見出し画像

山手線ゲーム【せりふ三題噺】【草原返却ペンネ】

学生時代よく行った安価で安心、全国チェーンのイタリアンの店。あの頃も頼んでいたペンネアラビアータとドリンクバー。
『山手線ゲーーム!』
スマホの画面内のアイツが喋り出す。
「急に何だ何だ?」
『懐かしの流行り言葉を言っていこう!
 先攻!俺から』
「おいおい!勝手に先攻するなよ。」
聴く耳持たず、
『ひよってるやついる?』
「(いきなり?)アセアセ」
『大草原不可避www』
「かまちょ」
『ぴえん』
「きゅんです♡」
『、、、///、、』
「なんでちょっと赤らんでだよ、、」
『っ、全集中の呼吸!!』
「それな!」
『ゲラゲラポー!』
「お、教室の後ろで踊ったりしてたな。」
「俺のターン!」
『それもやったな。』
『今でしょ』
「安心してください履いてますよ」
『ダメよ〜ダメダメ』
「もしかしてだけど〜♪」
『タピる』
「2人でタピったことあったな」
『女子しかいなくてあん時は恥ずかしかったな』
『ペンネアラビアータ美味いか?』
「美味いけど、冷めちまった」
『さぁせん』
「よき」
『流行り言葉としての使い方では違うぞ、それ』
『、、大丈夫そ?』
「、、おまえしか勝たん、、」
『それも若干使い方違ってる』
儚く笑うアイツの顔が涙の膜でさらに霞む。
『頼み事ある。高校の時図書館で借りてた本、返してないのあって返却してくれん?』
「は?何年前のだよ。いいけど、、」
『実家にあるから』
「最後の言葉がそれ?」
『もう、こんな感じでは会えんけど。
 楽しかったよ。ありがとう。』
「メンブレだよ」
暗くなった画面に呟いた。
冷めたペンネアラビアータをコーラと流し込んで、汚れた口元と一緒に頬を伝う涙もハンカチで拭い、そのままアイツの実家へ向かった。
ここへ来たのはアイツが亡くなって葬式の時以来だから2年ぶりだろうか。
あの頃より幾分小さくなったアイツの母親が笑顔で迎えてくれた。事情を話して、アイツの部屋に案内してもらう。
物はそのままだが整頓され、部屋の主の気配はもうない。件の物を入れてあるという小さな引き出しを開けるとあった。
文庫本。青い表紙の。
あぁ、俺が勧めた本だ。元気出るぞって。
読んだんだな、本とか読まないヤツだったのに。
だからって、借りパクはダメだぞ。
責任持って返すから安心しな。
でも今は俺に必要な本かもな。
俺が読んだら返しに行くわ。
机には写真立て。高校の時のアイツと俺2人で写って写真。体育祭の時のだな。メチャクチャ笑っている。
今度ここに来る時は、こんな笑顔でいられるよう、もうちょい頑張るわ、俺。見といてくれよ。





 
 

いいなと思ったら応援しよう!