れた恐怖(独自・感想)

1回だけの劇場鑑賞、パンフ、インタビュー、リメイク元は未読・未見です

鑑賞前日にヨルゴス・ランティモス監督の前作『憐れみの3章』を視聴。他にも近作は全部観ています。ハッキリ言ってヨルゴス・ファンです。
その上、製作にアリ・アスター監督。こちらも大ファンの監督です。
映画ファンなら『とんでもない変態タッグが来た!』という気持ちでしょう。両監督とも好き・嫌いがハッキリと分かれる作風なので、作品の評価も基本は真っ二つの傾向。
今回は劇場にて1回だけの鑑賞。パンフや監督、キャストのインタビュー、リメイク元の韓国映画『地球を守れ!』は見ていませんし、YouTubeでの考察や感想なども勿論見ずに私の感想を書いていきます。
なので『それは解釈が違う』とか『監督の意図がわかってない!』などのご意見あると思いますが、私の感じたままですのでご了承を。

そもそも『ブゴニア』って何?

まずは聞き慣れない『ブゴニア』というタイトルが気になったので調べました。
「死んだ牛の死骸からハチ(ミツバチ)が自然発生する」という古い信念や、その儀式を指す言葉で再生や転生のメタファーとして使用されることもあるだそうです。
この言葉の意味を知っているかいないかで、かなり作品の捉え方が変わるかもしれません。

コメディなのか?サスペンスなのか?

宇宙人の地球侵略を危惧するテディ(ジェシー・プレモンス)と従弟のドン。調査の結果、大企業のカリスマCEOであるミシェル(エマ・ストーン)が宇宙人であると断定。地球侵略をやめさせようとミシェルを誘拐し交渉するが・・・。
普通に考えたらコメディですよね。テディもドンも陰謀論にハマったヤバイやつら。ミシェルは思い込みに巻き込まれた被害者。
噛み合わない会話で笑わせたり、ハラハラドキドキの脱出劇になるのか?なんて思って観ているとどうも様子が変
ミシェルがいわゆる『巻き込まれ型ヒロイン』の定型からずれている。普通は捕まった時点で泣き喚いたりしそうなものだけれど、どこか冷静にテディとドンを懐柔しようとする姿を見せる。
あれ?これは一筋縄ではいかないぞ、とこの時点で感じる。
ヨルゴス節である『マウントの取り合い会話劇』の幕開け。
そして次第に「ミシェルって本当に宇宙人なのでは?」という疑念が湧いてくる。
この映画が巧みなのはその疑念の否定と肯定を交互に繰り出してくるのだ。非常にタチが悪い。ヨルゴスらしさ、ヨルゴス味が満喫できる。

真実はひとつである(ネタバレするよ!)

ミシェルが宇宙人であることはテディたちからすれば最初からわかっている事実。彼らなりに調査しミシェルが宇宙人であると判明したから誘拐したのだ。そしてミシェルは当事者であるから勿論真実を知っている。
疑っているのは観客である我々だけ。我々だけが日々受け取っている情報により真実を捉えられないでいる。
つまり『宇宙人なんていない』や『陰謀論なんて眉唾だ』という情報により、操作されていることがわかる。
本作があえてギャグになりかねない『実は本当に宇宙人でした』を曖昧にぼやかさずハッキリと提示したのは、真実はひとつであると明言する必要性があったからだと思う。
あのシーンを観て笑ってしまう観客も多いと思う。ただ私はとてつもない恐怖を感じた。
なんて意地の悪い恐怖演出なんだろう、と。
それこそ数年前だったらギャグになっていたかもしれない。でも、現実で起きていること、陰謀論を陰謀論とバカにできないような状況。陰謀論=洗脳、しかしそれすらも洗脳である可能性。
考えれば考えるほど恐ろしい。それこそ鑑賞後は連日悪夢を見るほど怯えている。
これとんでもないホラー映画じゃないか!

藤子F先生的SF展開

『全人類の死』という衝撃的なラスト。
人間は何度もテストに失敗し『不要』の烙印を押された。この全宇宙的視点、地球誕生の謎、人類史について日本人の私は藤子F先生的なSF展開を想起しました。
ここで『ブゴニア』のタイトルを思い出します。
死と再生。
エンドロール、曲(人間の文明)が終わったあとは鳥のさえずりのみ。これが延々と流れます。そこに不穏さはなく、人類滅亡後も他の生物は生きていることを感じさせます。
そこに轟く雷鳴
一気に不穏さが影を落としますが、私は逆に安堵しました。雷に人間の可能性を見出しました。何かが始まる、もう一度人類が生まれるのではないかという淡い希望
どん底の気分で映画館を後にする覚悟はできていましたが、少しだけ希望を持つことができました。
最後の一瞬まで映画をコントロールするというのはこういうことだと思います。

『ブゴニア』の意味とCCD(蜂群崩壊症候群)

劇中に何度も出てくるCCD(蜂群崩壊症候群)。これはあとで調べましたが「働き蜂が突然大量に失踪し、巣箱に女王蜂と幼虫だけが残される謎の現象」のこと。
これを本作に置き換えると、ミシェルの経営する大企業とテディ&母親の暗喩に思えてきます。
母親を治験者として扱ってきた企業(働き蜂)が突然支援を打ち切ったら、母親(女王蜂)とテディ(幼虫)はどうなるのか?
これもまた宇宙人による実験のひとつだったのかもしれません。
そして『ブゴニア』の意味
私の解釈としては「生命はどこから来るのか?」という問いのように感じました。つまり『人間はどこから来たのか?』という根源的な問いです。
この本作が描いたように宇宙人が人類の祖先なのか、それとも雷のような自然から発生したものなのか。
鑑賞後はそんなことを頭の中でずっと考えているような状態が続いていて、気が狂いそうです。

狂っているけど『まとも』な映画

正直、かなり狂っている映画だと思います。
それこそヨルゴス・ランティモス×アリ・アスターという変態監督のコンビだからこそできたと言って良いでしょう。
でも、伝えようとしているメッセージが『まとも』なのも怖いんですよね。
去年のP.T.アンダーソン『ワン・バトル・アフター・アナザー』、アリ・アスター『エディントンへようこそ』、そして本作『ブゴニア』。
変態映画監督がこぞって『まとも』なメッセージを込めた映画を連続で作っている。その事実が現代社会のヤバさを表しているようで一番の恐怖です。
変態監督が変態映画を作れる社会を!

映画って受け取り方次第でコメディにもホラーにもなる。本当に面白いです!

From AleJJandro Hiderowsky


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