組み換えタンパクワクチン(解説編)
AKIRAです。
本日はある意味センセーショナルな報告について。
mRNAではない組み換えタンパクを用いたワクチン
2025年2月に新たにコロナワクチン関連の論文が公開されました。ジャーナルはNature系列、「signal transduction and targeted therapy」。
以下にリンクを貼っておきます。
さて。
私の記事では、特定の研究論文をメインに扱うことはあまりないのですが、今回の報告は重要であると考えています。
理由はタイトルにも書いた通りで、組み換えタンパクのコロナワクチンに関する論文だからです。
すべてを解説しているとキリがありませんので、ざっと簡潔に内容のまとめを中心にご紹介したいと思います。
論文の内容
要旨
XBBやJN株などの新規コロナ株の感染が蔓延している。
ウイルス抗原に対する長期的暴露により免疫の刷り込みが起きている。
この免疫の刷り込みが初期のコロナ株から新規株への免疫の転換が妨げられている原因である。
本研究では、XBBのスパイク結合ドメインであるRBDとS2ドメインの一部の配列を結合したタンパク質を合成した。
このタンパクを抗原としてマウスに接種すると、免疫の長期記憶を担うリンパ球や免疫細胞の増加が見られた。
不活化ワクチンとmRNAワクチンのブースト接種後にこの合成タンパクを接種すると、中和抗体価(IgG)が増加。さらにEG.5.1(XBB亜系統株)でも同様の効果。
COVID-19ワクチン接種歴のある人に接種すると、JN.1およびXBB亜系統株に対する中和抗体の増強を確認。
各Figureの軽い解説
Fig1
筆者らの作製した組み換えタンパクワクチンを3週間の間をあけて3回マウスやラットに接種させて、8週間後に採取した血液から中和抗体を精製。
→複数の新規株に対して中和抗体を確認。
Fig2,3
Fig1と同じようにマウスに接種して、12週目でリンパ節、骨髄、脾臓を採取。XBB1.5とJN.1株それぞれのRBD特異的な抗体およびサイトカインを分泌している細胞を定量している。
→どちらの株に対しても各組織でスパイク特異的な抗体を持つ細胞が増加。(Fig2)
→液性免疫と細胞性免疫(ただし獲得免疫系に限る)の両方が亢進されており(Fig3a-c)、長期記憶にかかわる免疫細胞であるT濾胞ヘルパー細胞、および胚中心B細胞も増加している。(Fig3d-g)
Fig4
同じ接種の仕方で、長期間だとどうか?
43週目で採取。
→中和抗体価は維持されている。(Fig4b)
→IgG分泌細胞も増加を維持。(Fig4c,d)
→長期記憶にかかわる細胞(MBCs, LLPCs)も細胞の割合にして約2%前後増加。(Fig4e,f)
→獲得免疫系のリンパ球でサイトカインを出している細胞の割合も増加を維持。(Fig4g,h)
Fig5
mRNAワクチン接種x3のあと、もしくは不活化ワクチン接種x3のあとにそれぞれもう一度mRNAワクチンor不活化ワクチン接種した場合と4回目を組み換えタンパク質にした場合の中和抗体価の比較
→ mRNA→組み換えタンパク質の場合は少し増えた程度だが、不活化ワクチン→組み換えタンパク質は大幅に増えている。
Fig6
チャレンジ試験(ワクチンの効果を確かめるために、接種後にウイルスを感染させる検証実験)。
組み換えタンパク質ワクチン3回接種後、ウイルスをマウスに暴露させて中和能とウイルスの動態を見る。
→組み換えタンパク質接種群は体重減少が起こるも回復しており、鼻腔・気管・肺組織のウイルスゲノムのコピー数が減少。のどぬぐい(のどを綿棒などでこすり取ったときに得られる組織片)のウイルスコピー数も減少。肺組織における炎症所見も緩和されている。
Table1,2
ヒト試験。
参加者54名。条件は、18歳以上で軽い基礎疾患を持っていたり持っていなかったりで、COVID-19ワクチン接種から3か月以上たっている、また、未感染もしくは直近の感染から3か月がたっていること。(Table1)
確認された有害事象は9件。うち、7件は注意の必要なもので注射部位の症状が6件、発熱が1件。(Table2)
Fig7
Table1,2の条件で各株ごとの組み換えタンパク質ワクチンの中和能を検証。どれもおおむね中和能は増加している。
Discussion
新規株の流行は、事前のワクチン接種とブースターがありながらもブレークスルー感染が発生していることに起因する。
免疫の刷り込みを考えると、将来的に発生する新規株をターゲットにするCOVID-19ワクチンにとって代わる次世代ワクチンの開発は急務である。
本研究で開発された組み換えタンパクワクチンは、単独もしくは追加接種で新規株(XBB亜系統株、JN.1)に対する持続的な液性免疫と細胞性免疫を獲得した。
また、直近の新規株(KP2,3)に対する中和能も有している。
ワクチン接種歴あり+ブレークスルー感染した人はXBB、BA.2.86に対する中和活性の大幅な低下を示す。
モデルナやファイザーはXBB1.5に対応するmRNAワクチンを新たに開発したが、世界的なワクチンの利用を考えると、同種(例えばデルタだけ)のmRNAを頻回に接種するよりも異種(今回の複数のタンパクドメインが入ったようなモデル)のタンパクベースワクチンを接種するほうが利点が多い可能性がある。
実際、筆者らのワクチンは後者のモデルに該当する異種型のワクチンで、中和活性が増強されることが実証された。
ただし、本研究で使用されたmRNAワクチンはBA.5由来のものであり、XBB1.5をターゲットとしたものとの直接比較をしていないという研究の限界がある。
ワクチンの投与量の差やヒト集団内の複雑な免疫学的状態(個体ごとに各株に対する免疫強度の違い)から、組み換えタンパクワクチンの検証は、より大規模な調査が必要となる。
高齢者(とくに基礎疾患を持つ)はCOVID-19ウイルス感染のリスクファクターであり、ワクチン接種の反応性の減弱を示す。
獲得免疫反応の低下、慢性的な炎症性サイトカインレベルの上昇、サイトカイン調節障害といった免疫老化が考えられ、高齢者のワクチン接種効果については別途評価系の設定が必要。
ヒトでの検証は54人と限定的で得られた結果はあくまでも予備的なものである。
まとめ
以上、論文の中身をざっとまとめてみました。
長くなりましたので、私の考察については次回の記事で投稿します。
