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相談支援専門員が心理学の本を読んで学んでいくシリーズ その27【医療的ケア児】

「相談支援専門員が心理学の本を読んで学んでいくシリーズ」の第27回です。

今回は、命の誕生の喜びと同時に、予期せぬ障害や病気の告知を受けた親御さんの「心の激震」にどう寄り添うかという、非常に繊細で重要なテーマです。特に医療的ケア児の支援においては、親子の愛着形成と、終わりのないケアによる疲弊が隣り合わせです。心理学の知見をベースに、相談支援専門員としての「構え」を整理します。



――揺れる親心と「障害受容」の真実:医療的ケア児と家族を支える心理学――

相談支援の現場、特に児童発達支援や医療的ケア児のコーディネートにおいて、私たちは親御さんの「言葉にならない叫び」に直面します。「かわいく思えない時がある」「どうしてうちの子だけが」……。こうした感情は、親失格などではなく、心理学的に説明可能な「適応のプロセス」です。今回は、親子関係の始まりと、障害告知を受けた親の心理的危機について深掘りします。

1. 親子の「ダンス」の始まり:スターンとウィニコット

赤ちゃんが生まれた瞬間から、親と子の相互作用(ダンス)が始まります。

  • ウィニコットの「原初的母性没頭」:

    • 産後の母親は、我が子の些細なサインも見逃さないよう、一種の過敏状態(没頭)になります。これは病気ではなく、愛着を形成するための特別な心理状態です。

  • 「3ヶ月革命」と社会的微笑:

    • 生後3ヶ月頃、赤ちゃんがあやされると笑うようになります(社会的微笑)。「自分の働きかけに相手が応えてくれた!」という喜びが、親としての自信(有能感)を育み、愛着の絆を強固にします。

しかし、障害や重い病気がある場合、この「反応(微笑みやアイコンタクト)」が返ってきにくいことがあります。これが親御さんの「育てにくさ」や「自信の喪失」に直結しやすいことを、私たちは理解しておく必要があります。

2. 「期待された子ども」の喪失:ソルニットとスターク

障害の告知を受けた時、親御さんは何を感じているのでしょうか。ソルニットとスタークは、これを「期待された子どもの喪失」と表現しました。

  • 解説: 親は妊娠中、「元気な赤ちゃん」を夢見ています。障害の告知は、その「夢見ていた子ども」が亡くなり、代わりに「障害のある子ども」がやってきたような、深い喪失体験(グリーフ)であると説きました。

  • ドローターの適応段階:

    1. ショック: 頭が真っ白になる。

    2. 否認: 「何かの間違いだ」「治るはずだ」と事実を認められない(防衛機制)。

    3. 悲しみ・怒り: 「なぜ私が」というやり場のない感情。

    4. 適応・再起: 現実を受け入れ、この子の親として生きていこうとする。

※重要:これは一直線に進むものではなく、行ったり来たりする螺旋階段のようなものです。

3. 「障害受容」神話からの脱却:オルシャンスキーの「慢性的悲嘆」

かつては「早く障害を受容させなければ」という支援が良しとされました。しかし、心理学者オルシャンスキーは「慢性的悲嘆(Chronic Sorrow)」という概念を提唱しました。

  • 概念: 障害のある子の親が抱く悲しみは、病的なものではなく、入学や成人式などのライフイベントごとに波のように押し寄せる「正常な反応」である。

  • 支援の視点: 「まだ受容できていないのですか?」と急かすのは間違いです。「悲しいままでいい」「揺れ動いて当たり前」という受容こそが、親御さんを救います。

4. 医療的ケア児支援における「相談員の構え」

24時間365日、吸引や注入などの医療的ケアが必要なご家庭。そこでは「親」である以前に「医療者」であることを強いられる過酷な現実があります。

  1. 「ケアの提供者」から「親」に戻れる時間を(レスパイト):

    1. 常にモニター音や吸引のタイミングに神経を尖らせている親御さんは、我が子を「かわいい」と思う余裕を奪われています。私たちがレスパイト(短期入所や訪問看護)を調整するのは、単なる休息のためだけではありません。「医療行為抜きで、ただ我が子を抱きしめる時間」を取り戻してもらうためです。

  2. ビオンの「コンテイナー(容器)」機能:

    1. 親御さんの不安や怒り、愚痴といった「抱えきれない感情」を、相談員が一度受け止め、少し整理して穏やかに返す役割です。「それは辛いですよね」とただ聴くことで、親御さんの心の毒抜きをします。

  3. きょうだい児へのまなざし:

    1. 「いい子」でいることを強いられがちなきょうだい児。彼らの「寂しさ」や「甘えたい気持ち」にも気づき、家族全体をアセスメントの対象とします。

結びに

「障害受容」とは、諦めることではありません。

「思い描いていた人生とは違うけれど、この子がいる人生も悪くない」と、新しい意味を見つけ出す長い旅のことです。

私たち相談支援専門員は、その旅路のガイドではありません。荷物を少し持ち、嵐の夜には傘を差し出し、「ここでは泣いてもいいですよ」と言える、最も身近な伴走者でありたいものです。


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