空き家管理ビジネスを「脱炭素インフラ」へ。
今日は、ちょっと壮大なテーマについて書いてみます。
「空き家管理って、実は地球温暖化対策になるんじゃないか」という話です。
突然そんなことを言われても、「え、家の管理と二酸化炭素がどう関係するの?」ってなりますよね。
ぼくも最初はもやもや考えるだけで、正直うまく言語化できなかった部分があります。
でも現場を歩いていろんな人と話しをしていると、あることに気がついたんです。
それをちゃんと書いておきたくて、今日はこの記事を書くことにしました。
空き家管理ってどんな仕事なのか、改めて整理してみると
空き家管理というと、なんとなく「見回りが仕事」というイメージを持っている方が多いと思います。
実際の作業を並べてみると、通風・通水・草刈り・郵便物の整理・雨漏りのチェック・庭木の状態確認・外壁や屋根の点検・防犯上の確認、といったものが中心です。
一個一個は地味です。そう、ものすごく地味です。
でも、この地味さの中に、すごく大事な本質があります。
みなさんもご存じのとおり「家」というのは、人が住まなくなった瞬間から傷み始めます。
空気が動かなければ湿気がこもってカビが出る。
水を使わなければ排水まわりが詰まる。
雨漏りに気づかなければ、柱や床まで腐っていく。
庭を放置すれば、近隣からの苦情や防犯上のリスクにもつながっていく。
人間でいえば、健康診断を受けない状態が続くようなものです。
ぼくはこれを「住宅の予防医療」と呼んでいます。
病気になってから大手術をするのではなく、日頃からこまめに体の変化を見て、早めに手を打つ。
空き家管理も、構造は同じです。
「壊して建てる」という前提が、そろそろ変わるタイミングにある
これまでの日本の住宅市場は、政策的にも「新しく建てる」ことに重きが置かれていました。
古くなったら壊す。
使われなくなったら解体する。
そしてまた新しく建てる、という流れです。
もちろん、危険な建物を解体することは必要です。それは否定しません。
ただ、人口が減り、空き家が増え続けているこれからの日本で、「とりあえず壊して建て直す」という発想だけで進み続けることには、いくつかの問題があります。
ひとつは経済的な問題。
ひとつは景観の問題。
そして今日の本題である、環境負荷の問題です。
家を建てるには、木材、鉄、コンクリート、ガラス、断熱材、設備機器など、膨大な資材が必要です。
それをつくる工程でも、運ぶ工程でも、工事する工程でも、エネルギーが使われます。
さらに、古い建物を解体すれば廃棄物が出ます。
解体して、また新しく建てる。
この繰り返しには、当然ながら環境負荷が伴います。
だとすれば、今ある住宅をできるだけ長く使い続けることは、脱炭素という視点からも、とても意味のある選択になるはずです。
空き家管理は、その入口に立っています。
管理されていれば、空き家はまだ選択肢を持っている
ここが、ぼくが一番伝えたいことかもしれません。
空き家は、適切に管理されていれば、まだ未来の選択肢を残せます。
将来、子どもや孫が使う可能性もある。
二地域居住の拠点になるかもしれない。
地域に貸せるかもしれない。
移住体験住宅になるかもしれない。
あるいは、売却や賃貸という判断を後からすることもできる。
でも、管理されずに放置されると、その選択肢はどんどん減っていきます。
雨漏りが進む。
床が抜ける。
カビが広がる。
庭が荒れる。
不法投棄される。
空き巣に入られる。
近隣からの苦情が出る。
そして最後には「もう解体するしかない」という状態になってしまう。
これは所有者にとっても、地域にとっても、社会にとっても大きな損失です。
「放置された空き家が問題なのであって、空き家そのものが悪いわけじゃない」というのが、ぼくの基本的な立場です。
適切に管理されていれば、空き家は地域の資産になり得る。
誰かの実家であり、誰かの思い出の家であり、誰かの次の住まい候補でもある。
所有者がなかなか動けない理由も、ちゃんとある
とはいえ、「家は管理してください」と言うのは簡単でも、実際に動くのがむずかしいのも現実です。
遠くに住んでいて頻繁には行けない。
費用がどのくらいかかるかわからない。
親の家だから、なんとなく処分に踏み切れない。
空き家になったことを周りに言いにくい。
