DNAおよびRNAの正しい知識
AKIRAです。
本日は核酸のお話。
概論
まずは、DNAに関する知識から。
DNAの正式名称は、デオキシリボ核酸。
リン酸ー塩基ー糖の順番でつながった高次構造の分子が塩基を中心にリン酸と糖を結合させて縦につながっていった構造体です。

上図、DNAの模式図です。
DNAは二重らせん構造になっていると生物の教科書には書かれていますが、この図のように、左側と右側で同じパターンが縦につながっている構造が、上下方向が逆転した状態で、塩基同士が結合しています。AはTと、CはGと結合するようになっており、これで二重鎖を形成しています。
また、DNAを合成するときは、一方の鎖を鋳型(見本)にしてもう片方を合成します。

上図のように、リン酸・糖・塩基のひと塊をヌクレオチドと言いますが、このヌクレオチドのリン酸が別のヌクレオチドの糖と結合していくことで合成されます。
ところで、糖は基本骨格が五角形の形をしているのですが、塩基とつながる糖の頂点からリン酸に向かって番号を付けると、上図の通り、リン酸が結合する部分が3番目と5番目に相当することが分かります。そして、ヌクレオチドが結合するとき、ちょうど3番目の頂点から延びる線と結合するため、DNAが伸びる方向は、5→3の方向になることが分かります。
とすると、DNAは下図のように一方向へ増幅されることになります。我々は、この糖の頂点の方向から、5'(読み方は5ダッシュ)方向、3'方向というように呼称し、逆方向にDNAが伸長することはありません。

そして、当然のごとく、RNAにも同じことが言えるのですが、RNAとDNAの違いは主に二つ。
一つは糖の種類が「デオキシリボース」ではなく、「リボース」であるということ。何が違うのかは、図「DNAの合成」において2番目の頂点の化学構造式が異なるだけです。
では、もう一つの違いは何かというと、塩基の種類です。
RNAでは、T(チミン)の代わりにU(ウラシル)を用います。(下図参照)

増幅の仕方などはDNAと同じですが、細胞の中で、上図のように2本鎖で存在することは限定的ですので、基本的には1本鎖で機能することが多いですね。
RNAワールドとDNAの誕生
現在の科学では、生命の起源はRNAから始まったと言われています。このようなRNAが自己複製の媒体として利用されていた自然系をRNAワールドと言います。
一般的なイメージだとDNAが最初のように思われますが、地球の形成時にその一パーツとなった隕石などからはRNAの成分が検出されていたり、RNAはDNAに比べて触媒活性(酵素としての働き)を持つなど、様々な観点から原始生命の代謝と遺伝子継承に一躍買っていたのではないか、と考察されています。(下記リンク参考)
しかし、現在の我々のようにRNAを保護するための構造が細胞内に備わっていた生物は、当時ほぼ存在せず、「細胞」という概念が生まれるその瞬間にはコアセルベートといって核酸を水の層と分離する形状の物体に変化した「細胞もどき」が存在したと言われるくらいです。当然、様々な物理的条件が厳しい原始地球ではRNAの安定性は非常に不安定だったと考えていいでしょう。
ゆえに、それがのちのDNAワールドが誕生した経緯がある根拠にもなっています。
このような点からとある仮説が生まれます。
それは、RNAワールドが成り立つのであれば、実際にRNAをゲノムとして利用する生命体が存在していなければならない、という話。
・・・そう、ウイルスです。
ウイルスは厳密には「生物ではない」
ウイルスは、厳密には生物には定義されません。
理由は単純で、他者の存在なしで自己複製できないためです。
ウイルスは、ヒトの細胞に侵入し、自己増幅を行います。
これに対し、一般的な動物細胞・植物細胞は自ら細胞分裂で自己の増幅を実現できます。
簡潔かつ明快な理由なのですが、その点に目をつむれば、核酸を用いて自己を増幅する手段を持つ部分は通常の生命体のシステムとそう変わりはありません。
・・・となれば。
ほかに普通の生物と違う点と言えば、先ほど述べましたように、「ゲノム情報にRNAを用いる」という点なのです。
「ゲノム情報にRNAを採用している」という意味
さて。
ここまでの話で、皆さんの言いたいことは何となくわかります。
「だから何だよ」
そう言いたいのではないでしょうか。
重要なことは、「遺伝情報としてRNAを利用している生命体がいる」という事実です。
これは、間接的にRNAはゲノム情報媒体としての役目を「担える」ということを示しています。さらに言えば、ウイルスはヒトの細胞ほど遺伝情報を持っていないためRNAを保護する機能はほとんどありません。(NタンパクなどRNA非特異的なものは除く)
RNA自体は変異しやすいものの、朽ちることなく遺伝情報としてウイルス粒子内で機能しています。これは、「RNAは放っておけば分解される」というウソツキ文言に対する明確な反証です。
「でも、変異しやすいってことは構造的にもろいってことじゃないの?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそも変異については核酸の安定性よりも、DNAまたはRNAの複製時のエラー校正機能によって変わります。
エラー修正は複製を行う合成酵素の性質によるものなので、DNAやRNAそのものの科学分子の性質に依存するものではありません。
とすれば、当然同じRNAウイルスでも変異のしやすさはウイルスが持つRNA合成酵素の性質によって違うので、「新型コロナウイルスはRNAウイルスだから変異しやすいんだ!」というのも嘘っぱちですね。
現に、コロナウイルスのRNA合成酵素にはエラー修正のための酵素活性が存在するようですからね。(下記リンクは文献です。興味のある方はどうぞ)
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abi9310
となれば当然、「どうして新型コロナウイルスはこれだけの変異を起こしたのか?」という疑問が出てきますが、そのことについては私自身も考察していますのでよろしければ見ていってください。(↓)
なお、こちらの記事内では、コロナウイルスが人工である可能性については考慮しない前提で考察しています。
DNAやRNAの基本的な知識の掘り下げだけでも嘘はバレる
まあ、つまりはこういうことですね。
私の記事では何度も申し上げていることですが、基本原理・原則を知るためには、「まず教科書」です。
そのうえで、応用するには科学的なお作法、つまりは論文が必要というだけの話。
原理原則に反した主張が論文にあるのなら、それは教科書に喧嘩を売っているだけです。教科書に喧嘩を売るということは、過去の研究者たちが積み上げた何百・何千年の積み重ねの否定につながります。
コロナ禍で流布された多くの嘘は、生命科学の歴史最大の汚点となることでしょう。
