「補助金の話」と思って読み飛ばさないで。空き家対策モデル事業が、あなたの業界を変えるかもしれない理由。
今日は、国土交通省が発表した「令和8年度 空き家対策モデル事業」の募集について書いてみたいと思います。
「また補助金の話か…」と思った方、今回の募集内容を読んでいくと、特に空き家ビジネスに興味がある方、あるいはすでに何らかの形で空き家に関わっている事業者の方には、読んでおいて損はない話だと思っています。
そして実は、ぼくたち空き家管理士協会も、以前このモデル事業に採択された経験があります。
だからこそ、「制度の話」だけじゃなく、応募する側の現実感も含めて書けると思っています。
少し長くなりますが、よかったらお付き合いください。
まず、何が起きているのかをざっくり整理。
国土交通省が、今年度の「空き家対策モデル事業」の提案募集を開始しました。
締め切りは令和8年5月20日(水)の正午、採択は7月上旬の予定です。
この事業、一言でいうと「民間が考えた空き家対策のアイデアに、国がお金を出しますよ」という仕組みです。
改修や除却(建物を壊すこと)の工事費だけでなく、事業の仕組みづくりや調査にかかるソフト面の費用も対象になっています。
公募されているテーマは5つあって、並べるとこんな感じです。
テーマ1 官民が一緒になって相談対応を充実させる
テーマ2 空き家に関する新しいビジネスモデルをつくる
テーマ3 新しいライフスタイルや居住ニーズに合った空き家の使い方を考える
テーマ4 AIやデジタルなど新技術を使って空き家対策のインフラを整備する
テーマ5 相続による空き家の急増を見据えて、地域の住宅地をどう再編するか試してみる
「民間事業者、NPO、地方公共団体等」が対象、とあるので、幅は広いです。
「よくある補助金の話」という感覚もありますが。
正直、こういった国の事業の告知を見るたびに「また同じような話だな」と感じる方も多いと思います。
補助金の公募って、要件が複雑だったり、採択されるのが大きな法人や自治体ばかりだったり、書類準備が大変すぎて中小の事業者には現実的じゃなかったり…そういった印象を持っている方も少なくないはずです。
その感覚は間違っていないと思います。
確かに書類関係の手間はかかります。
そういう理由もあり実際、手を挙げたくても「うちには無理だろう」と最初から諦めているケースは現場でもよく見ます。
ただ、ぼくたち空き家管理士協会も以前このモデル事業に採択されているので、「大きな組織じゃないと無理」とは一概に言えないと感じています。
アイデアと事業の筋道がしっかりしていれば、規模が小さくても十分に勝負できる公募だとぼくは思っています。
とはいえ、今回は少し読み方を変えたほうがいいかもしれません
ぼくが今回注目しているのは、「補助金を取れるかどうか」という話だけじゃないんです。
5つのテーマを並べると、国がいま「空き家の何を解決したいのか」「どんな民間のアイデアを求めているのか」が、かなり透けて見えてくるんです。
たとえばテーマ2は「新たなビジネスモデルの構築」と明記されています。これ、かなり直接的な表現ですよね。
国が「ビジネスとして成立する空き家の使い方を一緒につくりたい」とはっきり言っている。
テーマ4のAI・デジタルの活用も、インフラ整備という文脈で語られているのが興味深いです。
単なる業務効率化ではなく、空き家情報の把握・管理・マッチングといった仕組みそのものをデジタルで再設計しようとしているように読めます。
テーマ5の「相続空き家の急増を見据えた…」というのも、かなり先を見た言葉です。今後10年、相続によって発生する空き家は確実に増えます。そこに先回りして手を打ちたい、というメッセージだと思います。
「誰に関係ある話か」を整理してみます
「空き家対策」と聞くと、不動産会社や自治体の話だと思われがちです。
でも今回のテーマをよく見ると、もっと幅広い業種の方に関係してくる内容だなと感じています。
たとえば、こんな方々です。
不動産・リフォーム・建設系の事業者の方は、ハード事業(改修・除却)の支援が直接使えます。ただ、それ以上に「自分たちの事業スキームをモデル事業として提案する」という可能性があります。すでにやっていることを整理して提案できれば、資金と実績を同時に得られる。
士業(弁護士・司法書士・行政書士など)の方は、特にテーマ1やテーマ5が関係します。相続絡みの空き家は、法律的な整理が必要なケースが多く、相談対応の充実という文脈で専門家の関与をスキーム化できる可能性があります。
介護・福祉・地域支援系の事業者の方には、テーマ3が響くかもしれません。高齢者の住み替え支援や、空き家を活用した地域の居場所づくりといった文脈で、新しい事業の形が生まれやすい領域です。
