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放置空き家は、「地域の資産価値」まで下げている。地価との知られざる関係。

今日はちょっと、いつもと違う角度から空き家の話を掘り下げてみようと思います。
テーマは「空き家と地価の関係」です。

最近、「空き家税」や「管理不全空き家」といった制度がニュースでよく取り上げられるようになりました。

それを見て「まあうちには関係ない話だな…」と思う方、実はかなり多いんじゃないかと思います。

自分が空き家を持っているわけじゃないし、近所の空き家は他人の家だし、正直他人ごとです…。

でも実際は、そうとも言い切れないんですよね

【放置された空き家は、その家一軒だけの問題では終わりません。】

周辺の住宅価格や土地の評価にまで、じわじわと影響を及ぼすことが、いくつかの研究から見えてきているんです。

なぜ「隣の空き家」が自分の資産価値に響くのか

考えてみればシンプルな話です。

放置された空き家があると、景観が悪くなります。
雑草が伸び放題になったり、外壁が傷んでいたり。
防犯面での不安も出てきます。
人の出入りがない家は、いたずらや不審者の温床になりやすいと言われますし、放火のリスクもゼロではありません。

こうした要素が重なると、その地域そのものの印象が変わってしまいます。「なんとなく寂れてきたな」という空気は、住宅を探している人にはけっこう敏感に伝わるものです。

需要が下がれば、価格も下がる。
単純な市場の原理として、そういう流れが起きうるわけです。

海外ではすでに数字が出ている

「とはいえ、それって感覚的な話でしょう?」と思われるかもしれません。
ぼくも、空き家が地価を下げているというよりも、地価が下がるような地域に空き家が増えるんだ、と思ってました。

ここでアメリカの調査をひとつご紹介します。

クリーブランドで行われた調査では、空き家や税滞納物件、差し押さえ物件から500フィート(150メートルほど)以内にある住宅は、平均で9.4%ほど価値が下がったという報告があります。

シカゴでも似た傾向の調査があり、1件の税滞納物件が近隣にあるだけで、周辺住宅の平均価格が数千ドル単位で下がったという推計も出ています。
距離が近いほど影響が大きく、時間が経つほど深刻になる、という点も複数の調査で共通しています。

イギリスや韓国でも、空き家が多いエリアほど住宅価格が伸び悩む傾向が指摘されていて、方向性としてはアメリカと同じ流れが見えます。

国によって研究の厚みに差はありますが、「空き家の放置が、周辺の資産価値に影響しうる」という点は、世界的にそう珍しい話ではないようです。

日本でも、同じ空気を感じることが増えてきた

実際に神奈川県横須賀市の研究では、周辺に長期空き家が1軒増えるごとに成約価格が約2.6%低下し、その影響範囲は50m程度と推定されています。

具体的には、0〜25mおよび25〜50mの距離帯で有意な負の影響が確認されていますが、50mを超えると影響は弱まります

日本は2023年の総務省調査で、空き家数がついに900万戸を超えました。空き家率も13.8%と、過去最も高い数字です。

ぼく自身、現場でお話をうかがっていると、「隣の空き家があるせいで、うちの家がなかなか売れない」というご相談は、正直そう珍しいものではなくなってきています。

地方の住宅地を歩いていても、一軒だけ手入れされていない家があると、その通り全体の印象がふっと変わる瞬間があります。
ぼくが感じる、「空き家の隣に空き家あり、空き家の裏にも空き家あり」というのもそういうわけなんです。

日本での研究の蓄積はまだアメリカほど厚くはありませんが、現場の感覚としては、確実に同じ現象が起き始めていると感じています。

問題は「空き家」ではなく「放置」

ここで、ぼくが一番伝えたいことをお話しします。

空き家そのものは、悪者ではありません。
きちんと管理されている空き家であれば、景観も保たれますし、防犯面のリスクもかなり抑えられます。
周辺への影響も、驚くほど小さくできるんです。

問題なのは、空き家という状態そのものではなく、放置されることです。
だからぼくは、いつも「空き家対策」ではなく「管理対策」という言葉を使いたいと思っています。

政策の流れが示していること

特定空き家、そして管理不全空き家、さらに空き家税の議論へと、この数年で行政の対応は少しずつ強くなってきました。

これは、行政が所有者を罰したいわけではないと、ぼくは理解しています。むしろ、地域全体の資産価値を守るための動きだと捉えるほうが、実態に近い気がします。

これはぼく個人の仮説なんですが

ここから先は、あくまでぼく個人の考えとして聞いてください。協会としての公式な見解ではなく、現場を見てきた一実務家の仮説です。

これから必要になるのは、税だけではないと思っています。たとえば実家管理費控除や、留守宅の管理を支援する制度のように、「管理する人が得をする」方向への政策転換が進めば、放置そのものを減らす力になるんじゃないかと、ぼくは考えています。

この流れは、誰にとってチャンスになるのか

ここまでの話は、所有者だけの問題ではありません。

地価防衛という視点で見ると、これは不動産、建設、警備、清掃、解体、リフォームといった業界にとっても、新しい需要が生まれる余地がある分野です。
「空き家を管理することが、地域全体の資産価値を守るサービスになる」という捉え方をすると、既存の事業に空き家管理という切り口を組み合わせられる可能性は、思っているより広いはずです。

自治体にとっても、単に空き家を減らす対策ではなく、地域の資産価値を維持するための投資として、管理支援を位置づけ直すタイミングが来ているように思います。

というわけで

放置空き家は、持ち主だけの問題ではありません。
隣の家にも、地域全体にも、そして次の世代にも影響していきます。

だからこそ必要なのは、「空き家をなくすこと」ではなく、「放置をなくすこと」なんじゃないかと、ぼくは思っています。

もし身近に気になる空き家があれば、まずは「これは放置されているのか、管理されているのか」という視点で眺めてみてください。
それだけでも、ちょっと見え方が変わってくるはずです。

ぼくはこれからも、空き家管理士として「管理」という価値を、少しずつ社会に広げていきたいと思っています。

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