そもそも何をどう頼めばいいのかわからない。
こういう事情が重なって、「とりあえず今は何もしない」という判断になりやすいんです。
責める話ではなくて、そうなりやすい構造があるということです。
空き家問題は、相続してから突然始まるわけではありません。
親が施設に入ったあとの実家、長期入院で無人になった自宅、遠方に住む家族がなかなか見に行けない家、こうした「まだ空き家とは呼ばれていないけれど、実質的には人の目が届きにくくなっている住宅」から、少しずつ始まっています。
だからこそ、空き家になる前の段階から、早めに管理の仕組みをつくることが大切なんです。
空き家管理と脱炭素は、実はかなり近くにある
脱炭素というと、太陽光発電、電気自動車、省エネ家電、断熱住宅…そういった話が多く出てきます。
もちろん、それらはどれも重要です。
でも、もうひとつ見落とされがちな視点があります。
「今あるものを長く使う」ということです。
新しいものをつくることだけが未来ではありません。
今あるものを大切に使い続けることも、未来をつくる行為です。
月に1回、家を見に行く。
窓を開ける。
水を流す。
雨漏りを確認する。
庭の状態を見て、写真を撮って、所有者に報告する。
この小さな積み重ねが、建物の寿命を延ばし、地域の景観を守り、将来の活用可能性を残していきます。
そして結果として、解体や新築に過度に頼らない社会づくりにつながっていく。
ぼくは、空き家管理にはその力があると思っています。
協会として、これから問いを立てていきたい
空き家管理士協会では今後、空き家管理と住宅ストックの脱炭素について、調査と発信を続けていく予定です。
最初から大きな数字を掲げるつもりはありません。
まずは問いを立てることが大切だと思っています。
空き家を適切に管理することは、住宅の寿命を延ばすのではないか。
住宅の寿命が延びれば、解体や新築に伴う環境負荷を減らせるのではないか。
空き家管理は、地域の脱炭素政策の一部になり得るのではないか。
この問いを、協会として社会に投げかけていきたいと考えています。
初年度は、日本の空き家数の推移、住宅分野のCO2排出とライフサイクルカーボンの動向、空き家管理が建物寿命に与える可能性、現場で多い劣化要因、管理によって防げた事例といった内容を整理した「空き家管理と住宅ストック脱炭素レポート」をつくっていく予定です。
これからの空き家管理士は「かかりつけ専門職」に近い存在へ
建てることに価値が置かれてきた日本の住宅文化は、少しずつ変わり始めています。
これからは「管理する文化」が必要になる時代です。
家を持ったあと、どう守るのか。
親の家を、どう見守るのか。
使っていない家を、どう次の世代につなぐのか。
地域の住宅を、どう地域の資産として残すのか。
この文化が広がらなければ、空き家は増え続け、住宅ストックは傷み続け、解体せざるを得ない家も増えていきます。
空き家管理士は、その文化を現場から支える存在です。
単に家を見に行く人ではなく、建物の変化に気づく人。
所有者と地域をつなぐ人。
問題が大きくなる前に、早めに動ける人。
いわば、地域の住宅の「かかりつけ専門職」のような役割です。
というわけで、今日は少し大きな話をしてしまいましたが、伝えたかったのはシンプルなことです。
空き家管理は、地味な仕事です。
でも、地味だからこそ、全国に広がれば大きな力になる。
その積み重ねが、住宅の寿命を延ばし、解体や新築の連鎖を緩やかに減らし、結果として地球温暖化対策にもつながっていく可能性がある。
ぼくたちはその可能性を「日本最大の地球温暖化対策インフラ」と呼んで、これから育てていきたいと思っています。
日本には多くの空き家があります。
そのすべてを活用できるわけではありません。
でも、適切に管理することで、劣化を遅らせ、選択肢を残し、解体や新築に伴う環境負荷を抑えられる可能性があります。
空き家管理士協会は、空き家管理を「住宅ストックを守る脱炭素インフラ」と位置づけ、全国の空き家管理士とともに、地域の安全、資産保全、そして地球環境に貢献する管理基準の普及に取り組んでいきます。
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