ITスタートアップ・テック系の方には、テーマ4が明確に向いています。空き家の情報整備やAIを使った活用提案など、デジタルの力で空き家対策のインフラをつくるアイデアが求められています。
地域金融(信金・地銀など)の方も、テーマ2やテーマ5の文脈では無関係ではありません。地域の空き家問題と地域経済の再生を結びつける視点を持っているのは、金融機関ならではだと思います。
自分の業界の話ではないと思っていた方も、少し角度を変えると「これ、うちも関係あるかもしれない」という部分が見えてくるはずです。
所有者目線でいうと、何が変わるのか
少し視点を変えて、空き家の所有者の方の話もしておきたいと思います。
空き家を持っているのに動けない。
そういう方、本当に多いんです。
理由はいろいろあって、「どこに相談していいかわからない」「費用がどのくらいかかるかが見えない」「親の家だから、なんとなく手放しにくい」「いつかは使うかもしれないと思っている」…そういった複雑な気持ちが絡まって、結果として先送りが続く。
これ、責められない話なんですよね。
感情と現実と情報不足がぐちゃぐちゃに混ざっている状態で、一人で答えを出すのは難しいんです。
今回のモデル事業、テーマ1で「相談対応の充実」が掲げられているのは、その現実をちゃんと見ているからだと思います。
「相談窓口を増やす」ではなく、「官民が連携した相談の仕組みをモデルとしてつくる」という発想です。
事業者の方が相談対応のスキームをつくり、それがモデル事業として採択されれば、所有者にとっても動きやすい環境が整っていく。
その波及効果は、決して小さくないと思います。
リスクなのかチャンスなのか
正直にいうと、ぼくはこれをチャンスとして読んでいます。
国が「民間のアイデアで空き家問題を解決したい」と言い始めているのは、行政だけでは限界があるということの裏返しでもあります。
逆にいえば、民間が工夫すれば入り込める余地が大きいということです。
特に「ビジネスモデルの構築」「新技術の活用」「相続急増への対応」という3つのテーマは、今後の空き家市場のど真ん中にある話です。
ここに早めに動いた事業者は、採択されてもされなくても、市場でのポジションをつくるうえで有利になると思います。
一方でリスクがあるとすれば、「採択されることを目的にしすぎる」ことです。
補助金ありきで組み立てたビジネスモデルは、補助が切れたときに立ちいかなくなりやすい。
あくまで事業の本質を先に考えて、その上で活用できるものを使うという順番が大切だと思っています。
これは、ぼくたち自身が採択された経験から感じていることでもあります。
今のうちにやっておきたいこと
応募を考えているかどうかにかかわらず、今のうちにやっておくといいことをいくつか書いておきます。
まず、5つのテーマを自社の事業に当てはめて読んでみること。
「これ、うちがやっていることと近いな」と感じるテーマがあれば、それは参入余地があるというシグナルです。
次に、連携できる相手を考えておくこと。
モデル事業は一社だけで完結するよりも、異業種の組み合わせで提案するほうが採択されやすい傾向があります。あの会社と組んだら面白い提案ができるかも、という相手が思い浮かぶかどうか、少し考えてみてください。
空き家管理士協会も広く門戸を広げてお待ちしてます(笑)
もし応募を検討する場合は、締め切りが5月20日なので、今すぐ動き始めないと間に合いません。
国土交通省の公式サイトで詳細が確認できますので、まず一次情報を読んでみることをおすすめします。
応募しない場合でも、このテーマ設定を「市場の地図」として読む価値はあります。
国がどこに課題を感じていて、どんな解決策に期待しているかが見えると、これからの自分たちの事業の方向性を考えるヒントになります。
というわけで、今日は「令和8年度 空き家対策モデル事業」について、単なる制度紹介を超えて、現場感や事業機会の視点から読み解いてみました。
ぼくたち空き家管理士協会も採択経験があるからこそ、「難しそう」で終わらせてほしくないという気持ちがあります。
アイデアと熱量と、少しの準備があれば、規模に関係なく挑戦できる公募だとぼくは思っています。
「うちには関係ない」と思っていた方に、少し別の角度が見えていたら嬉しいです。
空き家の問題は、不動産だけの話ではなく、地域と、暮らしと、ビジネスが交差するテーマです。
どこかに自分ごととして引っかかるポイントがあれば、それを手がかりに一歩動いてみてください。
ぼくも引き続き、現場から見えることを書いていきたいと思います。
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