組み換えタンパクワクチン 考察編(一般向け)

AKIRAです。
書き直します。


論文解説の難しさ

ほかの専門家の方は、スラスラと説明されているようなのですが、論文の解説や考察をすると必ず悩むのが、「一般の方に向けて発信することの難しさ」です。前回の記事(↓)を読み返して、さすがに分かりにくいなと思ったので書き直しをしようと思います。

なぜコロナは変異が早いのか?

変異が早い、というよりも変異株が多い、と表現するのが妥当だと思います。

筆者は、「武漢株やアルファ株に何度も感染しているせいで、新しい株に免疫が対応できないんじゃないの?」と言っているわけです。
これを免疫の刷り込みと表現しています。

一方、私はmRNAワクチンのせいだと思っているわけです。
その根拠は簡単で、ウイルスに感染した場合、得られる免疫はスパイクタンパク以外にほかのウイルスのタンパクの情報もあるからです。
mRNAワクチンはスパイクタンパクのみを大量に作る仕組みになっているので他のタンパク質の抗原提示ができません。

つまり、スパイクタンパクの変異が多い新規コロナ株の流行は、mRNAワクチンの影響である可能性が高い、と結論付けました。
それを支持する別の論文も示しています。(↓)

https://www.cell.com/cell-reports-medicine/fulltext/S2666-3791(24)00621-9

長期的免疫記憶

ワクチンの目的は、免疫を鍛えることではなく、免疫の情報を体に与えることです。
つまり、免疫がウイルスの情報を覚えていることが大事になるわけですが、「ウイルス情報を記憶する細胞」と「そのウイルスに攻撃を仕掛ける細胞」という風に役割が分かれているため、一挙両得は無理があるのです。

しかも、この二つの細胞はあらかじめ総数が決まっている(個人差あり)ため、どちらかが増えればどちらかが減るという構造になっています。
しかし今回紹介した論文では長期記憶に重要な細胞の増加が見られたのですが、サイトカインを分泌しているCD4+細胞やCD8+細胞も増加してしまっているため、攻撃役の細胞まで増加しているのです。

つまり、結果の解釈としては「ずっと攻撃し続けているけど、念のために記憶するための細胞も作っている最中ですよ」という状態であることが考えられます。だから、ワクチン接種から長い時間が経ってもまだ攻撃を続けている状態が続いてしまっているのです。求められる状態は、「攻撃はやめてるけど、いつウイルスが来てもいいように記憶している細胞は増やしています」という状態です。つまり、サイトカイン分泌型のT細胞は増えているとまずいのでは?というのが私の意見です。

何のためのアジュバント?

これまでの従来型(不活化ワクチンなど)ワクチンの課題は、「免疫を引き付ける力が弱く、抗原提示が起こりにくい」という部分にありました。そんな状況下でmRNAワクチンは多くの抗体を誘導できたため、有効であると考えられていたのです。
しかし、mRNAワクチンに搭載されたアジュバントはLNPという成分で、これがヒトの過剰な炎症反応を引き起こすことが問題となっていました。では、どうしてLNPでないとだめだったかというと、mRNAが効果を発揮するためには細胞の中に導入しないといけないため、mRNAを細胞内に入れるためのアジュバント(LNP)が必要だったわけです。

しかしながら、今回の論文で用いられた組み換えタンパクワクチンに使われたアジュバントはLNPに対して比較的安全なもの(らしい)(下記URL参照)なので、過剰な炎症を引き起こすといった問題は考えにくいわけです。

でも実際には、サイトカインを出し続けているT細胞が増加しているわけですから、当然そこには理由があるはずです。
そこで、私が考えたのは、「これ、複数回(3回)接種していることが原因じゃねえの?」と思ったわけです。

実際に、mRNAワクチンでも同様のことは起こっていて、mRNAワクチンは原理上RNAの寿命が普通のRNAに比べて伸びている点、そしてスパイクを合成する速度が速いために1回接種でもすれば、多すぎるスパイクによる不利益を被るリスクはあるのですが、Science Immunologyの論文(https://www.science.org/doi/10.1126/sciimmunol.ade2798)によれば、IgG4レベルの増加は3回目接種以降からが顕著なようです。
また、2回目接種以降でもIgG4増加は見られるため、ブースター接種(複数回打つ)という方法がヒトの免疫に過剰な負荷を与えていることはほぼ立証されたと言ってもいいでしょう。
しかし、mRNAワクチン接種後の抗体分泌の持続時間が短いことで焦ってしまったのかもしれませんね。リスクを飲み込んでもブースターに踏み切ったのでしょう。

ただ、そうなるとすごく不自然なことに気づくわけです。
まとめると、

  • ブースター接種(2回目以降)は免疫原性(免疫細胞を誘導する力)を促進させることが目的だが、免疫を疲弊させる。

  • 一方で、アジュバントは安全で機能するものが使われており、免疫原性が強化されているものと思われる。

ということになるわけですが、

いやいや、じゃあ何のためにアジュバント入れたん?

