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空き家活用の前に必要な「空き家整理」これからは空き家にも「トリアージ」が必要になる

今日、空き家巡回をしながら話していた中で、「空き家活用ももう一回りしたよね…」って会話がありました。
あらゆる空き家活用が注目されまた、下火になったり…。
これから、団塊の世代の住んでいる家が空き家になってくるとなると、言葉は悪いですが供給過多になるともいえるんです。

ここで突然ですが、「空き家をどうにかしたい」と思ったとき、最初に頭に浮かぶのって何でしょうか?

リノベーションして賃貸に出す、民泊にする、シェアハウスにする…活用の話がどうしても先に来がちですよね。
ぼくも以前はそういう相談に、「こんな活用方法がありますよ」と答えていた時期がありましたし、今もそうです。

でも最近、少し考え方が変わってきています。

今日書きたいのは、「空き家は、活用より前に、まず整理が必要だ」という話です。
整理といっても、片付けのことだけじゃありません。
もっと広い意味での「整理」の話です。

空き家は、いきなり活用できるわけではない

空き家の活用事例は、ここ数年でずいぶん増えました。
古民家をリノベして移住者向けの賃貸にした、廃校になった校舎をコワーキングスペースにした、といったニュースをよく目にします。

「なるほど、うちの空き家もそうできるかも」と思う気持ちよくわかります。

ただ、現場でよく見る現実を正直に言うと、活用の前段階でつまずいているケースがとにかく多い。

たとえば、家の中に大量の家財道具が残っていて、誰も片付ける判断をしていない。
遺産相続が終わっていない、または兄弟間で合意が取れていない。
建物の傷みがどの程度なのかを誰も把握していない。
そもそも、その土地に需要があるのかどうかを誰も調べていない。

こういった状態のまま「活用しましょう」と言っても、話は全然前に進みません。
むしろ、活用の話を先にしてしまうことで、かえって所有者の方が混乱するケースもあります。
「賃貸にしたい気持ちはあるけど、まず何からやればいいかわからない」という状態で止まってしまうんですよね。

これから空き家は、いきなり活用できるものではない。そう思います。

これから増えるのは「判断できない空き家」

2033年問題、という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。
ざっくりいうと、日本の住宅の約3分の1が空き家になるかもしれないと言われている話です。

数が増えること自体は、ある意味では想定の範囲内です。
ぼくが気になっているのは、そのなかに「判断できない空き家」がどんどん増えていくことです。

判断できない、というのはどういう状態かというと、処分したい気持ちはある、でも権利関係が複雑でなかなか動けない、家族の思い出があるから解体に踏み切れない、業者に相談したけど何社もバラバラなことを言うからどれが正解かわからない、といった状態のことです。

つまり、意思決定が止まっている空き家です。

こういった空き家は、今後の相続の多様化や家族構成の変化によって、ますます増えていくと思っています。
空き家が増えること自体より、判断がされないまま放置される空き家が増えることのほうが、ぼくには気になります。
問題なのは空き家の数じゃなくて、放置されること。そこはずっと変わらない考えです。

空き家整理とは、片付けではなくトリアージである

ここで、あえて「空き家整理」という言葉を使わせてください。

家財を片付けることも、もちろん整理の一部ではあります。
でも、ぼくが言いたい空き家整理は、もっと広い概念です。

医療の現場に「トリアージ」という言葉があります。
緊急時に、患者の状態を素早く見極め、優先度をつけて対応する仕組みのことです。
災害時の救急医療などで使われる考え方ですが、これが今の空き家にも必要だと感じています。

空き家にもトリアージが要る、ということです。

以前、空き家の解体→即解体に反論する形でこのトリアージという言葉を使ったことがありますが、今後は活用の前段階にもこのトリアージが必要だという事なんです。

具体的には、こういう整理です。

家財の整理:残すもの、処分するもの、形見として誰かが引き取るものを判断する。
権利の整理:相続が済んでいるか、名義人は誰か、複数の相続人がいる場合はどう合意するか。
家族の意思の整理:売りたい人、残したい人、迷っている人が混在していることも多い。まず「家族としてどうしたいか」を整理する。
建物診断:修繕が必要か、どの程度の費用がかかるか、そもそも再生できる状態かどうか。
地域診断:その場所に賃貸需要があるか、地域の人口動態はどうなっているか、自治体の空き家政策はどうか。
管理方針の整理:活用するのか、管理するのか、解体を検討するのか。

