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『夢洗ひ 恩田侑布子句集』を読む

読んだのは一、二年前のことだが、好きな句をまとめていなかったので、ここに挙げておきたい。
恩田侑布子の作品には、まず評論から入った。その日本語の表現の豊穣さに驚かされたことを覚えている。彼女の作品に通底する仏教や老荘の東洋思想、日本文化・芸術における「余白」や「枯れ」の美学は、句の中で、時にはモノに語らせ、時には五感や想像力を呼び覚ましながら、唯一無二の世界を立ち上げている。
残念ながら、作品を深く裏打ちしている知識を、私は十分には持ち合わせていない。それでも、恩田の希求している世界は、私にとってもまぶしい。

しろがねの露の揉みあふ三千大世界
男来て出口を訊けり大枯野
ゆきゆきてなほ体内や雪女
春月の上る片戀こそよけれ
あきつしま祓へるさくらふぶきかな
香水をしのびよる死の如くつけ
忘却の川へしだるる夕ざくら
百態の闇をまとひて踊るなり
告げざる愛地にこぼしつつ泉汲む
もう居らず月光をさへぎりし父母
三つ編みの髪の根つよし原爆忌
かの男胸に居座る寒暮かな
羊水の雨が降るなり涅槃寺
椿落つ鏡の中にもう一人
一生これしだれざくらのそよぎかな
ころがりし桃の中から東歌
緩和ケア病棟下の青蜥蜴
わが視野の外から外へ冬かもめ
驟雨いま葉音となれり吾も茂る
脚入るるときやはらかし茄子の馬
吊し柿こんな終りもあるかしら
あめつちは一枚貝よ大昼寝


恩田侑布子
1956年、静岡市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。「あらき(樸)俳句会」代表。現代俳句協会会員、日本文藝家協会会員、国際俳句協会会員。第23回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞(俳句・芸術評論集『余白の祭』)
平成28年度芸術選奨(文学部門)文部科学大臣賞受賞(句集『夢洗ひ』の成果により)
第72回 現代俳句協会賞受賞 (句集『夢洗ひ』)
第9回 桂信子賞受賞

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