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澪(みお)ーー心の音 2 ChatGPT共同制作

第二章 見つめる写真


祖母の部屋へ続く廊下は、昼と夜でまるで別の場所だった。
昼間は障子から柔らかな陽射しが差し込み、畳の匂いが心地よく漂う。風が吹くたび庭の木々が揺れ、その音さえ子守唄のように感じられた。
けれど夜になると、その家は静けさに包まれる。
柱時計だけが、
カチ……コチ……。
規則正しく時を刻み、その音が家中に響き渡る。
幼い私は、その音があまり好きではなかった。
祖母の部屋には、大きな仏壇があった。
その横には黒い額縁に入った古い写真が飾られている。
祖父と、もう一人の男性。
二人とも真っすぐ前を見つめ、少しも笑っていない。
昼間は何とも思わない写真だった。
でも夜になると、不思議なことが起きる。
月明かりがガラスに映るたび、その目がゆっくり動いたように見えるのだ。
「……見てる。」
そう思った瞬間、私は慌てて布団を頭までかぶる。
布団の中は息苦しいのに、顔を出す勇気がない。
写真の二人が、まだこちらを見ている気がする。
子どもだった私には、それが本当に怖かった。
今なら、月明かりやガラスの反射だったのだろうと思える。
でも、あの頃の私は、本当に見られていると信じていた。
あの部屋には、言葉にならなかった想いが静かに残っているような気がしていた。
祖母の部屋の手前には、両親の寝室があった。
夜になると、母は弟を抱き寄せて眠っていた。
私は別の部屋で布団に入る。
そのことを不思議に思ったことはなかった。
それが当たり前だと思っていたからだ。
ずいぶん大人になってから、母がぽつりと話してくれたことがある。
「本当はね、澪と一緒に寝たかったの。」
母は少し笑っていた。
でも、その笑顔の奥には、昔の寂しさが残っているように見えた。
「でも、おばあちゃんがね、『乳臭いからだめ』って。」
その一言で終わったらしい。
私は何も答えられなかった。
幼い私は、母に抱きしめてもらえない理由も知らず、ただ夜になると少しだけ胸が寂しくなる、その感覚だけを抱えて眠っていたのだから。
子どもの頃の私にとって、祖母は怖い人だった。
家の空気は、祖母の機嫌ひとつで変わる。
父は祖母の前では決して逆らわなかった。
どうしてだろう。
子どもの私は、それを考えたこともなかった。
ただ、「そういうものなんだ」と思っていた。
その理由を知ったのは、大人になってからだった。
祖母には子どもがいなかった。
父は祖母の弟の息子だった。
幼い父は、後妻との暮らしの中で、ご飯を十分に食べさせてもらえないこともあったという。
お腹を空かせ、お櫃を抱えて外へ逃げ、一人でご飯を食べていたこともあったらしい。
そんな父を不憫に思った祖母は、父を養子として迎え、自分の子どもとして育てた。
だから父にとって祖母は、親であり、恩人でもあった。
逆らえなかった理由を知ったとき、私は初めて祖母を少し違う目で見ることができた。
子どもの頃は怖いだけだった人にも、その人だけの人生があった。
私の知らない涙があり、苦しみがあった。
けれど、その頃の幼い澪は、まだ何も知らない。
夜になると写真が怖くて、布団を頭までかぶることしかできない、小さな女の子だった。
あの写真が、何を見つめ続けていたのか。
祖母が、どんな想いを胸の奥にしまい続けていたのか。
それを知るのは、まだずっと先の話である。


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