この6つがそろって初めて、「では、この家をどうするか」という話ができると思っています。

逆にいうと、どれか一つでも欠けたまま活用や解体の話を進めると、あとで必ずどこかで止まります。現場でよく見る光景です。

場所・建物・地域性・周辺環境で判断は変わる

よく「空き家は活用するべき」「いや、解体して更地にすべき」という二項対立で語られることがありますが、ぼくはそのどちらでもないと思っています。

正解は、その空き家によって違う。それだけです。

たとえば、地方の山間部にある築50年の木造一戸建てと、都市近郊の住宅地にある築30年の戸建ては、同じ「空き家」でも全然違う話です。
前者は活用にコストがかかりすぎて採算が合わないかもしれない。
後者はリノベーションして賃貸に出せばすぐに入居者がつくかもしれない。

同じ地域の中でも、駅から徒歩5分と車で30分では需要がまるで違います。

だから、空き家の「正解」を出すためには、場所の条件、建物の状態、地域の需要、周辺環境の変化、これら全部を総合的に見る必要があります。
一つの要素だけ見て判断しても、現場では通用しません。

「うちの空き家、活用できそうですか?」と聞かれたとき、ぼくは必ずこう言います。「まずちゃんと見てみましょう」と。答えは、見てからです。

残す家、管理する家、活用する家、解体を考える家

トリアージの結果として、空き家は大きく4つの方向に分けて考えると整理しやすいと思っています。

①残す家:家族の思い出として、当面は誰も住まないが保存しておきたい家。ただし、放置ではなく定期的な管理が前提です。

②管理する家:すぐに活用や売却はしないが、将来の選択肢を残すために適正に維持管理する家。草刈り、換気、通水、点検といったメンテナンスを続けることで、劣化を防ぎます。

③活用する家:賃貸、売却、民泊、地域活用など、なんらかの形で使い道がある家。需要と建物の状態が合致している場合に選択肢になります。

④解体を考える家:建物の傷みが激しい、再生コストが高すぎる、需要が見込めない、管理を続けることが難しい、といった場合に検討する選択肢。解体は「あきらめ」ではなく、次の可能性を開くための判断です。

この4分類、実は日本全国の空き家に当てはめてみると、②の「管理する家」がもっとも多いんじゃないかとぼくは思っています。
すぐに活用するのは難しいけど、手放したくもない。そういう家がたくさんある。

だとすれば、「管理する家」を適正に維持する仕組みこそが、今もっとも必要なことかもしれません。

空き家管理士に求められる新しい役割

ここまで書いてきた「空き家整理」という考え方は、空き家管理士の仕事のあり方にも直結しています。

これまでの空き家管理士に求められていた役割は、主に「管理」でした。
定期的に現地を訪問して、建物の状態を確認して、所有者に報告する。それはもちろん大切な仕事です。

でも、これからは「整理の入口に立てる人」が必要になってくると思っています。

所有者が「どうしようか迷っている」段階から伴走できる人。
家族間のコミュニケーションを助けられる人。
建物を見て、地域を見て、権利関係も確認したうえで、「この家はこういう方向が現実的ですよ」と整理できる人。

いわば、空き家のトリアージャーとでも言うべき役割です。

これは、一つの専門家だけではカバーできません。
不動産、建物診断、法律、家族・相続、地域情報、それぞれの知識を横断的につなぐ力が要ります。
単独でできなくても、チームでできる体制が整っていれば十分です。

不動産会社、建築士、司法書士、行政書士、遺品整理業者、解体業者、リフォーム会社、地域の不動産業者、自治体の担当者。これだけの関係者が空き家の周辺に存在しています。

このネットワークをつないで、所有者が迷っている状態から「方向性が見えた」という状態まで連れていける人、そこに空き家管理士の新しい存在意義があるとぼくは考えています。

空き家対策の入口を「活用」から「整理」へ

というわけで、今日の話をまとめます。

空き家問題の入口を「活用」に置いてきた時代は、少しずつ変わってきているとぼくは感じています。

活用はもちろん大切です。
でも、活用の前に整理がある。
家財の整理、権利の整理、家族の意思の整理、建物診断、地域診断、管理方針の整理。
この6つが揃ってこそ、「では次はどうしよう」という話ができます。

空き家にもトリアージが必要な時代になってきた。そう感じています。

「残す、管理する、活用する、解体する」という4分類も、難しく考える必要はありません。
要は、放置しないこと。向き合うこと。
その最初の一歩が「整理」だということです。

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