とこんな疑問が出てくるわけです。
少なくともアジュバントがしっかりと機能するかどうかを単回接種で調べるくらいはあってもいいと思うのです。アジュバントが機能してさえいれば、複数回摂取の意義はほとんどないでしょうに。

どうしてIgG抗体価だけにこだわるのだろうか?

通常、人体は血管走行が多い組織は「体の内側」に存在します。しかし、肺という器官はどちらかというと「外」に該当します。
ですので、ウイルスに暴露されやすくなおかつ血管が多い組織なわけなので、血中抗体であるIgGクラスタイプの抗体価を確認することは十分に実のあることだと思います。

しかし、武漢株からデルタ株までならともかく、オミクロン以降の新規株に対して血中抗体価を重視することは果たして妥当なのでしょうか?
というのも、オミクロン以降は肺野で炎症を引き起こすウイルスというよりも、喉や鼻腔などの上気道と呼ばれる部位の炎症所見が多いのです。のどや鼻腔組織は上皮組織になるため、血管からほんの少ししか分泌されないIgG抗体では中和不十分です。極端な話、上気道感染では血中IgG特異抗体が増加してても、ウイルスを中和できているかは非常に怪しいです。

それよりも私は自然免疫系に何も異常がないのかがすごく気になってしまいます。論文内Fig6eに肺の組織染色の画像が示されていますが、組織内に炎症を引き起こすマクロファージや単球などの免疫細胞がどれだけ浸潤(白血球などが血管から組織に入り込んでいくこと)しているのかを評価していませんよね?
つまり、炎症が抑制された原因が「(ワクチンで)組織中にウイルスが少ないから」ではなく、「単に自然免疫にダメージが入って炎症誘発型免疫細胞自体が少ないから」ということであれば、結果の解釈が180度変わってしまうのです。

また、論文内では組み換えタンパクワクチン3回接種後にウイルス(Eg.5.1ウイルス)を鼻からマウスに感染させていますが、示されている結果には「ウイルスのゲノムが減少している」データはあるものの、「ウイルスの粒子がどれだけいたのか」のデータがない。
ゲノムは感染する(もしくは複製してコピーを作る)能力を失っていても組織中に残存していることがあります。つまり、検出したゲノム全部がウイルスを作る能力を持っているとは限らないので、感染能力の指標にはならないということです。この話はPCR検査のウソにもつながる話になりますので、大事だと考え、以前の記事にも書きました。

mRNAベースだとなぜダメなのか?

通常、感染が起こったときにヒトの体にいる白血球(マクロファージなど)は、ウイルス粒子を食べて自分の中で分解して各パーツごとに抗原提示を行います。(ウイルスゲノムは抗原として不適切なので使用しません)

当然、上の図のように提示する抗原も必然的に複数あることになります。


つまり、それぞれがどのくらい(?%)あるのかはともかくとして、IgG抗体の情報には、ウイルスのタンパク抗原がそれぞれ記録されているため、ヒトの免疫は常にポリクローナル(複数免疫種)になるのは当たり前の概念です。(上図参照)

しかし、mRNAの場合はこのうちのスパイクしか抗原として提示できないため、ウイルスのスパイクに変異が入ってしまうと簡単に免疫を回避されてしまいます。また、タンパクを大量に作るため、2種類以上のタンパクを作ろうとしたら相当量のRNAが必要になり、RNAの上限量は変えられないので、2種類、3種類、、、と増やしてしまうとタンパク1種類当たりのRNAは1/2、1/3になってしまいます。
他方、タンパク質の場合、違うタンパク(たとえばスパイクタンパクとNタンパク)同士を結合させて、一つの合成タンパクにできるので複数の抗原種を同じバイアルに入れることができます。また、細胞に直接導入するRNAの場合は、白血球に直接導入されてしまうと抗原の分解が起こらない可能性がありますが、タンパクは「確実に」白血球に食べられて分解されるので適切な抗原提示を行うことができます。

今回紹介した論文の筆者は、スパイクタンパクのみで設計していますが、株を変えて組み合わせることもできますし、打った量以上に抗原(スパイク)が増えすぎる心配もないため、mRNAモデルよりも汎用性が利くと言えます。

結論

したがって、私の結論としては、

  • 記憶細胞が出てくるのはいいが、獲得免疫由来の炎症が続いてしまわないか心配。

  • 複数回接種は、免疫系へダメージを与える可能性があり、それが自然免疫系を損なうことになっていないだろうか?

  • スパイクにこだわらず、あらゆる抗原を盛り込んだ組み換えタンパクなら、免疫の交差性も改善するのではないだろうか?

といった感じでしょうか。
自然免疫や、いろんな抗原の組み合わせでデータが出れば、高インパクトな報告になるのではないかと私は思いました。

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