頼れる親がいない若者に、都心の空き家が「実家」になった。制度の外で起きている、静かな革命。
今日は、ある記事をみて感じることがあったので、少しだけ違う角度から空き家の話を書いてみようと思います。
「空き家活用」というと、どうしてもリノベーション物件、民泊、コワーキングスペース…といった収益系の話題が先に浮かびますよね。
もちろんそれも大事です。
でも今日取り上げたいのは、そういうビジネスとして成立しているかどうかよりも、もっと根っこのところにある話です。
空き家は、誰かの「帰る場所」になれるのか。
そのテーマを考えさせてくれる取り組みを知って、ぼく自身もずいぶん考え込んでしまったので、整理しながら書いてみます。
「施設を出たら、次の日からひとり」という現実
児童養護施設で育った子どもたちは、多くの場合、成人を機に施設を退所することになります。
親元に帰れる子もいます。
でも、そうでない子も少なくない。
虐待や家庭崩壊など、様々な事情で施設に入った子どもたちにとって、「実家に戻る」という選択肢がそもそも存在しないケースがあります。
施設にいる間は、衣食住はもちろん、学習支援や就労支援まで、公的な手厚い支援が整っています。
でも成人になった瞬間、その支援の多くが薄くなる。
制度がそうなっているんです。
自分で家を借りようとすると、保証人が必要です。
親がいない、頼れる親族もいない。初期費用を出してくれる人もいない。
就職したての給料で、都市部の家賃を払いながら生活を回すのは、正直なところ、かなりきつい。
さらにいえば、「困ったときに誰かに頼る」という経験そのものが少ない若者も多いです。
相談することに慣れていない。
助けを求めると迷惑をかける気がして、ひとりで抱え込んでしまう。
社会の荒波、という言葉があります。
でも荒波に放り出されたとき、岸に向かって泳ぐための「浮き輪」を持っているかどうかが、まったく違う話なんですよね。
空き家をDIYで再生し、「家賃0円」の住まいをつくる
そんな若者たちの「住まい」の問題に向き合っているNPOがあります。
「東京里山開拓団」さんです。
活動の中心は、都市部の空き家をDIYで再生し、児童養護施設退所者に家賃0円で提供すること。
ただ貸すだけじゃなくて、入居者が自分たちで手を入れて、一緒にふるさとをつくっていくような関わり方をされています。
ここで面白いのが、DIYで自分たちで修繕していくうちに、こういう建築業界に興味を持ってくれる可能性があることです。
これは建設業界にいるぼくもうれしい限りなんです。
先日、建設資材の高騰が問題になっているという話をしましたが、実は人材不足も同じくらい、いやもっと問題が常態化しているんです。
この活動、代表の方が「お節介な大家」と表現されていたのが、ぼくにはとても刺さりました。
放置せず、でも管理しすぎない。
若者たちの自立を支えながら、ちゃんと関係を続けていく。
その距離感が、制度の支援とはまた違う、人としての温かさを感じます。
空き家活用の文脈で見ると、これは非常に意味のある使い方です。
管理されず放置された空き家が、必要としている人の「帰れる場所」になる。
建物も若者も、どちらも救われる話です。
所有者の中には、賛同してくれる人もいる
ここからが、ぼくが今日一番伝えたかったことです。
こういった取り組みに対して、空き家の所有者の中には「それなら無料で何年か貸しましょう」と申し出てくれる方が実際にいます。
建物を遊ばせておくくらいなら、社会的な意義のある使い方をしてほしい、と。
その気持ち、すごく真剣なものだと思うんです。
でも現状、そういう所有者とNPOや支援団体をつなぐ「マッチングの仕組み」がほとんどないんですよ。
所有者は「誰かに声をかけたいけど、どこに言えばいいかわからない」。NPO側は「使える空き家があれば活動を広げられるのに、探すのが大変」。両方が、バラバラに存在しているのに、出会えていない。
これは正直、もったいないです。
制度の問題というより、インフラの問題です。
情報をつないで、信頼を担保して、双方が安心して動けるような仕組みが、まだほとんど育っていない。
これはビジネスか、社会貢献か。その問いの立て方が、少し古い気がする
「家賃0円」「NPO頼み」「ボランティア前提」と聞くと、ビジネスの話とは遠いように感じるかもしれません。
でも、ぼくはそうは思っていません。
むしろ、こういう分野にこそ、事業として関わることのできる余地があると思っています。
たとえば、リノベーションや建物管理を本業とする事業者にとって、社会的インパクトを持つ案件への関与は、地域での信頼構築にもなります。
空き家の所有者と支援団体の橋渡しを担うコーディネートの仕組みも、ゼロから作ることができます。
不動産仲介、士業、清掃、警備、解体、地域金融…関わり方の入口は、業種によって違いますが、どこにでもあります。
ぼく自身、今回の取材を通じて「こういうマッチングをどう仕組み化するか」が、空き家管理士協会のミッションの一つになりうると、改めて考えさせられました。
今のうちに整理しておきたいこと
空き家所有者の方へ 「建物の使い道に悩んでいる」「でも売るのも貸すのも踏ん切りがつかない」という状況の方は少なくありません。
でも実は、「誰かの役に立てる形で貸す」という選択肢があります。
まずは地域のNPOや支援団体と話してみること。それだけで視界が広がることがあります。
事業者の方へ 社会的住宅や支援付き住まいの分野は、今後確実に行政や民間の注目が高まります。今すぐ収益が出る話ではないかもしれませんが、地域との関係値を早めに作っておくことは、中長期では大きな差になります。
支援団体・NPOの方へ 空き家所有者とのマッチングを、もっと「面」で広げていく仕組みが必要です。個別の関係性に頼るだけでなく、情報が流通するネットワーク作りを考えてみてください。
というわけで
「空き家×若者支援」というテーマ、今日は少し深く掘り下げてみました。
正直いって、これはまだまだ仕組みとして成熟していない分野です。
でもだからこそ、今から関わることの意味があるとぼくは思っています。
空き家は、放置されるとただ劣化するだけです。
でも必要としている人に届いたとき、それは誰かの「ふるさと」になります。
「帰れる場所がある」というのは、人が自立していくうえで、どれほど大切なことか。
今日の記事が、何かを考えるきっかけになれば嬉しいです。
今日は休日なので、AIによる音声解説も併せてお楽しみください。
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