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オーダースーツ屋さんに行ったら、顧客体験と価格について考えさせられた話

先日、思い立ってオーダースーツ屋さんに行ったんです。私、背が低いのに厚みがあるもんだから、肩幅に合わせると前が閉まらないし、厚みに合わせるとダボダボになる。最近は大きめジャケットが流行ってて、ジャケットだけなら、前閉まらない問題はクリアしてるんだけど、背が低いのでどうしても丈が長い・・・。

最近の大きめジャケットブームが過ぎ去ったら、ジャストサイズジャケットを前開けて着るか、とも思ってたんだけど、大きめジャケットブームは継続したまま、こんどはクロップド丈なんて極端に短いオシャレジャケットが出てきて・・・いつまでもジャストサイズジャケットの時代は戻って来なさそう。そんなこんなで、もうしびれを切らして、オーダーしちゃえ、と。

オーダースーツっていうと、昭和生まれの私のイメージだと、ん十万もするお高いものを想像するけど、最近はお安いパターンオーダーのお店が増えて、よくSNSのタイムラインに広告も出てたので、ちょっと気になってたんです。

長くなるのでオチを先に言っちゃうと、2つのお店に行って、割高だけど気持ちよく買い物できるほうのお店で気持ちのいい買い物ができたんで、そういう商売を私もしたいなって思ったおはなしです。


候補は2つあった

いくつかネット検索して、私の住む近くのターミナル駅にオーダースーツ屋さんが2つあることを確認。1つは、安さが売りのA店。もう1つは、大手紳士服屋さんがブランド展開している、手頃な価格でちょっとオシャレ風のB店。

A店の古めかしいHPにちょっと不安をおぼえたものの、以前にA店の丸の内店の前を通ったときに飾られていた女性用スーツが美しかったので、A店に予約を入れることに。

A店に行ってみた

A店は、駅からちょっと離れた雑居ビルの2階に入ってて。入ったら、なんていうか・・・田舎の制服屋さんみたいなかんじ?生地がスチール棚に積んであって、簡易な試着ブースが2つドンドンっと狭いスペースに置かれてました。

まずは生地選びから

私が入店すると、出てきたオジサマが

「あ、ご予約の・・・」

と歓迎するでも無く軽く会釈して、

「ご予算とかご希望のお色とかは?」

といきなり本題。えーと。私、スーツをオーダーするのも初めてでして・・・お宅に訪問するのも初めてでして・・・ちょっと戸惑う。話が早いのはいいけども。ただ、色はグレーと決めてたので、
「色は、グレーがいいなと思ってて・・・」
とお返事したら、

「あ、でしたら、ここらへんがお安いです。ちょっとお高いのだとこれとー、あとこれ!」

とパパッと生地を3つ提示されました。
なんか、生地見本みたいなのから選べるのかなーとイメージしてたので、たった3つから選ぶのか、とちょっとガッカリ。お安い生地はたしかにお安い感じだったので、あとは2択。うーん・・・と迷ってるあいだ、オジサマ無言。生地の特徴説明も、選び方のアドバイスもなし。仕方が無いので自分で「ちょっと(身体に)あててみてもいいですか?」
と尋ねて、2つの生地を肩からあてさせてもらった。すると片方が少し明るくベージュがかってて、片方は他方と比べると暗く少し青みがかってることがわかった。明るさは前者が好みだが、色は後者が好み。困ったけど、困った気持ちをオジサマに共有する気も起きず、なんとなく後者に決めた。

「こっちですね。ではこちらにお座りくださーい」

促されて事務机に座った。
・・・まさに、制服注文のかんじ。ご経験者ならわかるであろう、流れ作業でぱっぱと決めていくあのかんじ。制服の場合はもちろん、あれでありがたい。選択肢もそんなあるもんじゃないし。

