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接客業、他人の記念日に立ち会う

接客業って、ただ商品を紹介するだけじゃない

相手の背景を、
想像することが仕事だと思う。

ある日の夕方。
目の前に現れたのは、20代くらいの男性だった。

女性用のカバンや小物を、
ひとつひとつ手に取っている。

「男性なのに?なんでだろう?」

そう思って、少し考えた。
たぶん誰かへのプレゼントだ。
そう予想がついた。

そこで声をかけてみた。

「プレゼントですか?」

「はい、母が誕生日を迎えたので」

「そうなんですね〜!選ぶのって難しいですよね」

そう言って、一度、距離を置いた。

話しかける≠居心地をよくする

ずっと隣にいたり、
話しかけ続けられたりすると、疲れる。

自分がお店に行くとそうだから、相手にもそうしたくない。

そばにいないのは、
むしろお客さんが、
ゆっくりと選べる時間をつくりたいから。

情報を伝えることよりも、
まずは心地良く、安心してもらうことが大事だと思ってる。

何かあったらサインを出してくれるはず。
少し離れて、様子を見ていた。

歩くスピード。
視線の動き。
キョロキョロとあたりを見回すしぐさ。

なんだか少し、焦っているように見えた。

「どうしたんだろう?」

もう一度、声をかけてみた。

他人の人生に立ち会う

「実は、今日が母の誕生日だったことを思い出して……
すでにプレゼントは買っていたんですけど、
節目の年だから、もう少し良いものを選ぼうかなと思って」

なるほど、と思った。

そして、どうしよう?とも思った。

「今、仕事を抜けてきていて、
買ったら実家に帰って渡して、
すぐに仕事に戻らないといけなくて」

「お母様が喜ぶもの」であり、
「できるだけ早く決めたい」。

その両方が必要な状況だった。

雑談がてら、いろいろと話を聞いてみた。

「昔、母にカバンを買ったことがあるけれど、
使っているところを見たことがなくて」

「頑固なんです。こだわりの強い人だから、
身につけるものを選ぶって不安ですね」

「カードケースなら確実に使ってくれる気がしてて。
でもやっぱり、リュックもな。
トートバックもいいなって迷ってます」

だって、悩むって大事でしょ

うんうん。
心の中で、ずっと頷いていた。
それは難しい。

ええんやで。
もっっっと時間をかけて悩んでください。

という自分と、

テキパキ整理して、
決めやすくしてあげた方がいいのかな?

という自分が、心の中で揺れ続ける。

見ず知らずの人が、情報をささっとまとめて、
その流れで買っちゃったら、もしかすると後悔するかもしれない。

悩んで、時間をかけて、その上で選んで買ったものなら、お互い納得できると思う。

大事なモノほど、自分で決めなきゃね。

最終的に、男性は2つの選択肢に絞り込んだ。

カードケースか、トートバッグか。

少しの間悩んだあと、

トートバッグを選んだ。

贈り物は、想いそのもの

誰かへの贈り物って、
それだけで、もうすでに心がこもっている。

でも、選ぶのは本当にむずかしい。
特に、大切にしている人への贈り物は、
どうしても迷ってしまう。

でもこの「考える時間」こそが、
何より価値のあるプレゼントなのかもしれない。

そんな時間を独り占めさせてもらった。

本当はお母様にこそ見てほしい時間だった。

なんだか、他人の人生に少しだけお邪魔させてもらったようだった。 

さて。
お母様は、喜んでもらえたでしょうか。

お誕生日、おめでとうございました。

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