【毎ショ】ある村の踏切
丑三つ時、線路を挟んで彼岸サイドと此岸サイドの両陣営が向かい立つ。両陣営の間に踏切があり、この踏切がいわば審査員である。踏切は遮断機を提げて両者を遮っている。
少女は相手サイドを見つめた。今夜、彼らに勝たなければならない。
今夜の先攻は彼岸サイド。太鼓にラッパ、野太い雄叫び。甲子園で流れていそうな硬派な音色である。
踏切は沈黙。続いてこちらの此岸サイドの番が来た。
シンセが奏でる電子音、妖精のような歌声、ネットの海を制した最新のアイドルソングである。
踏切が点滅し、鐘を鳴らした。相手サイドの男たちは青ざめてこちらを見ている。
電車が迫る音がした。”お迎え”である。
「ダメだ!その子を連れて行くな!」
相手たちが必死に引き留める。少女は笑みを浮かべ、踏切を越え線路に立ち、迫る”お迎え”を受け入れた。
*
「えー村の掟により、今年の祭囃子は『みらくる☆PONG☆PONG』に決定しました。皆さん歌詞を覚えてきてください」
「いやだああ!伝統がああ!」
踏切オーディションを勝ち抜いた少女はガッツポーズし、”お迎え”から降りて家に帰った。
▼参加させていただいた企画
踏切→四つ辻→異界との接点。
民俗学もそう言っている。