そして仕様を決めていく

今度は担当者が若い女性に変わった。注文票みたいなのを取り出して、

「お仕上がり、○月○日です。まず、襟の形を選んでください。上がってるのと下がってるの。」

「・・・え、どう違います・・・?」

「うーん、そんな違わないですよ。」

「サンプルとかあります?」

「うーん。ちょっとまってくださいね。」

といって、バックヤードからご本人の私物を持ってきてくれたw
「あ、下がってるので。」

「はい。じゃあ、ポケット。まっすぐと斜めのと。」

「・・・え、どう違います・・・?」

「うーん、そんな違わないですよ。」

・・・。

「うーん。斜めの方が、細く見える、とは言われてますけどね。」

・・・違うんじゃん!
「じゃあ、斜めで。」

「袖のボタンは、いくつにしますか?重ねるのもできますけど。」

「・・・え、どう違います・・・?」

「うーん、そんな違わないですよ。」

・・・。
この、
「・・・え、どう違います・・・?」
「うーん、そんな違わないですよ。」
をあと5,6ターン繰り返して、一通り仕様が決まりました。

びみょーな気持ちで採寸へ

続いて採寸。
着衣で肩幅やウエストを測ってもらって、いくつかサンプルを持ってきてもらって試着。近しいサイズから微調整を入れていくという流れらしい。

まずはスカート。
持ってきてもらったものを履いてみたら、膝下4センチぐらいだっただろうか。ふくらはぎの一番太いところで止まっている。

背が低く、脚が細くなく、そして中年という私の条件で、スーツのスカート丈とはどうあるべきなんだろうか。私は来店前から、そこはとても心配していたんです。長らく、ロングスカートしかはいてない。本当に、わからない。頼むから、なんかアドバイスしてくれ・・・!と思いながら試着室をオープン。

「あ、2センチぐらい上げますね」

・・・!なんと!上げるんですか!まじですか!私の驚きをよそに、おねえさんが淡々とスカート丈をゼムクリップで2センチ上げる。サンプルがネイビーなもんだから、中年のリクルートスーツ仮装みたいに見える。
「これは、上げた方がいいものなんですね・・・?私、ちょっと落ち着かないというか・・・むしろ下げるかんじかと思ってたので・・・」
と戸惑いをお姉さんに伝えると

「うーん。そっちでも、できますよ」

・・・そりゃ、できるにはできるでしょうよ。そういうこと聞いてるんじゃない。聞き方を何回か変えてみたけど、結局、どっちでもいいという答えしか無いので、諦めて、1センチ上げる、で落ち着いた。

「じゃ、次ジャケット持ってきます」

お姉さんが持ってきてくれたジャケットは大きかったけど、ウエストをガバッと詰めてくれて、なんかいい形になった。お姉さんも私と同じぽっちゃりさんだったので、きっと気持ちがわかるのだろう。問題は袖丈。お姉さんはガバッと大きく詰めて、手首が見えるぐらいになった。
「え!こんなに短いもんなんですか。なんか昔は手にかかるぐらいの丈を推奨されてたような・・・」

「うーん。そっちでも、できますよ」

・・・そりゃ、できるにはできるでしょうよ。そういうこと聞いてるんじゃない。何度か問答して、お姉さんの最初の詰め方よりは少し長さを出してもらいました。正解かどうかの確信はないまま。

「はい、じゃあこれで採寸終わりです」

そしてクロージング

試着室で着替えながら、考えた。
なんかここまで決めたのに、買わないっていうのも、言いにくいなぁ。でも、安いっていったって数千円の買い物じゃないしなぁ。でも、パターンオーダーのお店なんてどこもこんなもんなのかなぁ。・・・でもあんまり気持ちよくなかったし、明日まで決めるの待ってってことにして落ち着いて考えよう!
心を決めて試着室から出た。

お姉さんが先ほどのデスクに座って目も合わせずに

「引き取りは、配送ですか、来店ですか。」

「来店で。」

「他に気になることは」

「総額はいくらになりますか?」

電卓をパチパチ叩いて
「6万○○○円・・・だいたい7万ですね」

(やっぱり、この生地でオーダーって考えると、めちゃくちゃ安い。この接客も納得といえば納得か。)
「あのー、注文決めるの、明日まで待ってもらってもいいですか。」

「ああ、それはいいですよ!」

とってもきもちのいいお返事。

「1週間はこの情報、持ってますので。注文される場合は1週間以内にご連絡ください。電話番号は・・・調べりゃわかりますよね。

wwww
気持ちよく、退店してきましたw

やっぱりB店も見てみようかな・・・

度肝を抜かれた、初めてのオーダースーツ屋さんAを出て、駅に向かいながら「やっぱりB店も見てみようかな・・・」
と思い始めていました。とはいえ、オーダースーツ屋さんは基本的には予約制。
「また予約から始めるのも面倒だしー、面白くなかったしー、なんかもう疲れちゃったから、スーツなんて買わなくてもいいかな。」
なんていう投げやりな気持ちにもなったり。

しかしB店は、駅ビルの中にあるので、お店の前までは行ける。店頭に飾ってるサンプルとかは見られるハズだから、前を通るだけ通ってみよう。
そう考えて、B店に向かいました。

そういうことか・・・

キラキラした駅ビルのエスカレーターを3フロアほど上り、B店に到着。中では、紳士が店員さんと楽しげに生地選びをしている様子。A店とだいぶ違う・・・!

