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不屈の精神

この前の日曜日、洗濯物があふれていた

旅行で着たものも合わせて
ランドリーボックスは衣類があふれ
まるで気前の良い店で買った
カップアイスクリームみたいになっていた

普段、靴下や外着以外は乾燥機を使うので
部屋干しの物からドラムに突っ込む

ランドリーボックス内の洗濯物は
密度がハンパなかった
取れども取れども、次々と衣類が
手品のごくあふれ出す

それに加えて
キッチン、洗面台、トイレのハンドタオルと
枕に巻き付けてあるバスタオル
風呂上がりのバスタオル
そして、台布巾も回収しなければならない

え?タオル類、毎日変えないの?
と思われるかもしれないが
使う人間がひとりしかいないので
耐える心で、乗り切るのだ

耐える心といえば

俺はそう簡単には、手を洗わない
大きい方をすました後も
極力洗わない方向で思考をすすめてる

なぜかって?
それは目に見えない菌類に
負けるわけにはいかないからだ

普段からこうやって
不屈の精神を養っている

だからだろうか、2年前
急性胃腸炎で人生初の救急車に乗った
そんな菌の猛襲にだって
屈するようなヤワじゃない

手は洗わない

負けるわけには、いかないのだ

公衆トイレで他人の手洗いを見ているが
誰ひとり熱心に洗ってる人など
いないではいか

あんな指先ちょろちょろで
菌が落ちているわけがないから
あの行為は、ただのエチケット手洗い

通過儀礼だ

僕はちゃんと手を洗ってますよ
と自分に、そして他人に証明してるだけ

そんなんなら、洗わなくても同じことだ

俺は屈しない
公衆トイレの大鏡ので手を洗う輩の後ろを
俺は、堂々と闊歩してやる
大鏡に映るその雄姿は
まるで横滑りのエスカレーターに
乗っているかのよう

だからこの手洗いと同様に
そう簡単には、洗濯はしないのだ

そうやって、日々たくましい精神を養っている

洗濯の話に戻そう

1回目は、乾燥機をかけない外着と靴下
2回目は、乾燥機をかける肌着とタオル

洗濯機は少なくとも2回まわすだろうと
大方の予測がついていた

しかしランドリーボックス内は
予測をはるかに上回る洗濯物で

スエットの上下が3組にジャージの下が2つ
これが思いのほかがさばり
ドラムの中を占領したので
これらに靴下入れて
まずは1回目の洗濯をスタートし
ほどなくして洗濯が終了した

2回目の洗濯機のボタンをピッと押し
同時に1回目の洗濯物を干しにかかる

スエットの上下やジャージをハンガーにかけ
靴下を物干しの洗濯バサミに挟み
1回目の洗濯物すべてを干した時

それにしても
ずいぶん洗濯していなかったことに気づく

靴下は1日1足使うので
靴下の数を数えたら
何日洗濯していなかったか分かるのだ

その数、21足

ということは3週間、洗濯していなかったことになる
家族のいる家庭では考えられないかもしれないが
ひとり暮らしだし
替えはまだまだまだまだあるので
別に生活に支障はでない

途中、旅行に行ったとはいえ
ここまで洗濯していなかったのかと
なかなかの屈強な自分に驚いた

2回目の洗濯を終え
ドラムの中からパンツやTシャツ
あったかインナーを取り出す

これから乾燥機をかけるのだが
ドラム式の洗濯機で洗ったものを
乾燥機にかける場合

洗濯物を1度ドラムから取り出して
しっかり伸ばして再度ドラムに戻し
乾燥機を回さないとしわくちゃになる

そうならないよ、と
メーカーの説明書には書いてあるが
1度そうなったので信用できない

あれほど悔しいものはない

干上がったくしゃくしゃの洗濯物は
手で伸ばしても、はたいてみてもすぐ縮み
しわくちゃの形状記憶が完成されてしまう

あの取り返しのつかない
パーフェクトなしわくちゃ加減に
1度だけ、敗北した

だからもう2度と、負けない

乾燥機にかける前に
ひと手間かけて洗濯物は自分の手で伸ばす

そして、2度目ではすべてさばけず
3度目の洗濯物は夕方頃にまで及んだ

この日、外は猛烈な雪だった

土曜の夜から降り出した雪は
延々と降り、日曜の夜まで続いた
あとで知ったが1日の降雪量54cm
その後も断続的に雪は降り
2日間の合計は積雪64cmにまでなった

気象台が観測をはじめて
札幌の降雪量の最高記録をたたき出した

月曜日の朝、いつも通り6時半に家を出る
通常なら7時過ぎには職場に着いているハズだ

大雪の次の日は車が渋滞する

されど始業は9時だから
2時間半あればさすがに大丈夫だろうと
たかをくくっていた

それでも、万全を備えて
バス通りの道を選んで車を走らせた

その時

はじめて札幌の街が
ドエラいことになっていると知った

脇道ではあちこちで車が雪に埋まり
その車体は見事な傾斜を象っている

残念だが、誰も助けられない

だって、自分の車ですら
他みんなの車ですら
前後左右、道路は車でみっちみちなのだ

あっちもこっちも雪で狭まった道路は
車でひしめき合い
前進はおろか、バックすらままならない

通常なら5分で町内を抜けられるところが
2時間経っても、我が家の近所だった

これは、、、はたして職場に着けるのか?

普段、DoorToDoorで30分の距離が
果てしなく遠くに思える

もっと大きな幹線道路に出れば
スムーズになるか

いや、そんなことがあるわけがない
市内は通勤の車でみっちみちなのだから

このペースで12時間後に職場に着くとして
途中でおしっこしたくなるけどどうするの?

12時間だなんて大げさだろうが
少なくとも6時間はかかるだろう

そういえば4年前の大雪の翌日
5時間半かけて通勤した経験があった
しかも、朝と晩に俺の車はスタックし
他の職員の車もスタックして
職場の町内の小道は
うちの職員の車で埋め尽くされた

全員で車を押して、ストラテジーゲームのように
次々とスタックした車を
駐車場に押し込むという恐怖体験がよみがえる

残念だ、非常に残念だが
あの二の舞は、勘弁

俺は、職場に連絡しそんなのゴメンだから
今日は休むと伝え
その後、2時間かけて家に戻った

2時間かけて、ご近所まで出向き
2時間かけて、ご近所から帰ってきた

負けだ、完敗

たかだか雪に
完膚なきまでにやっつけられた

負けない、負けるわけにはいかない、と
世間の逆風に真っ向から抗って生きてきたのに
寒波にやすやすと負けた

昨日の猛吹雪の景色が信じられないくらい
リビングの窓には
真っ青な空と雪に埋もれた街が広がる

バーカバーカざまぁみれ

こんなにも美しい冬の青空が
俺を嘲った

不屈の精神とは

じゃーねー

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