よそのまちの空き家対策の成功事例が、なぜ参考にならないのか。
突然ですが、あなたの自治体には「空き家担当者」って何人いますか?
たぶん、1人か2人、多くて3人くらいじゃないでしょうか。
しかもその方、空き家だけじゃなくて移住定住とか地域振興とか、いくつもの仕事を掛け持ちしていたりしませんか。
今日は、そういう「人手も予算も潤沢じゃないけど、なんとかしたい」という5万人規模の自治体と、そこで動いている小規模事業者のみなさんに向けて、現実的に回る空き家対策の話を書いてみようと思います。
ぼくの住んでいるまちもこの規模なので、リアルに感じながら考えていきたいとおもいます。
大きな自治体の成功事例って、読むと参考になるんですけど、どこか「うちには無理だよな」という気持ちになりませんか。
あの感覚、ぼくはすごくわかります。
空き家対策の「成功事例」が、なぜ参考にならないのか
空き家関連のニュースや自治体事例を調べると、よく出てくるのが「専門家チームを常設しました」とか「ワンストップ相談センターを開設しました」みたいな話です。
読むと、たしかにすごい。
でも、そのまま自分の自治体でやれるかというと…予算も人も違いすぎて、そのまま真似するのはちょっと難しいですよね。
ここが、空き家対策の難しいところです。
「成功事例を学んでください」とはよく言われるんですが、自治体の規模感やリソースがぜんぜん違うのに、施策だけをコピーしても、なかなかうまく回らない。
一方で、「何もしないわけにもいかない」という焦りはある。
空き家の数は増えている。
住民からの苦情も来る。
担当者は異動でまた変わる。
そのプレッシャーの中で、どこから手をつけていいかわからない、という状態になっている担当者の方、けっこう多いんじゃないかと思っています。
5万人規模の自治体に合った、地味だけど回り続ける形
では、5万人規模の自治体に現実的に「効く」形って何か。
ぼくがいろんな地域の空き家対策を見てきたなかで感じているのは、「大きく作るより、小さく確実に回る仕組みのほうが、長期的に成果が出やすい」ということです。
少し具体的に整理してみます。
① 空き家バンク+地域の不動産事業者との連携
行政が全部やろうとすると、必ずどこかで詰まります。
行政の役割は「入口」です。
物件情報を集めて、相談を受けつけて、つなぐ。
価格査定や媒介契約、実際の取引は、地元の宅建業者さんに任せる。
これは加西市(兵庫県)や真庭市(岡山県)、大洲市(愛媛県)といった地域でうまくいっているモデルです。
行政が抱え込まず、でも窓口はちゃんと自治体が担う。
この役割分担が、継続的に回るための鍵になっています。
地元の不動産業者さんにとっても、自治体からの紹介という信頼の後ろ盾があることで、所有者と話がしやすくなります。
これは双方にとって悪くない仕組みです。
② 「市場に出す前」を支援する
空き家対策でよく見落とされているのが、「バンクに載せる前の段階」です。
とくに小さな自治体はここが重要です。
所有者が動けない理由は、制度が足りないからじゃないことが多い。
家の中に家財道具がそのまま残っている。
相続登記がまだ終わっていない。
庭の草が膝の高さまで伸びている。
自分は遠方に住んでいて、なかなか見に行けない。
近所から苦情が来ているのは知っているけど、どうすればいいかわからない。
こういう状態のとき、所有者は「困っている」んですが、「誰に相談すればいいかわからない」という状態でもあります。
ここを補助金や相談対応でサポートできる自治体は、空き家バンクの動きが目に見えてよくなります。
「家財片付け費用の一部補助」「相続登記の相談窓口案内」「草刈りや清掃の事業者紹介」。
こういった市場に出す前の支援が、意外と空き家対策全体の潤滑剤になります。
これは清掃業者、解体業者、司法書士、行政書士といった事業者にとっても、新しい仕事の入口になりえます。
③ NPOや専門団体への委託
5万人規模の自治体でよく起きる問題が、担当者の異動によるノウハウの消失です。
せっかく空き家対策が軌道に乗りかけたところで、担当者が異動してしまい、また1から、という経験をした自治体は少なくないはずです。