お店の外側に、生地見本がいくつか置いてあったので、グレーの生地を探してみる。おおーーー、A店と比べると、選択肢も多いけど、価格が1.5倍。生地だけのクオリティでいうと、そこまで違わないようにも見える。ううむ。そういうことか。

接客イマイチ、仕上がりもよくわかんないけど、比較的良い生地が割安で買えるのがA店なわけだ。つまり、スーツのことがわかってて、ちゃんと自分でピシっピシッと「ここはこう!」「膝下○センチ!」って言える玄人向けだ。私のような、「スーツってなんだっけ・・・?」みたいなヤツは、A店ではダメなんだな。B店は、ちょっと価格がお高い分(とはいえ、オーダーと思ったら決して高級店ではない)、きっとアドバイスもしてくれるんじゃないだろうか。

華麗に店内に導かれる

「・・・けど、私スーツに、そんなにお金かけるんだっけ?ホントにスーツ要るんだったけ?」
と、冷静になりかけたそのとき、店の外で生地見本を手にぼーっと立っている私に、60歳ぐらいの男性店員さんがやさしく

「オーダーをお考えですか?」

と声をかけてくれた。
「あっ、はい・・・ちょっと考えてます」

「お色とかは?」

「グレーで作りたいなって。」

「そしたら、このあたりとか、このあたりとか人気ですね。」

「そうなんですねー(あーでも私のお財布にはお高いような、どうしたもんかなー)」

「店内にもう少し、見本がありますよ。お時間あったら見て行かれませんか?」

「え、いいんですか?」

「いま、ちょうど空いてるんですよ。」

結局、B店に。

なんてスマートなお誘い・・・。するすると店内に誘われていく。
落ち着いたブラウン基調の店内にかっこよく並べられた生地と生地見本たち。おしゃれなデザイン事務所のような大きなガラステーブルに案内され、ところ狭しと生地見本が並べられる。

「色別じゃなくて、値段別の束なんで見にくいかもしれませんが、どうぞご自由にご覧になってください」

と、つかず離れずの場所でそっと控えていてくれる、さきほどのオジサマ。
ぜーーーんぶの見本を見て、気になるグレー生地をピックアップして、話しかける。
「あのー、この生地って、結構、厚いですかね。春は無理ですかね」

「そうですね、この生地は、『冬!』ですね。ふわっとした感じに仕上がります。風合いのあるかんじに仕上がるので、人気ですけどね。春も着たいとなったら、こっちかこっちですね。この生地は・・・」

と生地の特徴なんかも流れるように話してくれる。
「じゃあ、この生地で、考えたいです!採寸とか・・・お願いできますか?(予約もしてないけど💦)」

「お時間は大丈夫ですか?」

「はい!(お!いけるのか!)」

「ではちょっとお待ちくださいね。担当変わりますので。」

担当の店員さん登場

しばらくして登場したのは、今度は、、、私と同年代かちょっと上かなあ、というかんじの男性店員さん。お。男性に採寸されるのか・・・そうか・・・ちょっとびっくりしたけどまあ、そんなもんか。

「あかねさま、こちらへどうぞ。あかねさまはとってもスタイルがいいですね!!」

・・・下の名前で呼ぶわ、いきなり体型に触れるわ、ちょっと大丈夫か?と思ったんだけど、店員さんは自信ありげにニコニコしてる。(ちなみに、どっからどうみても、スタイルはよくない。お世辞にしても無理がある。)そこまで自信ありげにニコニコされると、「そもそも採寸という、体型を見てもらう行為をお願いしてるのに、そんなことでウッとなるこっちがおかしいのか?」という気にもなってくる。

彼は続けて言った。

「あかねさま、素敵すぎるから、既製品ではサイズが合わないでしょう。」

なるほど。それが言いたかったのか。体型がわかりやすい服を着ているわけでもなかったのに、一目見てそれをわかるというのは、やはりこのひと、信じてみてもいいのかも知れない・・・。

素早い採寸と試着

「では、鏡の方を向いて立ってください」

褒めちぎられてる間に、不快感をおぼえる間もなくさっさと採寸を終える店員さん。

「それでは、いまからスカートをお持ちします。2タイプあります。選んでください。」

タイトと台形を持ってきてくれた。これはもう、タイト1択。

「ですよね!よかった。ではサイズを2サイズ持ってきます。両方着てみてください」

持ってきてもらったうちの1着を着る。きつくも無く、コレで何の問題も無いんじゃない?というかんじ。

「あかねさま~お着替えできましたでしょうか~?いま、着てますか?開けて大丈夫ですか?」

しつこいほど確認する店員さんw
試着した姿をぱっと見て

「どっちを履かれてますか?手前に掛けた方ですか?なるほど。座ってみると、たぶんこれだとキツイと思います。どうぞ、そこにおかけになってみてください。」

えー?キツイ?そんなわけ・・・と思いながら、座ってみたら、目の前の鏡に、タイトスカートが腹にぴっちり食い込んだ醜い姿が!
「ですよね。では、もう一方を履いてみてください。」
おとなしくもう片方を着てみる。

