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17年目のダイアリー

新しい職場に、慣れてきたところです。
職場の駐車場が遠くなったため、就職当初より家を出る時間が15分早くなりました。

車を留めて、施設まで10分ほど歩くだけのことですが、だんだん暑くなってきますと、「なんで?なんで?」と不満と汗がタラタラです。往復20分のウォーキングとか「暑熱順化」とやら、健康に有効かもしれないと、自分に言い聞かせていましたが・・・

やはり無理な納得は、身体にも心にも不調をきたすらしいと助言をもらい、しかるべきところへ相談してみることにしました。
まだ、答えはきていませんが。


でもね、人生って、面白いものですね。

国道沿いを歩くことが最短ルートなのですが、車が多いため一本中の人通りの少ない道を歩くようになりました。

ある一軒の家の前を通って、思い出したのです。
その家は、かつての職場で仲良くなった友人の実家だと。

その友人と出会ったのは17年前、介護の職場でした。同い年の私たちは、奇しくも同じ時期に離婚を経験し、人生の再出発を迎えていました。

違うと言えば、彼女は東京から実家のあるこの地へ帰ってきていて、私は故郷を離れ、次男の住むこの地を選んで来ていたこと。

大人になってからできた大切な友人でした。少し先に勤め始めていた彼女に、色々、仕事以外でも教えてもらうことが沢山ありました。

その職場を離れて10年になり、それから数回転職をしています。少しずつ連絡することが疎遠になっており、寂しさを抱えたまま時間は過ぎていました。

彼女の実家を意識するようになって、
「新しい職場がこんなに近くなら、いつかバッタリ会えるかもしれない」
そんな淡い期待を抱いていたのは、ほんの数日前のこと。
その「いつか」は、私の心の準備を追い越して、思いがけず早くやってきました。

突然の再会に、私の胸は一瞬で様々な感情にみたされました。
離れていた時間の中で、お互いの歩んできた道は違いすぎます。彼女の眩しいキャリアや変化を目の当たりにして、今の自分と比べてしまうような、ちっぽけな気恥ずかしさが胸をかすめたのは事実でした。

けれど、そんな陳腐なためらいは一吹きで消えました。

なにしろ、互いに生活のすべてをかけて、必死に現場を走り回る日々の想い出、そんな私たちの絆を決定づけた、過酷な夜がありました。

介護士として働くようになって、半年。

施設から高齢女性の姿が見えなくなり、その夜、その現場にいた職員は生きた心地がしませんでした。既に帰宅していた職員も呼び戻され、みなで一斉捜索がおこなわれました。日付が変わる寸前、ようやくその人が見つかって、あの底知れぬ安堵感。冷や汗なのか涙なのか・・・苦難と喜びが混ざり合うような表情を一番近くで見ていたのは、私と彼女でした。

その時、誰からも叱責されることはなかったのです。私も含めて職員は自ら猛省し、あんな辛い想いは二度としたくない、とそれぞれ心に誓ったのだと思います。

施設長や上司も、職員の泥だらけの姿や必死な表情を見て、「これ以上責める必要はない」「誰よりもその場の職員たちが一番苦しみ、反省している」と瞬時に理解してくれたようでした。

時間が経っても、その時のことを悪く言う人はいませんでした。

そんなことがあったため「同僚」を超えた感情が生まれた彼女との関係は、特別でした。生活にも余裕がでてきたころ、ドライブやコンサートへ行くようになって、大人になってできた友だちも、いいものだと知りました。

そして、一緒に行った沖縄旅行。見上げる青い空と蒼い海、あざやかな首里城は、頑張ったご褒美でしたが、私にとって沖縄旅行は伯父の供養でもありました。長年の胸のつかえが下り、本当に行って良かったと思います。

それから数年後、首里城が火災に遭ったというニュース、胸を締め付けれると同時に、激しい衝撃が走りました、形あるものは、ある日突然、失われてしまうことに。

その火災を報道を知った時、すぐ彼女に連絡をすればよかったのですが…。

娘の出産で一時、介護の仕事を離れ、また復職したのは別の場所、それから体調を崩して、彼女と会えない時間が流れていましたが、その後もいつでも会えると思い、連絡をしないまま時が過ぎていました。

彼女はケアマネージャーや社会福祉士の資格も取得し、着実にキャリアを積んでいました。私は足元にも及びませんが、また彼女の背中を追って、頑張りたいと、再会できたことで前向きになれました。

お互いの再出発から17年目のダイアリー
まだ、続きは真っ白ですが、次のページには新しい私の一歩を書き加えてみようと・・・。

本当は、電話一本で会える友人でしたが、なかなか自分からできなくなっていて、埋まらなかった距離だったのです。お互い遠慮していたのかな・・・。

でも!
駐車場が遠くなったおかげで、出逢えたのですから、何があるか、わからないものですね。

失われないものを、想い出すことができました。


寝子


最後までお読みいただき、
    ありがとうございました😻