これを防ぐためのひとつの方法が、外部の中間支援組織や専門団体への委託です。
宇陀市(奈良県)や真庭市では、このモデルを活用しています。
行政の外に、空き家対策のノウハウを蓄積できる「箱」を作る。これは人手不足の自治体にとって、現実的な選択肢です。
NPOや空き家管理士協会のような団体にとっても、委託事業という形で地域との関わりを深められる機会になります。
④ 移住・定住・二地域居住と組み合わせる
空き家対策を「問題処理」だけとして扱うと、担当者も住民も、どうしても気持ちが後ろ向きになります。
でも、「移住・定住・二地域居住」と組み合わせると、話がぐっと前向きになります。
空き家は「負の遺産」じゃなくて、移住希望者にとっては「安く住める家」であり、副業や二拠点生活を考えている都市住民にとっては「拠点になりうる場所」でもあります。
このあたりは生駒市の「恋文不動産」の手法がおもしろそうです。
「空き家バンクでこれだけ成約した」という数字を持てると、議会や地域住民に対しても説明がしやすくなります。
成果が見えると、担当者のモチベーションも続きやすいです。
⑤ 危険空き家は「除却まで進める」覚悟を持つ
すべての空き家を活用しようとすると、どこかで無理が出ます。
活用できる物件は改修・流通へ。
でも、明らかに危険な状態の物件は、除却・安全確保へ。
この振り分けを、ちゃんと判断できる体制が必要です。
活用と除却を組み合わせた方針を持っている自治体は、住民への説明もしやすくなります。
解体業者さんにとっては、除却補助の整備が進むほど、仕事の入口が増える可能性があります。
ぼくなら、こう提案します
いろいろ書いてきましたが、シンプルにまとめると、5万人規模の自治体にぼくが提案するのはこの「5点セット」です。
「空き家相談窓口」+「所有者向けスタートサポート」+「空き家バンク」+「家財片付け補助」+「地域の空き家管理士・宅建士・司法書士への連携」
そして、できれば年1回の大きなイベントではなく、毎月か隔月で「空き家の個別相談日」を設けてほしいです。
相談に来た内容を、管理・売却・賃貸・解体・相続・家財整理に振り分けて、それぞれの専門家につなぐ。
たったこれだけで、5万人規模でも十分に成果は出せると思っています。
「空き家になる前」に接点をつくることが、一番強い
ここからが、ぼくが特に強調したいことです。
空き家管理士協会として自治体に関わるとき、ぼくが一番提案したいのは「管理不全になる前の所有者接点づくり」です。
空き家になってから動くのではなく、こういうタイミングで相談につなげる仕組みをつくることです。
親が施設に入ることが決まった。
相続が近い。
年に数回しか実家に帰れない。
草刈りや通風ができていない。
近所から苦情が来た。
こういったタイミングに気づいた人が、「ちょっと相談してみよう」と思える窓口が地域にある。
それだけで、管理不全になる空き家の数はかなり減らせると思っています。
介護事業者、地域金融機関、郵便局、農協、自治会など…。
実はこういった組織が、「空き家予備軍」の所有者と一番早く接点を持っています。
こういった異業種との連携も、地域の空き家対策を支える大事な柱になっていきます。
というわけで、今日は5万人規模の自治体における空き家対策の現実的なパターンをまとめてみました。
派手な大型施策より、地味だけど回り続ける仕組みのほうが、5万人規模では確実に成果につながります。
「うちでもできそうかも」と少しでも感じてもらえたらうれしいです。
何かご質問や「こういうケースはどうすれば?」というお声があれば、ぜひコメントで教えてください。できる範囲でお答えしますね。
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空き家管理というと、不動産や建築の専門職を思い浮かべがち。
でも実は、さまざまな業種との相性がいいんです。
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