「あかねさま~お着替えできましたでしょうか~?いま、着てますか?開けて大丈夫ですか?」

またしつこいほど確認する店員さんw

「あ、こちらは大丈夫だと思います。座ってみてください。ね、いいですね!」
「では立ってください。丈は、○センチ詰めたいと思います。で、下に向かって窄まってる形がいいとおもうんです!幅をちょっと詰めます。いいですか?」

流れるように決めてくれる。それも、押しつけがましくないけど、強く提案してくれて心地いい。

続いてジャケットも、袖の長さ、丈の長さ・・・A店で私がわからなくて困ったところを、スパンスパンと決めてくれる。あっという間に、採寸が終わった。

楽しい仕様検討

「続いて仕様を決めていきましょう。」

またさっきの大きなガラステーブルに案内された。目の前には、たくさんのボタンが入った、木の箱が。
・・・たのしい・・・!!!

ボタンの種類の説明、見え方の違い、個数の違い・・・ぜんぶ聞きたいことを説明してくれる(忘れちゃったけど)。そして、種類が多すぎて選べずにいると、おすすめをピックアップしてくれる。そうなるとやっぱり、ついつい、オプションでかわいいボタンを選んでしまう。

そしてクロージング

そんな調子で、裏地、ステッチ・・・と決めて、総額。
11万○○○円。
うん、いろいろやった割に、安いのは認める。ウール100だし。既成のジャケットとスカート別々に買っても、ジャケット5万、スカート3万とかで上下で8万ぐらいは別にびっくりする金額でもないわけで、なんだかんだ、使ってるわけだから・・・いやでも、さっきわたし、7万で「うーん、買っていいのかな?」って考えてたよね?と、忙しく脳内会議。

「うーん。10万超えると、ちょっと考えちゃいますねぇー。でもー、ボタンも捨てがたいしー、裏地のオプション諦めても数千円しか下がらないし~ねぇ?」
と店員さんの顔を見たら

「うーん、そうですねぇーーーー」
と苦笑。

「ですよねぇーーー」
と脳内会議再開しようとしたら

「あかねさま・・・もーぉ、かないませんねぇーw はいっ、これでどうでしょう!」

と作り苦笑で、「特別お値引き ー1万○○○円 合計9万9千・・・円」となったipadの画面を見せてきた。

「あかねさま、ぜーったい、オーダーはじめてじゃないでしょー、うまいなぁ、もぉーーー」

そうなのか、、この、車屋さんみたいなオヤクソクのお値引きの下りも、このお店にはあるのか!

わたし、そういうの嫌いじゃないw
別にほんとにトクしたわけじゃないのわかってても、形式美っていうんでしょうかね。
「わ!ありがとうございます✨ じゃあこれで!!」
気持ちよくカードを出してました。

なんか、懐かしい気持ちがした

結局、7万で済むはずが、10万使って、一日を終えた。別に、特別な日のためのスーツってわけでもなく、仕事着。別に、A店でオーダーしても、ひとからみて3万円分の違いなんてわかんないんじゃないかな。なんなら、生地そのものは、A店のほうが良いモノだったかもしれない。

けど、私はA店ではカードを取り出せず、B店ではニコニコでカードを出した。

こんな楽しいお買い物って、すごく久しぶりだったかも。どうして久しぶりなんだろう?

最近は、何でもネットでポチれるし、店員さんとのコミュニケーションも面倒で避けがちで(店員さんも避けられることを織り込み済みであまり話しかけてこないし)、お買い物にコミュニケーションがなくなってるんだよね。

思い返してみれば、若い頃はよく、店員さんとキャアキャアいいながら、あっちがいいか、こっちがいいか、楽しく選んでたなぁ。今も、楽しくないことは無いんだけど、あの盛り上がり、ついつい乗せられて買っちゃう、みたいなことはない。

それはそれで、すごくスムーズでいいし、望んでいたことだったはずなんだけど、久しぶりに、うまーーーく乗せられて「ついつい」買っちゃうという体験をしてみたら、すごくいい体験だった。

私にとっては、あの店員さんたちの1時間ちょっとの接客が、3万円以上の価値があったってことになるよね。なんか、そういうのっていいな・・・。深い知識と高い接客技術と、オヤクソクの伝統芸能と!

私もそんな仕事がしたいな、と思った話でした。

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